2008/02/26

Innovating the future.

Q-TIP "Abstract Innovations" (Bulldog Kid Records) Link(s): Amazon.co.jp 

「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ」という名言を残したのは、パーソナル・コンピュータの父として知られるアラン・ケイだけど、まさにその言葉をソウル・ミュージックで体現しているのが Q ティップ。

未だにお蔵入りになったままの "Kamaal The Abstract" は常に iPod でヘヴィー・プレイされてる愛聴盤だし、やっと本格的に動き出すと言われると期待せずにはいられない。今作はそのプロローグ的にリリースされたストリート・アルバムらしいんだけど、ディアンジェロやらアンドレ 3000(アウトキャスト)やらバスタ・ライムスやらエリカ・バドゥやら、そうそうたるメンツが参加してて、十分すぎる内容です。サウンド的には、ヒップホップでありながら単なるヒップホップじゃない、ヒップホップの先を目指す方向性をさらに進めたような、実験的でありながら完成度も高いさすがのプロダクション。やっぱり見ているところが違うね、コイツは。アタマの固い偏屈なヤツら以外の、すべての音楽ファンに。ただ、まだまだ先がありそうなので、期待値を込めて★ x 4 で。

2008/02/22

Just a little too mild.

"Playlist"

. KENNY 'BABYFACE' EDMONDS(Universal)

現在の音楽シーンで屈指のソングライターであることは言わずもがななベイビーフェイスだけど、個人的には彼が提供した曲をホイットニーやボーイズ II メン等のシンガーが歌って大ヒットしたものより、彼自身のレコードのほうが好きだったりする。なぜなら、「歌が上手すぎない」から。彼の書く曲は、「これでもかっ!」ってくらいの美しいメロディーなわけで、それをゴージャスなアレンジで歌唱力抜群のシンガーに歌われた日にゃ、正直、ちょっとトゥー・マッチだったりするので。ポップ・ミュージックというのは「上手けりゃいい」わけではなく、「下手もまた味」だったりする。そういう意味で、彼自身の歌は決してトゥー・マッチではなく、でもなんかいい味があって、ちょうどいいサジ加減。ちょっとワビサビに近い感覚かもしれない。

なので、カバー集となる今作も期待が高まったわけですが、第一印象としては「ヌルイ」。とても品のいいアレンジでまとまってて、クオリティは高いんだけど、もうひとつ面白みに欠ける。個人的には、もうちょっと黒い、ブルージーなサウンドのほうがシックリくる。まぁ、選曲が思ったほど好みじゃなかったのもあるけど。とは言いつつも、クオリティ自体はとても高いし、オリジナル曲の "The Soldier Song"(ちょっと世相を反映してるのかな?)とか、さすがのベイビーフェイス節で、とてもいい仕上がり。

2008/02/20

Soul liberation.

Numbers '08 (iWork '08) (Apple Inc.) ★ 

アップルが満を持して発表しながら、まったく評価されてる気配のない Numbers '08KeynotePages から成る iWork というアプリケーション・スイートに加わるカタチで iWork '08 から加わったソフトで、Keynote がプレゼンテーション、Pages がワード・プロセッサーなのに対して、Numbers はスプレッド・シート。iWork が競合するのは言わずもがな、マイクロソフトOffice になるんだけど、競合という言葉も相応しくないほど、似て非なるものに仕上がってる。正直、Pages に関しては、あまり触ってないので良さは実感できてないけど、Keynote の素晴らしさはスティーヴ・ジョブスのプレゼンテーションを見れば一目瞭然。まぁ、Keynote は自分で使う機会はほとんどないけど、今回、加わった Numbers '08 はもっとリアルで切実な問題なだけに、その衝撃は密かに大きかったので(存在自体が地味だから、つい気付くのに時間がかかったけど)。

2008/02/18

Determination.

