2008/01/31

Trek your life.

『岳 6 巻 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

新刊がいつもすごく楽しみな『岳』の最新刊。山岳救助ボランティアの主人公が今回も大活躍。不覚にも目頭が…、って感じのグッとくるハナシ満載で、電車の中とかで読むとちょっと恥ずかしいことになっちゃうかも。今回のクライマックスは主人公・三歩の人生の背中を押した高校時代の先生のエピソードかな。

どこが良いって、山と向き合うスタンスがとてもシンプルで、正しいこと。無闇に煽ったり盛り上げたりするわけでもなく、説教臭く「自然を甘く見るな」とか「自然を大切に」みたいなツマんないことを言うこともなく、いいことも、厳しいことも、全部含めてシンプルに、プリミティヴに受け止めてること。こういう感覚、日常生活ではつい忘れられがちだけど、すごく大事。

山に登らない人にも、登ってみたいかもって思ってる人にも、もちろん登る人にも。



*既発巻:

2008/01/30

Brain-powered.

ニュースの真相 Evolution(1/30 OA 分

. :ゲスト:茂木健一郎(朝日ニューススター) ★★★☆

最近、わりと気に入って観ている数少ない TV 番組のひとつ、朝日ニューススターの『ニュースの真相 Evolution』(このタイトルはどうなの? って思うけど…)の 1/30 OA のゲストは脳学者の茂木健一郎氏。

まぁ、言わずと知れた「クオリア」の人、最近は NHK の『プロフェッショナル 仕事の流儀』の人なわけですが、たくさん本を書いたり、いろいろなメディアに出たりして、キライじゃないんだけどなんかウサン臭い感が否めない印象だったんだけど、この日の OA を観て、ちょっと印象が変わった。

『脳を活かす勉強法』が、(本人曰く)余り売れない彼の本にしてはヒットしてて(20 万部突破)、こういう「How to 本」的なモノが売れてることについて複雑な心境らしく、脳トレの人気などにも触れながら(「あれはだたの癒し」との賜ってた)、脳学者として不甲斐ない、と真摯に嘆いてる姿にちょっと好感を持った(前に NHK-BS の『BS アニメ夜話』のガンダムの回に出演して、脳学者の立場からニュータイプについて熱く語ってたときも好感を持ったけど)。

まぁ、要するに、最近いろんなところですごい感じる、コンビニ弁当みたいなモノをありがたがる傾向(っつうか、そういうものしか受け付けられない)に対して、すごく強い危機感を感じているらしいところにはまったく同感。その不甲斐なさを痛感した上で、間口を拡げるためにあえてあういう活動をしてるんだとすると、同じ活動でもだいぶ違って見えてくる。

こういう、TV ではあるけど地上波ではない番組だからこその発言だったのかもしれないけど、こういう部分をもっと出してくれれば面白くなるのに。

それはそうと、この前の週の C・W・ニコルさんがゲストの回もすごく面白かったし、水曜日は最近いい感じ。キャスターの宮崎哲弥氏の趣味なのか、サブ・キャスターの堤未果さんの趣味なのかわかんないけど。

こういう番組こそ、OA 後に何らかのカタチ(ウェブがいちばんいいけど)でアーカイヴが観れればいいのに。再放送は何度かあるけどやりっぱなしってすごくもったいない。同じ朝日ニューススターで OA してる『デモクラシー・ナウ』みたいになってればいいのに。まぁ、これはアメリカの番組で、しかもわりと先進的な番組だからこそ成り立ってるんだと思うけど、こういう資産の活かし方は現代(及び近い未来)の TV 番組のカタチのような気がする。

Total communication.

PEACE BED アメリカ vs ジョン・レノン

. :デビッド・リーフ / ジョン・シャインフェルド 監督 ★★★☆

遅ればせながら観てきました、『PEACE BED アメリカ vs ジョン・レノン』(The U. S. vs John Lennon)。六本木ヒルズで上映されてるのがなんとなくイヤな感じで、行けてなかったんだけど(六本木ヒルズでジョン・レノンとか、違和感あり過ぎじゃね?)、吉祥寺のバウスシアターで演ってるとなれば俄然行く気にもなるってもんで。

映画自体は、ビートルズ後期〜グリーンカード取得までの、アメリカ政府によるジョンへの圧力を、当時のフィルム、その後に公開された FBI のいわゆる「レノン・ファイル」、関係者のインタビューで構成して描いたドキュメンタリーなんだけど、なんつったってジョン・レノンだからとにかく観とかなきゃ、なんて半分義務感(?)で観たんだけど、思いのほか面白かった。

