2009/05/27

Inconvenient truths.

知られざる真実 ー 勾留地にて ー

. :植草 一秀 著 イプシロン出版企画)

知ってる(覚えてる)人もいれば、別に知らない(覚えてない)人もいるだろうけど、以前はいろんな TV 番組にコメンテーターとして出演してた経済学者・経済評論家で、ニュースやワイドショーを賑わせた事件での逮捕をキッカケに、そういった場では姿を見なくなった(閉め出された?)著者が、サブ・タイトル通り、拘留中に東京拘置所で綴った手記をまとめて 2007 年に出版されたモノで、
タイトルは現在、著者が本書の出版後に始めたブログのタイトルと同じ。内容はもちろん、同名のブログ人気(「人気」って表現が適切なのか、ちょっと微妙な感じがするというか、違和感を感じなくもないけど。別に穿った意味じゃなくて、「人気」って表現が持つ無邪気な感じとはちょっと違う、もっとシリアスなニュアンスが強い気がするので)、さらには著者自身の知名度や事件当時の報道の異常さのインパクト・記憶のせいもあってか、すでに 5 刷を重ねてるらしい。著者のオフィシャルなプロフィールは、現在、代表取締役を務めてるというスリーネーションズリサーチ社のサイトで確認できる。

ニュースやワイドショーを賑わせた事件での逮捕」ってのは、2004 年に手鏡で女子高生のスカートの中を覗こうとしたという容疑で逮捕された事件(この事件報道の中で、1998 年に電車内で痴漢事件を起こしてたことも報じられた)と、2006 年に電車内で痴漢の容疑で逮捕された件のこと。特に、2004 年の事件は、ワイドショーを中心に異常なまでに取り上げられてた(ワイドショーに「報道」って表現を相応しくない。ヤツらはただ「取り上げて」るだけだから)し、その頃は当時働いてた会社を辞めてフリーランスになってたから、多少は TV を観たりもするようになってたんで、それなりには覚えてる。

とは言いつつも、個人的には著者に対してはそれほど強い印象も特別な感情も抱いてなかった。別に好きでもキライでもないというか、そういう感情を抱くほど知らなかったというか。著者がマス・メディアで活躍してたのは 90 年代末から 00 年代の初め頃の数年間だと思うけど、その頃は個人的にメチャメチャ忙しくて、TV とかほとんどちゃんと観てなかったから、見かけることはあっても、どういうことを主張してたのかも、それがどういう意味だったのかもほとんど理解してな かったし、考えてもなかったんで。だから事件のことを聞いたときも、ポジティヴな印象でもネガティヴな印象でもなく、ただ単純に、事件自体に「何それ?!」って思っただけで。

だって、事件が事実なら、用件が用件なだけに
それはそれで「何それ?!」だけど、なんか不自然というか、単純にそうとも思えなくて。普通に考えて、いい大人(しかも、それなりに見識があり、顔が世間に知られてる)がやることとは思えないし。もし、本当に覗きたいと思ったとしても、もうちょっと利口な手があるだろ、って。酔っぱらってたりしたならともかく、昼間に素面でやることとは思えない。それに、ヒネクレ者だからか、どいつもこいつも見事に著者を悪者扱いする取り上げ方(特にただ印象だけでもっともらしい顔して「つまんねぇ正論」を振りかざしながら、肝心な事件では単にお茶を濁してるだけの自称「キャスター」とか「コメンテーター」のコメント)にも違和感というか、本能的な気持ち悪さを感じたし。あと、捜査で著者の自宅の屋根裏から痴漢モノのエロ DVD が発見されたなんて、あまりにも安直過ぎだし。まぁ、なんか気持ち悪い後味があった、と。判決の「罰金と手鏡没収」ってのも「何それ?!」だし。

ただ、
別に好きでもキライでもなかったわけで、「こんなこと、絶対おかしい!」とか憤ったわけでもなく、「こんなことするなんて、ガッカリ」って落胆したわけでもなく、なんか気持ち悪い後味のまま、過ぎていったって感じだったんだけど。その後、2006 年の事件で逮捕されたことがこの知られざる真実』の執筆につながってるんだけど、この時点でも、やっぱり著者自身には特別な印象はなくて、ただ「何か変な感じだなぁ」って思っただけで。その後も、鮮明に覚えてたわけでもないし、積極的に追いかけてたわけでもないし。