スティーブ・ジョブズ 神の交渉術竹内 一正 著(経済界) ★

それほど興味があったわけじゃないけど、古本屋で見つけたので。「勝手にアップル・エヴァンジェリスト」としては、まぁ目を通しておいてもいいかな、と。なんでそう思ってかっていうと、上手く説明できないけど、なんとなく「ウサン臭いビジネス臭」が漂ってたから。タイトルといい、「独裁者、裏切り者、傍若無人…と言われ、なぜ全米最強 CEO になれたのか」ってサブ・タイトルといい、帯の文句といい。まぁ、結果的には、案の定、予感的中だったわけですが。

ネタがいい(対象が面白いし、面白い話も知ってる)のに、それだけでは面白い本にならないっていういい例。中途半端に過激っぽいフレーズで煽ってるわりに、イマイチ説得力がないし。教訓っぽくまとめようとしてるっぽいけど、全然教訓にもなってないし。まぁ、読んで気付いたけど、この人、『松下で呆れアップルで仰天したこと』の人なのね。他にも、好みじゃない感じの「ウサン臭いビジネス臭」漂う本をたくさん出してるし。だから、そういう本が好きな人なら楽しめるのかな? この本だけ、中途半端に「アップル本」っぽい装丁だから騙された。でも、これって逆効果じゃね? どっちの人にとっても。

まぁ、スティーヴ・ジョブズのモノづくりに対する「ダンコたる決意」((C) 桜木花道)は伝わってくるけど。

2008/02/14

Tourismo.

文明としてのツーリズム

. :神崎 宣武 編著(人文書館

そこに何かの法則があるのかはわからないけど、その本を探してるわけでもないのに、何度も、しかも違う複数の書店でなぜか出会って、妙に引っかかる本っていうのがある。パラパラっと中身を見てみて別にいいやって思ったり、高いって思ったりして買わなかったのに、その後もやっぱりまた引っかかって手に取ってる。これも何かの縁なのかな、と思って買ってみることもあるし、買わないこともあるけど、この
『文明としてのツーリズム』は買ってみた例。タイトルが引っかかったのか、妙に細長い版型とわりといい感じの装丁が引っかかったのか、わかんないけど。別に著者を知ってるわけでもないのに。

まぁ、学問としてツーリズムを研究してるんで、文章自体が読み物として面白いかっていうと微妙だけど、内容自体はなかなか面白い。江戸時代には日本ではもう「寺社詣で」ってカタチの庶民向けのツアーがあって(庶民の旅は禁止されてたんだけど、
「寺社詣で」は例外的に認められてて、ほぼ「寺社詣で」をお題目にして豪遊してたらしい)、しかも、それが世界の旅行業の元祖、トーマス・クックより 100 年以上前だったってハナシとか、その時代からあったセックス・ツーリズムのハナシとか、近代の国策としての観光立国化、特にエコ・ツーリズムとかヘリテージ・ツーリズムのハナシとか。コスタ・リカとか、キューバとか、つながってくる。

あと、そのベースになってる部分で、現代が抱えるジレンマとして挙げられた

・原子力や核に代表される「巨大な力」を手に入れたけど、その力が巨大すぎて扱いが難しい。
・生産や輸送など、多様な利便と豊かな生活を手に入れた反面、逆に体力は衰えて、過剰栄養と飢餓という、正反対の恐怖が併存している。
・高度に発達した科学・技術が専門化し、異分野間の対話をほぼ不可能にして、その結果、自然と人間、科学と技術、社会と文化、政治と経済などを総合的にとらえて、望ましい未来を展望することができない。

という 3 点と、情報の持つ機能として挙げられた

・メッセージ性:生産・流通・研究・事務など、人間の身体外の装置と制度に作用して、その機能や効率を上げる。
・マッサージ性:人間の感覚機能に作用して、心身を喜ばせたり、楽しませたり、珍しがらせたり、面白がらせる。

というふたつ。この辺を整理すると、ツーリズムだけじゃなく、いろいろなモノに適用・応用できそう。
「メッセージ」っていうよりもうちょっとファンクショナルで無機質な感じの言葉のほうが合うと思うけど、「メッセージ」と「マッサージ」ってのも語感としてはいい。

2008/02/11

A warm layer.