その理由のひとつは、実はイマイチイメージが掴みにくかったテーマを、すごくリアリティのあるカタチでまとめてくれたドキュメンタリーだったってこと。なんとなく、「平和活動に傾倒して、アメリカ政府から盗聴されたりしてて大変だった」ってことは知ってたけど、その辺の「なんかサクッと流しちゃってた」部分を生々しく描いてくれてる。

あの頃=ベトナム戦争のアメリカ(特にニクソン政権)の酷さは今更言うまでもないけど、日本で、しかも追体験だとどうしても端折られがちな部分だし、イメージしにくかったから。

で、あらためて感じたのは、ジョンのメッセージの伝え方の上手さ。シンプルで、パワフルで、ユーモラスで。ヨーコさんが「それまでの平和活動家はインテリで、弱っちくて、読む気もしない小難しい冊子を配ってただけ」みたいなことを言ってたけど、まさにそういうこと。メッセージの伝え方に関するインスピレーションに満ちてる。バギズムで「トータル・コミュニケーション」なんて言ってたけど、ホントに今=インターネット時代に生きてたらどんなメディアの使い方をしたんだろう、って考えるだけでもすごく面白いし、そう考えることで、ヨーコさんの言ってた通り「ジョンは生きてる」ってことになるんだろう、なんて思ったりもした。

このドキュメンタリーがよかったもうひとつの理由は、映像作品としての質の高さ。過去の映像と過去の音源とインタビューしか素材がないにも関わらず、そういう制約を全然感じさせないのは構成と編集の素晴らしさ以外の何ものでもない。音と映像が有機的にシンクロしてるって意味では、本当の意味で AUDIOVISUAL だし、そこに歌詞の意味までシンクロしてる。すごくレベルが高いし、メチャメチャクリエイティヴ。映像作品としての質の高さは、日本の映像作家にも見習って欲しいもんだ(映画に限らず)。

ちなみに、アメリカ版のポスターと日本版のポスターの違いも比較すると面白い。片や既存の写真をそのまま使ってる日本版(すごくいい写真だけど)。片や「これだけで成立しちゃうの?」って感じのヒネリのあるクリエイティヴを見せるアメリカ版。この辺もレベルの違いかな。

2008/01/29

Afterimages.

美しき日本の残像

. :アレックス・カー 著(朝日新聞社) ★☆

'残像' って言葉が妙に引っかかるアレックス・カーの『美しき日本の残像』。日本人以上に日本文化に造詣が深い著者が、在りし日の日本の文化の美しさと、それが失われてしまった現状について、自身の経験や学識を交えながら、柔らかい文章で辛辣に綴った 1 冊でした。

'93 年の著作なので、もう 10 年以上前に書かれたことになるけど、語られていることは変わってない(その傾向に拍車がかかってすらいる)。先見の明があったのか、そもそも問題がまるで改善されていないのか。おそらくその両方。口調こそ柔らかいけど、なかなか耳が痛い(けど勉強になる)話が多い。

巻頭に坂東玉三郎、巻末に司馬遼太郎という、ものすごいメンツが文章を寄せてるんだけど、巻頭の坂東玉三郎の文章の中で使われている 'コニヨシェンティ' って言葉がちょっと気になる。もともとイタリア語に由来する言葉で、「物知りではあるけど何もつくらない人」のことらしい。ここではもちろん、そうならないように、って意味で使われてるんだけど、これはとても気をつけたいところだな、と。

このアレックスって人は、若い頃に徳島の山奥の茅葺きの民家を再生させて今でも活動の拠点にしてたり、最近では京都の町家再生を手掛けてたりと、決して 'コニヨシェンティ' ではない。

実は、『ガンダム A』に連載されてる富野由悠季監督の連載対談「教えてください。富野です」に登場したのを読んで興味を持ったんだけど、富野監督はこういう歯に衣着せない言い方をする実践派がすごく好きらしい。