この知られざる真実』を読むキッカケになったのは、おそらくこの本の多くの読者と同様に著者が公開してる同名のブログ、植草一秀の「知られざる真実」。何かの機会(何だか覚えてないけど)にブログを見る機会があって、それで事件のこと(特に本人の言い分)とか、今の政治・経済・社会についての考え方とか提言とかを読んで、それ以来、RSS を登録してチェックするようになった、と。このブログは更新頻度はかなり高くて、文章量も参照先のリンクも多いし、けっこう専門的な内容だったりもするんで、キチンとタイムリーにフォローしていくのは決して楽じゃないんだけど、でも、まぁ、内容としては十分興味深いし、ちょうど、日本でもインターネット / ウェブサイト(もちろんブログも含めて)が既存のマス・メディアとは違うメディアとしての役割をちょっとずつ発揮するようになってきてるかなって感じだしてた時期だったりもしたんで(=既存のマス・メディアが笑えないレベルでヒドイことになってきた時期ってことも言える)。で、そこで紹介されてた知られざる真実』にも興味を持った、と。

だいぶ前置きが長くなったけど、そういう経緯で書かれた本なんで、著者自身の巻き込まれた事件(及び巻き込まれることになった理由)
についての「知られざる真実」を具体的且つ詳細に、その背後関係まで含めて綴った本なんだと勝手に思ってたんだけど、そういう側面ももちろんありつつも、それだけではなかった。中身自体は、第 1 章「偽装」・第 2 章「炎」・第 3 章「不撓不屈」の全 3 章の構成。第 1 章の「偽装」は、これまでの日本で行われてきた数々の「偽装」、例えば、郵政民営化、りそな銀行問題、タウン・ミーティング問題、天下り、小泉政権の数々の失政、さらにはメディアの問題等々を取り上げてる。第 2 章の「炎」は、著者の生い立ちから始まって、職歴に沿ったエピソード、例えば、野村証券から大蔵省に派遣されてたときに、どんな仕事をどういう目的でしていたか等に触れてる。第 3 章の「不撓不屈」は、タイトル通り、現在〜これからをどういう心境で生きるのかみたいなことが述べられてる。さらに、巻末資料として、著者自身が巻き込まれた 3 件の事件について、詳細に記されてる。

まぁ、内容的には、著者がブログでたびたび言及してる「政・官・業・電・外」(政治屋 / 特権官僚 / 大資本 / 御用メディア / 米国)の「悪徳ペンタゴン」 につながる話なんだけど、まぁ、最近のマス・メディアによる「世論調査」という名の「世論操作」とか、一連の小沢一郎の秘書の逮捕のニュースとかを考えれば、まぁ、呆れながらも頷ける話ばかり で、そういう場所の近くにいた人ならではの説得力もある。例えば、国民を IQ で分類して、IQ の低い層を政権支持層と設定して、その層に特化した PR を徹底的に行った話とか、著者がテレビ東京の『ワールド・ビジネス・サテライト』を外された経緯とか、著者が大蔵省に派遣されてた時期に関わった(消費税の前身とも言える)売上税導入のための PR で、世論に影響力を持つ政界・財界・学会の人物を 3000 人リストアップして、大蔵省職員が執拗に説得を行ったって話(メディアや講演での発言はすべて検閲され、説得されない人物はブラック・リスト入りなんだとか)とか。
本書で私は真実をありのまま記述した。私の心に一点の翳りもない。
エピローグにはこんな言葉が記されてる。こういうことをストレートに表現してる本ってのは、ありそうでなかなかないし、そういう状況に追い込まれちゃったからこそなのかもしれないけど、テーマがテーマだけに、相当リスクがあるだろうし、勇気も要っただろうことは容易に想像できる。激しく揺れ動きながらも理不尽に抗おうって強い意志とアティテュードには、ホント、素直に敬意を表したいと思う。