Patagonia Down Sweater Pullover Hoody (Patagonia) 

ここ数年ですっかり定番化した感のあるパタゴニアのダウン・セーター(もちろん、他メーカーも似たような製品を出している)を、やっと入手。ダウン・セーターとは、その名の通り、ダウン素材のセーターであって、ダウン・ジャケットではない。つまり、あくまでもインナー・レイヤー用のウェアとして考えられて、つくられている。具体的には、通常のダウン・ジャケットより薄く、軽い。しかも、この Patagonia Down Sweater Pullover Hoody は腹部のいわゆるカンガルー・ポケットに収納することができるパッカブルで、携帯性もとても優れてる(テントの中とかで枕としても使えそう)。

2008/02/10

Feeling lazy.

"Sleep Through the Static"

. JACK JOHNSON(Universal)

巷のオシャレさんの間ですっかり人気者になりながら、力むことなくマイペースで、コンスタントに、良質なアルバムをリリースしてるジャック・ジョンソンの新譜。"Brushfire Fairytales" 以来、ずっと好きなんだけど、まぁ、今回も特筆すべきことはないくらい、いつも通りのジャック・ジョンソン。相変わらず、黒すぎず白すぎない、緩いグルーヴが気持ちいいジャック・ジョンソン節で安心して聴けます。

レーベル・オフィシャルでこんな EPK が YouTube にアップされてる。そういう時代。動画の張り付け(embedding)を禁止することもできるらしい。

まぁ、この人にあえて難癖をつけるとすると「時代を超える超名曲」みたいなモノをつくってないことかな。この人の声で、この人のサウンドで、この人のグルーヴで聴いてる限りは何の問題もないんだけど、頭から離れないメロディーとか、他のアーティストがまったく違うアレンジでカバーできそうな、そういう名曲がないのかな、と。まぁ、かなりレベルの高い要求ではあるけど。

Truth is more interesting than fiction.

地球(ガイア)のささやき
:龍村 仁 著(角川ソフィア文庫
 

映画『地球交響曲(ガイア・シンフォニー)』の監督として知られる龍村仁氏が '95 年に出したエッセイ集。時期的には、『地球交響曲』の第一番〜第三番(厳密には第四番をつくりはじめる頃)に書かれたものをまとめたもので、当然、『地球交響曲』の内容ともダブっている部分が多く、『地球交響曲』を見ていたほうが楽しめる。

地球交響曲』は、大学時代に第三番まで劇場で観てて、最近、第一番〜第五番を収めた DVD ボックスを大人買いして観直して、第六番を去年、下高井戸で観たので、一応、全部観てることになる。大学時代に第一番〜第三番を観てえらく感動した記憶があったけど、10 年以上経って、オトナになって、あらためて観直しても感動は変わらず、より深くなった気がする。当時は、湾岸戦争があったりして、いわゆる「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」的なモノに違和感を感じはじめたりした時期だったんだけど、その傾向は間違いなくドンドンと大きくなってるし、リアルになってる。そんな中で、安易でお手軽に使われてるウサン臭い「エコ」とか「ロハス」とはまったく違う、もっと大事なモノが 10 年以上の時を超えて貫かれている、そんな力強さを感じる。

この『地球(ガイア)のささやき』は、地球交響曲』の制作・取材を通じて得たものや感じたことなどが、わりと読みやすいボリュームでまとまってるんだけど、やっぱりグッとくるハナシが多い。例えば、「ブッシュマンには動物・植物・人間といった概念の区別はなく、生命を分かち合うもの・生命を脅かすものって区別しかない。生命を分かち合うものの中では動物・植物・人間は区別されてない」ってハナシとか、フロリダの若い学者がイルカと名前を呼び合ったってハナシとか。あと、作り手(取材者)としての姿勢のハナシとして、「撮りたいと思ってる像が撮れなかった時は、その撮れなかった過程、どれほどの知恵とエネルギーを使って撮るための努力をしたかを撮れば、リアルな真実を描いた作品になる」ってハナシとか、やたら予定調和が過剰に求められて、その結果として蔓延してる中、すごく参考になるし勇気が出る(そう言えば、石川直樹くんと念願の初対面を果たした時、石川くんも同じようなことを言ってた)。あと、自転車派なところとか、親近感を抱いたり。