実際には、経歴を読む限り、こういう視点を持って、こういう活動をしてこれたのは、本人の資質だけではなく、育った環境がかなり恵まれてた(経済的も、社会的にも)って側面もあるとは思うし、外国人だからこそ見えてくる部分も多い気がするし、素直にすべてを受け入れられるわけじゃない。同じようにアメリカの悪いところを挙げてけばキリがないくらい挙げられるし。一般論としてはね。当事者じゃないからこそわかることもあるし(例えば、ジャズとかボサ・ノヴァとか、当事者であるアメリカ人やブラジル人より、ある意味ではイギリス人や日本人のほうがいい理解の仕方をしている、って側面があったり)。もちろん、当事者にしかわからないこともあるけど。こういう、日本に本来あった(でも今は失われた)いい部分を外国人に教えられるとちょっと自己嫌悪に陥ったりもするけど、それはそれとして、フラットに受け入れる感覚が大事だな、と。そういう意味では、とても質の高い資料ではあるし、読み物としてもなかなか面白い。

2008/01/24

Happiness.

美しい国 ブータン

. :平山 修一 著(リヨン社) ★☆☆☆

今、とっても行ってみたい国のひとつ、ブータンに関する 1 冊。

正直言って、読み物としては期待したほどではなかったけど、基礎知識を得るって意味では、まぁ、アリかな、と。

ブータンといえば、GNP ではなく GNH(Gross National Happiness)を国づくりの指標として掲げる国。ブラジルに行ったときに強く感じた感覚に、なんか共通するものがある気がする。それに、日本と気候や文化の共通点が多く、なんか懐かしい感じになるって言われてるところも魅かれる。行ってみたい。

個人的に気に入ってるのは、これまでのブータンの道路は最高時速 30 km だった、ってハナシ。これは法律のハナシではなく、キチンと整備されてないし、直線がすごく少ないので、30 km 以上出せない、ってこと。急がなくていいし、立ち止まってもいい。それはちょっといいね。

2008/01/21

Life is random.

『iPod をつくった男大谷 和利 著(アスキー新書) ★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp

これまでに何度も仕事させてもらってるテクノロジー・ライターの大谷さんが、波瀾万丈のスティーヴ・ジョブズの経歴(まさに 'Life is random!')と仕事の仕方について記した新書。アップルへの造詣の深さとリスペクトがビシビシと伝わってくる感じがとても大谷さんらしい。

個人的には、キャッチ・コピーをまとめた章と各章末に付いたジョブス語録が、すごくアップル / ジョブズらしさが出ててお気に入り。ライターとしてはやっぱり言葉遣いには神経質になっちゃうし、ちょっと乱暴な感じも含めてすごくツボ。

タイトルに「アップル」という言葉を入れなくても、「iPod」と「スティーヴ・ジョブズ」だけで成立しちゃうのが、今の世の中でのアップルやジョブスの存在感を物語ってて面白い。ただ、新書として、ある種のビジネス書的な感じでまとめようとしてるところが、ちょっともったいない感じもするなぁ。あまり基礎知識がない人でも最低限わかるように書いてるが故に、大谷さんならもっとたくさん持ってるはずのネタを使い切ってない。これはこれで面白かったけど、個人的には新書じゃない、もうちょっとヴォリュームのあるカタチで読みたかったところ。

2008/01/20

Keep dry.

HAGLOFS WATATAIT LAPTOP DRYBAG 15"

(ホグロフス) 

最近、街中でもアウトドアでもすごく人気があり、国内での展開もドンドン大きくなってるスウェーデンの洗練されたアウトドア・ブランド、ホグロフスの PC 用スリーヴ。購入したのは MacBook Pro 15" で使えるサイズのヤツ。

売りはなんと言っても 'DRYBAG' って名前の通り、防水であること。アウトドア・ブランドらしく丈夫そうな防水加工したナイロンで、間口もジップロックのようなファスナーと強力なマジックテープの 2 重式。持ち運びに便利なハンドル付きで、中にはクッション入り。デザインもシンプルでスタイリッシュ。

PC スリーヴは、鞄や靴と同じくらいいろいろと試してきたけど、コイツはかなりレベルが高い。精密機械だし、アウトドアではなくても、普通に雨の心配とかしなくていいのは安心。ただ、強いていうと、AC アダプターだけは一緒に入るようになっていて欲しかった(ムリヤリ入れることは可能だけど)。そこまで考えられてたら★ x 5 だったんだけど。

2008/01/18

A small, good thing.