個人的には、日常的にブログを購読したり、この知られざる真実』を読んだ後でも、著者の熱烈なファンとか全面的な支持者になったわけじゃない(そんなことは著者も望んではいないだろうけど)し、この知られざる真実』が今後も何度も読み返すに違いない名著だとも思ってない。まぁ、その理由は、別に何から何まで共感できるわけではないってこともあるし、経済の専門家の経済の話ってそもそも胡散臭くてイマイチ共感できないってこともあるし、あと、個人的な部分での相性というか、考え方とか文体とか比喩とか引用とかのセンスみたいな部分がイマイチシックリこないってこともある。あと、特定のテーマについてもっと深く掘り下げた感じのルポタージュ的な内容(つまり、一連の事件がいわゆる「冤罪」であるだけでなく、その裏に大きな力が働いてる「陰謀」であるか否かについての詳細な検証とか、具体的に何がその呼び水になったのかとか)を期待してたから、ちょっと期待と違ってたって側面もあるし(まぁ、著者は当事者だし、ジャーナリストやルポ・ライターじゃないから仕方ないのかもしれないけど。でも、そういうのが読みたいなぁ、とは思う)。それに、著者の心情的な部分も含めて、メチャメチャ共感したとか感動したとか、そういう類いの感想を抱いたわけでもないんだけど、でも、こういう本とかブログの存在自体はすごくポジティヴだと思うし、吟味すべき情報ソースのひとつとしてすごく貴重だな、とは思う。
国民は「郵政民営化」の裏事情を知らずに「郵政民営化賛成=改革勢力」「反対=抵抗勢力」というデマゴギーを鵜呑みにした。日本人は嘘話という意味でデマという言葉を使うが、これはデモクラシーのデモと同じで「民衆」という意味を持つ。西部邁氏は「ギリシャ・ローマの時代から、デモクラシー=民主主義政治にはデマゴギーが付きまとうのは常識だった。民衆が前面に出て暴れまくる時代というのは、大なる可能性でデマゴーグが出る。民衆扇動家という意味だが、扇動するためには嘘をつくことが多いから、デマ=嘘ってことになった」(「座談会・日本の指導者像」『表現者』2006 年 11 月号 / イプシロン出版企画)と指摘する。西部氏は「ギリシャ・ローマの昔から、デモクラシーはデマゴギーに振り回される根強い傾向があった」とも述べている。
これも本書からの引用なんだけど、まぁ、言い得て妙というか、歴史的にもいろんな例もあるし、マトモな感覚で今の日本を見てれば、郵政民営化に限らず、いろんなことについて(ホントにいろんなことについて!)、ほぼ「実感」って言っても間違いないと思う。特にマス・メディア(著者の言葉を借りれば
悪徳ペンタゴンのひとつ、御用メディア)はヒドくて、実態・実感との乖離はどんどんヒドくなってると思うけど、まぁ、インターネットの世界が(遅ればせながら日本でも)その隙間を埋める役割をちょっとずつ果たしつつある感じはしてるし、ここで指摘されてる問題だけじゃなく、いろんな「知られざる真実」について、もっとチェックしてかないとな、なんて思ったりもしてる。それこそ、"Loose Change"(セカンド・エディションの日本語版はここで観れる / ダウンロードできる)とか『911 ボーイングを探せ』とか『暴かれた 9.11 疑惑の真相』でも語られてる通り、9.11 に関しても疑問だらけだし、世界がインフルエンザ・パニックに陥ってる中、タミフルの特許を持ってるギリアド・サイエンシズ社の元会長で現在も株主なのがラムズフェルドだったりすることとか、安易に陰謀説とかを唱える気はないけど、やっぱり何かあるのかな、って思っちゃうし。あと、はっぴいえんど販売中止とか、明らかに意味不明なのは言わずもがなだけど(iTunes Store だけは何喰わぬ顔して売ってて、超好感持ったけど)、一連の大麻報道(及び大麻行政)とかも意味わかんなすぎだし(そういえば、大麻じゃないけど、槇原敬之が覚醒剤取締法違反で逮捕されて CD が回収されたとき、キヨシローさんは「じゃあ、ビートルズもジミヘンも回収しろよ」って、すごく真っ当なことを言ってたね)、まぁ、長くなるから細かくは書かないけど、タレント(才能がないヤツがタレントって呼ばれてること自体おかしいんだけど。同じように、芸のないヤツを「芸人」と呼ぶこともおかしい)が安易に TV CM に出てること(そして、それを当たり前のこととして受け入れてること)とか、明らかにおかしいし。まぁ、他にも、したり顔でつまんねぇ正論を振りかざすヤツが多かったりもするし、やたらと数値化できる価値だけに囚われてるヤツも多いし、もう、それこそ挙げればキリがないくらいナゾだらけなんだけど。本書にも、奇しくもこんなことが書かれてたけど。
私は科学では説明できないことが多く存在すると思う。動物行動学者の日高敏隆氏は『人間はどこまで動物か』で「科学とは主観を客観に仕立て上げる手続き」と述べる。また、「科学とは部族の神話と真実との区別がつかぬようにする自己欺瞞の体系」と主張するアメリカの論文を紹介する。「科学」の貢献は大きい。だが、科学が万能だとは思わない。
まぁ、こういう時代に生きてるってことが幸せなのかどうか、かなりビミョーだとは思うし、インターネットってツールがあることが恵まれてることなのかどうかもイマイチビミョーな感じだと思うけど(インターネットには功罪があることは否定できないし。もちろん、どんなツールにも功罪はあるけど、インターネットの場合、簡単に扱えるわりにそのどちらもが強烈なので)、幸か不幸かこういう時代に生きてるわけだしインターネットもあるわけで、それはそれとして、人生は続くわけで、いろいろ自分で考えながら生きてかなきゃなわけで(そういえば、関係ないけど、日本人の 20・30 代の死亡理由の 1 位は自殺なんだとか。日本人の年間自殺者数は常に 30000 人以上だし。一緒にブラジルに行った知り合いが「日本人って自殺するんだって?」ってスゲェ不思議そうに聞かれたって話を聞いたときにも思ったけど、これって異常以外の何モノでもない)。そのためのツールのひとつというか、参考資料としてこの知られざる真実』とかブログがあるんだと思うし。あと、もうちょっと具体的な話、これまたタイムリー且つ意味不明な問題として、裁判員制度との絡みで考えても決して他人事じゃなかったりもするし。