そんな中でもクライマックスと言えるのが、
地球交響曲』には反映されてない、世界的女優として知られるシャーリー・マクレーンと彼女の娘と日本人女性と一休としん女のハナシ。「事実は小説より奇なり」って言葉があるけど、まさにその通り。英語では「Truth is stranger than fiction.」って言うらしいけど、「strange」っていうよりも「interesting」で「mysterious」って言ったほうが相応しい、って思うほどの不思議なハナシ。これだけで 1 冊書けそうだし、しかもそこいらの小説なんかよりよっぽど面白いものになりそう。こんな体験してるから、地球交響曲』みたいな作品をつくり続けることができるんだなぁ、と感心しちゃった。そういう意味では、エッセイ集ってカタチでまとまっちゃってることが、ある意味ちょっと不満だったりする。

最後に、あとがきに書かれている「on the road」という感覚について。これは、日本人でありながら、アメリカに渡ってベトナム戦争に参戦して、地雷で片眼と手の指と片足を吹き飛ばされたという人物の言葉で、「目的地がはっきり見えているから旅に出るのではなく、まず旅に出て、その旅の一瞬一瞬をいかに旅するかによって、本当の旅の目的地が見えてくる」というもの。この言葉、この感覚には、なんかありそうな予感がする。

2008/02/05

Creative politics.

will.i.am "Yes We Can"  Link(s): dipdive
 
1 月 8 日にニュー・ハンプシャーで行ったバラク・オバマの演説にインスパイアされたブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムが、バラク・オバマの大統領選挙をサポートするために作った曲。しかも、ただの応援ソングじゃなくて、その演説をそのまま引用してリリックにするカタチで曲に仕上げてて、 2 月 2 日に(このために開設した?)Dipdive というサイトと YouTube でビデオとしてリリースされた。

コモンやハービー・ハンコックやカリーム・アブドゥル・ジャバーやジョン・レジェンドやスカーレット・ヨハンソンやケイト・ウォルシュなどなど、書ききれないほど多くの豪華ゲストが参加していて、ビデオの監督はボブ・ディランの息子のジェシー・ディラン(ちなみに、バラク・オバマ陣営はこのプロダクションには直接関与はしていないとのこと)。 

2008/02/03

Trek as you like.

自然との対話』(山と渓谷社) ★

別に新刊というわけじゃないけど、古本屋で見つけて入手。サブ・タイトルが「24 人のトークコレクション」という通り、いろいろな組み合わせの対談が 12 本収録されてて、主に雑誌『山と渓谷』に収録されたもの(ひとつだけ『Outdoor』誌のもの)。対談の時期は '95 〜 '01 年ということで、ハナシとしてはちょっと古い感は否めないけど、まぁ、古本だし、その点を差し引いて考えても、わりと楽しめた。

登場している人物で、個人的に興味がある名前を挙げると C・W・ニコルさん(当時、長野県知事だった田中康夫氏との長野対談)、植村直己氏、石川直樹くん(祖父さんが芥川賞作家の石川淳だったことは初めて知った! )辺り。もちろん、12 本・24 人のすべてが好き(興味がある)ってわけじゃなくて、まぁ、打率 3 割くらいな感じだけど、今まで知らなかった人のハナシがわりと面白くて、そういう意味ではいい出会いだったのかも。


2008/02/02

Re-invention.

iPhone ショック

. :林 信行 著(日経 BP 社)

マック系のライターとして古くから知られる林氏が iPhone についてまとめた、いわゆるハード・カバーと新書の中間くらいのヴォリュームの 1 冊。

サブ・タイトルに「ケータイ・ビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり」と付いているように、わりとビジネス向けにしつらえてる感じで、その辺が個人的にはちょっとビミョーな感じ。もうちょっと面白くできたような気がするけど、ちょっともったいない印象。まぁ、個人的に iPhone 関連の情報は個人的に興味があってマメに調べてるし、アップル自体のこととかスティーヴ・ジョブズのこととか、わりと知ってることが多かったから思ったほど楽しめなかったのかもしれないけど。特に熱心に iPhone のことを追っかけてるわけじゃない人にとっては、わかりやすくまとまってていいのかも。

関係ないけど、書籍のサブ・タイトルって、Amazon とかの検索に引っかかるから付け方が大事なんだよね。