スーザン・ベル エコ・バッグ(ブラック × ブルー / S)

(スーザン・ベル) 

独特のデザインと、丈夫で軽くて撥水性の高いパラシュート素材で人気のスーザン・ベルのエコ・バッグ。「エコ・バッグ」
って呼び方は正直、イマイチシックリこないけど、使ってみるとなかなか便利だし、評判に違わぬ出来映え。

都心で一人暮らしをしていると、ほぼ毎日、コンビニに行って、当面必要な分だけちょっとずつ買うスタイルが定着してくる。当然、小さいサイズのコンビニ袋が日々、増えていく。ゴミ袋とかには使えるにしても、明らかに必要以上の量が。それをなんとかしたいと思ってたのが購入のキッカケ。別にエコとか、そういう理由もイヤじゃないけど、それよりもどんどん増えてくゴミ袋をどうにかして欲しかったってのが正直なところ。メンドーかなぁ、なんて思ってたけど、使ってみると全然大丈夫。むしろ、気に入ったモノを持ってれば、使うのが嬉しいらしい。

最初は、雑誌に付録で付いてたステューシーのヤツを使ってたんだけど、これはさすがに付録だけあって、しばらく使ってたら破れてきた(今は適当な大きさにブック・カバーとして使用中)。そこで、もうちょっとちゃんとしたのが欲しいなぁ、と思ってたときに思い出したのがこのスーザン・ベルのヤツ。色がたくさんあってどれに使用か迷ったけど、やっぱりストーンズの隠れた名盤(ブラック・ミュージック・リテラシーの低いロック・ファンの間では評価が芳しくない)にちなんで(笑)、「ブラック&ブルー」だろ、と。個人的には袋ナシのパッカブルだったら★ x 5 だったんだけど、それ以外は文句なし。とりあえず、常に畳んで丸めてポケットに入れてあります。用途がちょっと変わるけど L サイズも欲しい(サッカーとかフットサルのときに便利そう)かも、なんて思うほど。

2008/01/16

Run, baby, run.

『走ることについて語るときに僕の語ること 村上 春樹 著(文芸春秋)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
 
毎年一度はフルマラソンを走ってて、トライアスロンまでやってるという、実は一部ではハードコア・ランナーとして知られる村上春樹が、走ることについて綴ってきた文章をまとめたもの。厳密には、「走ること」ではなくて、「走ることで自分自身と向き合う」って感じかな。

文体自体は、いつも通りの村上春樹節なので、まるでジャズを語っているかのような口調で、淡々と、でもその中で、上がったり、下がったり、悩んだり、いろんな感情が入り交じり、その時々で揺れる心の動きが素敵な言葉で描かれてる。ランニングという、ある種、自己の内面への旅を綴ったエッセイ集として、いい意味でとてもライトに読める。
RUN BABY RUN

2008/01/15

Navigated by nature.

星の航海術をもとめて ― ホクレア号の 33 日 
 ウィル・クセルク 著 加藤 晃生 訳 (青土社) ★
 
スター・ナヴィゲーションとも言われる古代の航海術を現代に蘇らせたナイノア・トンプソンが、実際にホクレア号の航海を通じてその技術を会得していくプロセスを詳細に記した 1 冊。

邦訳の出版は 2006 年だけど、原著 "An Ocean in Mind" の出版は '87 年なので、約 10 年の時を経ての出版ということになる。ちょうど去年、ホクレア号が来日したこととかが具体的な契機になってるんだろうけど、それだけじゃなくて、言葉にはしにくい(っていうか、するとすごく陳腐になる)もっと大きな流れの一環として(遅ればせながら)当たり前のように出版された感じがする。


Aloha spirits among the ocean.

ホクレア号について語ろう! 』(マガジンハウス) 
 
ホクレア号に関するターザン別冊のムック。内容的にはダブるところもあるけど、『星の航海術をもとめて併せて読むとヴィジュアル的にも補完されていい。

パタゴニアが発行した "Patagonia: Notes from the Field" にホクレア号が紹介されてることもこれを読んで初めて知ったし、ハワイやカヌーに関する基礎知識も紹介されてて、幅を広げてくれる。こういうファンクションは雑誌ならでは。

2008/01/14

Unity is the power.