この知られざる真実』とは直接関係ないけど、やっぱり BGM は "Fuck The Police"。もちろん、N. W. A. のクラシックでもいいんだけど(それにしてもいい名前だなぁ、'Niggaz with Attitude' って)、ここはあえて J DILLA かな。12" インチのアートワークにはムミア・アブ・ジャマールロドニー・キングの写真が使われてたし。


J DILLA "Fuck The Police" (From "Exclusive Collection" by DJ RHETTMATIC)









2009/05/26

Vintage beats. Vintage groove.

MARC MAC Presents VISIONEERS "Dirty Old Hip Hop" (bbe) 

昨日のエントリーでレビューした DJ カム・カルテットの "Rebirth of Cool" を聴いてた流れで、ナズの "The World Is Yours" のカヴァー繋がりな 1 枚を。

ディーゴと共に 4 ヒーローのメンバーとして UK クラブ・ミュージック / UK ブラック・ミュージック・シーンを牽引してきたマーク・マックが、前にレビューした "Influences: Compiled and mixed by DJ MARKY" をリリースしたイギリスの bbe からヴィジョニアーズ名義で 2006 年にリリースしたジャズ・ヒップ・ホップ・アルバム。生演奏を全面にフィーチャーしながらも、全部生ってわけでもライヴ・レコーディングってわけでもなく、生演奏とヒップ・ホップのプロダクション手法を有機的にいい感じで融合してるアルバムで、ヴィンテージ感溢れるサウンドの質感がすごくいい。

2009/05/25

Whose world is this?

DJ CAM QUARTET "Rebirth of Cool" (Inflamable) 
Link(s): Amazon.co.jp

昨日のエントリーでレビューしたジャズ・リベレーターズ(JAZZ LIBERATORZ)を聴いてて思い出したんで、いわゆる「ジャジー・ヒップ・ホップ」的な流れなモノを連投。

今となっては懐かしさする感じるフレンチ・ヒップ・ホップの代表格的な DJ / プロデューサー、DJ カム(DJ CAM)が 2008 年にリリースしたアルバム。ヒップ・ホップ・クラシックスをジャズでカヴァーするっていう企画モノで、もともとは "Saint Germain des Pres Cafe, Vol. 9"(Links: iTS / Amzn)っていう 2007 年リリースの企画盤のディスク 2 として発表されたモノを集めて "Rebirth of Cool" って直球なタイトルでアナログをリリースして、後に CD でもリリースされたモノなんだとか。本人にジャズ・ミュージシャンを加えた DJ カム・カルテット(DJ CAM QUARTET)名義でのリリース。

2009/05/24

In a jazzy mood.

JAZZ LIBERATORZ "Fruit Of The Past" (Kif) 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

70 年代のスピリチュアル・ジャズの名門レーベル、ブラック・ジャズ(Black Jazz)・レコーズを模したアートワーク+ジャジーなヒップ・ホップ・サウンドを展開した 2008 年リリースのアルバム "Clin d’oeil"(Links: iTS / Amzn)の評価が高かったパリのヒップ・ホップ・ユニット、ジャズ・リベレーターズ(JAZZ LIBERATORZ)の編集盤。

"Clin d’oeil" 以前の、2003 〜 2006 年リリースの 5 枚の 12" インチに収録されてたアルバム未収録トラックに新曲を加えた作品集。全 26 トラックっていうお腹一杯な内容になってる

2009/05/21

A Brazilian rare groove classic.

COPA 7 "O Som do Copa 7" (Top Tape)  Link(s): Amazon.co.jp

しばらくブラジル音楽のエントリーはなかったけど、別に聴いてなかったわけじゃなく、相変わらず 70 年代頃を中心にこの辺ばっか掘ってるんだけど、そんな中でもお気に入りの 1 枚が、1979 年リリースのコパ 7 のファースト・アルバム。アートワークもサウンドもとてもラヴリィ。

コパ 7 といえば、前にレビューした "Black Rio" にもメチャメチャファンキーな "Copa 7 No Samba" が収録されてたけど、いわゆるブラック・リオ・ムーヴメントを代表するバンドのひとつ。ブラック・リオ・ムーヴメントってのは、同時期のアメリカのソウル〜ファンクにインスパイアされたブラジル音楽、言ってみればブラジリアン・レア・グルーヴなわけで、まぁ、元も子もない言い方しちゃえば悪いわけがないわけで。

2009/05/20

Cycling blues.

『自転車の安全鉄則』疋田 智 著朝日新書)
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

新書は好きじゃないと言いながらもちょこちょこと新書をレビューする、しかも(良くも悪くも)すごく新書っぽい本をレビューするのは個人的にはどうかと思うけど、まぁ、最近すごく気になってたトピックについてのモノだったんで、ついつい読んじゃった。タイトル通り、「自転車についての基礎知識」についての一冊。自転車好きの目から見ても、最近、いろいろ目に余ることが多いんで、人に文句を言ったりどうあるべきか考える前提として、まずは自分が、あらためてキチンと整理しておこうかな、と。

著者はメディアでも目にすることの多い「自転車ツーキニスト」(この呼び名はどうかと思うけど)で、自転車に関する著書も多い疋田智氏。この人のルックスを見ると、ついついライムスターのMC、宇多丸を思い出しちゃうし(別にいい意味でも悪い意味でもないけど)、TV 局勤務だからか、広い意味でのスタイリング(ネーミングとかアート・ディレクションとかの部分で)というか、センス的な部分がピンとこないからか、ビミョーに胡散臭さを感じちゃう部分もあるんだけど、NPO 法人・自転車活用推進研究会の理事だったりもして、各種メディアで訴えてることは一理あることも多かったりする。

2009/05/19

La Bandiera.