JILL SCOTT "Collaborations" (Hidden Beach)  
Link(s): Amazon.co.jp

待望の新譜 "The Real Thing: Words And Sounds Vol. 3" と同時に入手したのは、タイトル通りジル・スコットのさまざまな客演作品を集めた好企画盤。まぁ、このアートワークはどうかと思うけど。

収録曲自体はほとんど知っている曲なんだけど、こうしてあらためて聴いてみると、彼女のヴォーカリストとしての表現力の素晴らしさというか、幅の広さを感じずにはいられない。わりといろんなタイプのアーティストとコラボレーションしてるけど、どれを聴いても彼女の魅力は損なわれることがなく、プロモーション目的の単なる足し算ではない、それ以上の効果を生み出してる。特にセルジオ・メンデスと共演した "Let Me" とか、いい意味ですごく軽くて、気持ちいい仕上がりで新鮮。もちろん、コモンとの "8 Minutes To Sunrise"、コモンとビラルとの "Funky For You"、モス・デフとの "Love Rain [Coffee Shop Mix]" 辺りは相性抜群で秀逸な出来映え。

Real.

JILL SCOTT "The Real Thing: Words And Sounds Vol. 3" (Hidden Beach) 
Link(s): Amazon.co.jp

ファースト・アルバムの "Who Is Jill Scott?: Words and Sounds Vol. 1" で度肝を抜かれて以来、セカンド・アルバムの "Beautifully Human: Words and Sounds Vol. 2" はもちろん、数々の客演でも期待を裏切らないハズレなしのパフォーマンスを見せてきたジル・スコットの新譜を今更ながらゲット。

ファースト・アルバムのカバーの写真で、アリーシャ・キーズ並みの才色兼備なんじゃないか、っていう大きな期待を裏切った、いかにも歌えそうなルックスの彼女だけど、歌声はただ熱いだけじゃなくて、マイルドでソウルフルなヴォーカルは表現力抜群。ソウルでもファンクでもジャズでも歌える数少ないシンガーで、もう間違いない。これだけハズシなしで秀作を連発できてることも、時代を代表する「本物」の証し。

2008/01/12

Re-inhabitation.

『場所を生きる ― ゲーリー・スナイダーの世界山里 勝己 著
(山と溪谷社) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

惑星の未来を想像する者たちへ』等のゲーリー・スナイダーの著作の訳者であり、本人とも親交の深い山里勝己氏によるスナイダーの思想や哲学の考察。

本人の著作を読むことがもちろん第一。でも、第 3 者による考察を読むことで、気付かなかったことに気付けたり、考えが整理されたり、その人しか知らない(その人との)エピソードが紹介されてたり、本人はわざわざ自分では言わないようなことが紹介されていたりして、理解は深まる。

具体的には、スナイダーと宮沢賢治の関係だったり、スナイダーの住むキット・キット・ディジーのことだったり、著者が実際に行ったインタビューだったり。こういうのを客観的にまとめて、整理して見せてくれることで違ったアングルから見たり調べたりすることができる。そういう意味では、とても質の高い参考書で、期待していた以上の内容だったかな。

2008/01/11

Finally.

MAKOTO "Believe in My Soul" (Good Looking Records) ★☆
Link(s): Amazon.co.jp
 
今やすっかり世界でもトップ・クラスのドラムンベース・プロデューサーとなった MAKOTO の約 5 年ぶりセカンド・アルバム。実は、断片的にはかなり前からちょこちょこと聴かせてもらってたし、完成してからリリースまでもレーベルの都合でかなり時間がかかったので、かなり「ついに」って感が強い。

まぁ、トラックのクオリティ自体は、何の問題もないっつうか、安心して聴いてられる。ルーツであるジャズとかソウル・ミュージックのフレイヴァーをドラムンベースってフォーマットの中で表現させたら、贔屓目抜きにしても、今、ナンバー 1 なんじゃないかな。


The icon.

現代思想 2004 年 10 月 増刊号 総特集 チェ・ゲバラ

(青土社)


全然人気ないけど基本的にはけっこう好きな『現代思想』(しかし、スゲェタイトルだな。フツー、ちょっと引くよね)のゲバラ特集号。ちょこちょこと読んでたんだけど、やっと読了。

「革命家は顔が命」というとてもキャッチーで、妙に納得がいく序文から始まって、いろいろな分野の専門家が、それぞれの視点からチェについて語ってるもので、全部シックリくるわけではないけど、視野は広がる。内容としては、幼少時から『モーターサイクル・ダイアリー』の時代、キューバ以前、メキシコでのカストロとの出会いとキューバ革命、カストロとの別れ、そして死という経歴だけでなく、彼の思想や国際観、さらには死後の影響やアイコンとして生き続けてる現象まで扱ってて、これでもかってくらいの情報量。ある程度、基礎知識が必要だし、エディトリアル・デザインがアレなんで取っつきにくいとは思うけど、逆に言うと、この物理的なサイズでこの情報量ってのはスゴイし、キライじゃない。最近、中身の薄いモノが多いからね。

2008/01/10

Clad in the sky, with the earth for a pillow.

『惑星の未来を想像する者たちへ
 
ゲーリー・スナイダー 著 山里 勝己・赤嶺 玲子・田中 泰賢 訳
(山と溪谷社) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

ニール・キャサディがジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』(『路上』)で実質的な主人公格のキャラクター、ディーンのモデルとなったように、同じケルアックの『ザ・ダルマ・バムズ』でジャフィーのモデルとなったことで知られるゲーリー・スナイダー。若い頃にビート・ジェネレーションの流れの中でビートニクスのひとりとして出会ってたけど、ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズといった主要人物に比べるといまひとつ印象が薄くて、当時はあまり気にならない存在だったけど、今に(この年齢に)なってみると他の誰よりも気になる存在になってる。ちょっと不思議でもあり、とても幸せな再会。

ケルアック、ギンズバーグ、バロウズら、多くのビートニクスが激しく、早急に人生を駆け抜けた印象なのに対して(若いうちはそういう生き方のほうがグッとくる)、スナイダーは静かに、でも力強く、一貫した姿勢を貫く創作活動とライフスタイル。自分が年齢を重ねてみると、こういう生き方のほうがインスピレーションを受けるし、いわゆるビートニクスが 50 〜 60 年代のアメリカを反映したカルチャー、過去のある時点を映し出したカルチャーだった(つまり追体験しかできなかった)のに対して、ビートニクス〜ヒッピー的な流れを汲んだネイチャー・ライティングとかディープ・エコロジーとかって言葉で語られるスナイダーの活動は追体験から始まりつつも今現在にキチンとつながってて、今の生活の中でもメチャメチャリアルに感じられる。


2008/01/08

Hombre nuevo.

チェ・ゲバラの遥かな旅

. :戸井 十月 著(集英社文庫) ★★

ゲバラに造詣の深い戸井十月氏によるノン・フィクション。それほど詳細な内容ではないものの、チェの歩みや全体像を掴むのにはちょうどいいボリュームと内容で、その中から戸井氏のゲバラに対する想いは伝わってくる。

個人的には、革命後に工業省の大臣になったときに語った「いくら革命下の苦しい状況だからといって、ものづくりをおざなりにしてはいけない。良いものを、美しいものをつくろう。手を抜いて、醜い不良品をつくることは大きな間違いだ」という言葉に、単なる武闘派ではない革命家としてのチェを強く感じる。

2008/01/03

Mochilismo.

『ゲリラ戦争エルネスト・チェ・ゲバラ 著 五十間 忠行 訳
(中公文庫) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

言わずと知れたキューバ革命の英雄、ゲリラ戦士のシンボル、そして世界で愛されるカリスマ、チェ・ゲバラ自身の著作。タイトル通り、ゲリラの戦い方の本だけど、ちょっと視点を変えると「強大な相手(敵)に、少数(精鋭)で立ち向かうための術」の本に見えてくる。これは、 今の社会とか自分の生活にも全然当てはまる。手段は武力かもしれないしそうじゃないかもしれないけど、目的が理想の実現であることには変わりがない。最近読み直したらそう思えて、すごくしっくりきた。

あと、個人的には鞄と靴の重要性をやけに強調していることも、鞄・靴好きとしては親近感が持てる。鞄と靴は、自分に必要なモノを自分の力で運んで移動しながら活動していくためのエッセンシャルなアイテム。そこにこだわりを持つことは、何年にも渡って無意識のうちにやってきたことだっただけに、これを読んだときに不思議な感覚だったりした。

もちろん、チェ自身もとても魅力的。真摯で有言実行、実践主義的な姿勢は、とかく「楽して金儲け」みたいなスタンスをもたはやしがちな昨今、すごく大事なことを示唆してる。「赤いキリスト」と呼ばれたけど、「僕はキリストじゃないし、慈善事業家でもない。キリストとは正反対だ。正しいと信じるもののために、手に入る武器は何でも使って闘う。自分自身が十字架にはりつけになるよりも、敵を打ち負かそうと思うのだ」って言ってるように、いい意味で武闘派なところもいい。