『闘争人 ー 松田直樹物語』 二宮 寿朗 著三栄書房) 
 Link(s): Amazon.co.jp

ちょっと前に名波浩の夢の中まで左足』のレビューでも書いた通り、日本人のサッカー選手の本ってほとんど読まないんだけど、他でもない、我らがマリノスのバンディエラ、我らがマリノスの魂であり、ミスター・マリノスこと松田直樹が主人公だって言われるとハナシは別なわけで。これまでにありそうでなかった松田直樹本。まぁ、これは読まないわけにはいかないな、と。思った以上に売れてるのか、新宿周辺の書店では、軒並み品薄だったりしてる。

「出さなきゃ殺すというオーラがある。」

エキセントリック(というか、選手に対して強圧的)だったことでは歴代監督の中でも群を抜いてた印象のある 2002 年のワールド・カップ時の日本代表監督、フィリップ・トルシエにこう言わしめた男が松田直樹であり、帯には自筆の文字で「俺は J リーグ最大の問題児でした」なんて書いてあったりする。まぁ、タイトルからして『闘争人』なくらいなわけで。まぁ、暴れん坊だ、と。

2009/05/18

Tank, tank, tank.

『機動戦士ガンダム MS イグルー 2 - 重力戦線 - 3 オデッサ、鉄の嵐!』 
 今西 隆志 監督(バンダイビジュアル 
 Link(s): Amazon (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)

前に第 1 話「あの死神を撃て!」第 2 話『陸の王者、前へ!』をレビューした、フル 3DCG で描かれたガンダムの 1 年戦争のサイド・ストーリーで、「ガンダムが出てこないガンダム」としても知られる MS IGLOO シリーズの「重力戦線」の最終話。これまでのエピソード 2 話はジオンが優勢だった時期のヨーロッパ戦線の局地戦だったのに対して、今回はタイトル通り、舞台はジオンが地球上で劣勢になってる時期の地球戦最大規模の激戦、オデッサ。主役はアートワークに描かれてるようにガンタンクなんだけど、さすがは MS IGLOO シリーズって感じのちょっと驚きの展開だったりする。

主役のガンタンクは RTX-440 陸戦強襲型ガンタンク。本来、通常知られてるガンタンク(RX-75)ってのは長距離支援用の機体なわけで、陸戦強襲用ってことは全く別の目的を持った機体ってことになるわけで、名前こそ同じ「ガンタンク」ではあるけど、実際には全く別の機体って感じ。その圧倒的な機動力と運用のされ方は、いわゆるガンタンクのイメージとは(いい意味で)かけ離れてる。まぁ、それでも陸戦強襲型なわりに射程が長くて取り回しにくそうなキャノン砲が付いてたり、ナゾな部分はあるんだけど。ともあれ、『遠吠えは落日に染まった』でヒルドルブを変幻自在に扱ったソンネン少佐といい勝負しそうな、なかなか強力なマシンではある。

2009/05/13

Organic vibes.

"Above the Bones"

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MISHKA(J.K. Livin Records)

気がつけば 30 代の半ばを過ぎても 1 年の半分くらいをショーツ・パンツで過ごしてるわけだけど(温暖化に伴ってその傾向は強くなってる)、ここのところすっかりショート・パンツ向きな季節になってきてて、当然、聴きたい音楽もそういう気分を反映したようなモノになったりする。そんな最近のヘヴィー・ローテーションのひとつがちょっと前にリリースされたミシカのサード・アルバム。俳優のマシュー・マコノヒーの主宰する J. K. リヴィン・レコーズの第 1 弾リリースなんだとか。ハリウッドのこととか疎い(というか、興味がない)んで、よく知らないけど。

ミシカといえば、カリブ海のボートの上で育ったっていう異色の経歴を持つカナダ人のアーティスト(同じ境遇で育った姉はヘザー・ノヴァだったりする)。仕事で行ったフジ・ロックでライヴを観たことがある。1999 年にクリエイションからファースト・アルバム "Mishka" がリリースされた後だったかな。レーベルがクリエイションだったからか、ちょっとロックっぽいプロモーションがされてたようなイメージがあって、でも、ライヴはシンプルでアコースティックな、まぁ、言っちゃえば地味な感じで、レゲエの印象がけっこう強かった。そんなギャップのせいもあったのか、はたまた知名度が低かっただけだったのか、あまり人が集まってなかったような記憶がある。でも、個人的にはそれが逆に良かったんだけど。ボケッとノンビリ楽しめて。ライヴ自体はすごく良かったし。(最近は行ってないから、どうなのかわかんないけど)フジ・ロックみたいなイベントって、どうしてもネーム・ヴァリューがあって、ヒット曲のあるアーティスト(=ビッグ・ネーム)に有利に、新人に不利になりがち(実力とは別の次元で)。ステージがひとつのイベントならどんなに知名度のない新人でもとりあえず観て(聴いて)はもらえるから、ライヴが良ければ「勝てる」けど、ステージが複数あるイベントだと観てすらもらえないから。ちょっとハナシがズレちゃったけど、そんなわけで、ミシカにはわりといい印象があって、メチャメチャ好きってわけではないものの、まぁ、リリースがあればちょっと気になる存在だった。

アルバムとしては、2006 年にリリースしたセカンド・アルバム "One Tree" 以来のリリースになるんだけど、ルーツ・レゲエ / ロック / フォーク / ブルース / ソウルなんかの影響を消化したアコースティックでレイド・バックしたサウンドもソウルフルなヴォーカルも健在。メチャメチャ名盤ってわけじゃないし、特にキャッチーな曲が入ってるわけではないけど、アルバム全体に貫かれてるオーガニックなグルーヴがなかなか心地いい。最近は、ジャック・ジョンソンなんかに代表されるようなサーフ・ミュージック的な文脈でとらえられてるみたいだけど、まぁ、その気持ちもよくわかるかな。演ってることはファーストの頃から全然変わってないけど。


MISHKA "My Love Goes With You" (From "Above the Bones")









2009/05/12

Universal century studies.

『ジオン軍の失敗』 岡嶋 裕史 著 講談社 アフタヌーン新書)
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

連続でガンダムネタのレビューってのもどうかと思うし、新書ってあまり安易に買わないようにしてるんで、いつもだったらもうちょっと警戒する類いの本なんだけど、わがジオン軍の失敗の原因についてなんて言われたら、ついつい手に取っちゃった。

この
『ジオン軍の失敗』は、ジオン軍のモビルスーツ開発の失敗に、製品開発に共通する課題や、そこに潜む落とし穴を見出し、考察することで教訓にしようって本で、著者は 1972 年生まれで、電子政府やウェブ・サービス、分散ネットワーク等を専門とする関東学院大学経済学部准教授。まぁ、同世代のインテリなら十分考えそうなことだし、同世代として親近感も持てる。それなり(もしくはそれ以上)の内容になる(できる)こともイメージできるし。現在、「機動戦士ガンダム UC」連載中の福井晴敏も「こどもの頃に本当の戦争についてキチンと学ぶ機会がない中で、それを補うような機能をガンダムが果たしてた」みたいなことを言ってた(例えば、戦争はどういう状況になったときに勃発するのか、とか)けど、確かにそういう側面もある。なかなか具体的にイメージできないモチーフで説明されるより、ガンダムのほうがよっぽど理解しやすかったりするから。

2009/05/11

A space between the earth and the moon.

『機動戦士ガンダム UC 8 宇宙と惑星と』
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
 
前にレビューした 4 巻5 巻6 巻7 巻に続いて、相変わらずテンポよく発売されてる福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC」の最新刊。コミックと同じ装丁で発売されてるんだけど、コミックにしては分厚く感じるくらいのヴォリューム(最近、特に厚くなってる気がする)で、これで小説、しかもすでに 8 巻。まぁ、それだけの情報量だってことで、やっぱり宇宙世紀を総括するにはこのくらいのスケール感が必要なんだな、と。

この 8 巻はゴールデン・ウィーク前に発売されてて、とっくに読んでた(というか、厳密には毎月、月刊『ガンダム A』で読んでるのをまとめて読み直してるってことなんだけど)んだけど、レビューし忘れてたんで、ちょっと遅ればせながら。ちなみに、マスター・グレード・シナンジュの別パーツ付きの特装版も発売されてる。

2009/05/10

Art of change in public.

THIS DAY OF CHANGE Photo Exhibition 
(クーリエ・ジャポン編集部 / 講談社) 
 
COURRiER Japon 2009 年 3 月号』と写真集『ディス・デイ「希望の一日」』のレビューでも触れた写真展。'THIS DAY OF CHANGE' は、2009 年 1 月 20日、つまり、バラク・オバマの大統領就任という「希望の日」の世界の様子を、世界中の 100 名を超えるフォトグラファーが 'HOPE' をテーマに撮影するって企画で、雑誌特設サイト写真集とこの写真展で構成されてる。この写真展は 4 月 29 日から 5 月 31 日まで新宿高島屋 2F の JR 連絡口、ペデストリアン・デッキで写真展も開催されててて、オープン・スペースなのでもちろん入場無料。高島屋側と東急ハンズ側にそれぞれ告知があって、バラク・オバマとマーティン・ルーサー・キング Jr. の言葉がフィーチャーされてる(写真の黄色いテキスト)。一応、許可なしの写真撮影は NG ってことだったんで、写真は高島屋側の告知部分で。

2009/05/09

Sunshine folk music.

GABY HERNANDEZ "When Love" (Armed Orphan)  

ビルド・アン・アークやザ・ライフ・フォース・トリオ、アモンコンタクトなどの作品にフィーチャーされてる LA 出身の女性シンガー・ソングライター、ギャビー・ヘルナンデスのソロ・アルバムで、プロデュースは前に "Suite For Ma Dukes" をレビューしたカルロス・ニーニョ。

ちょっと前にリリースされたカルロス・ニーニョの "High With A Little Help From" も素晴らしい出来映えだっただけに、期待してたんだけど、いい意味で期待を裏切ってくれたアルバムかも。

2009/05/08

3 feet high and running.

DE LA SOUL "Are You In?: NIKE+ Original Run" 
(NIKE+ / iTunes Store) ☆ Link(s): iTunes Store

これまでにも沖野修也さん、ファンタスティック・プラスティック・マシーンクリスタル・メソッド等が手掛けてきた NIKE+ のオリジナル・ミックス・シリーズ、'NIKE+ Original Run' の新作で、担当してるのはなんとデ・ラ・ソウル。

なんで「なんと」って思ったかっていうと、単純に 3 人ともランニングとかしなそうだから。なんか、似合わなねぇ、って。まぁ、これまでこのシリーズを手掛けてきた他のアーティストが走りそうかっていうと、それはそれでビミョーなんだけど、デ・ラの 3 人が走ってる姿を想像すると笑っちゃうというか、微笑ましいというか、なんかそんな印象を持っちゃったんで。

2009/05/07

Too dope to pop.

CASSANDRA WILSON "Closer to You: The Pop Side" (Blue Note) ☆  
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

自らの可能性を狭義の「ジャズ」の様式美の枠に押し込めることなく、意欲的にフォーキーでブルージーでエクスペリメンタルなジャズの可能性をドープな歌声で表現してるリアル・ジャズ・シンガー、カサンドラ・ウィルソン(CASSANDRA WILSON)のカヴァー集。

新録モノではなく、既発アルバムに収録されてたモノを集めたコンピレーションなんで、真新しさは感じないけど、まぁ、あらためてこうやってまとめて聴くと、曲の良さは活かしつつも、オリジナルのイメージにとらわれずにその曲を自分のモノにしちゃうカサンドラのカヴァーのセンスの良さは楽しめる。

ドープ過ぎて取っ付きにくいところもあるカサンドラを聴くキッカケにって意図の企画盤なんだと思うけど、そういう意味では十分アリなんじゃないかな、と。アートワークもらしくないくらい(失礼!)いつもよりオシャレだし。まぁ、それでも、音自体は十分ドープ過ぎなんだけど。

2009/05/06

The Paris match.

JOYCE with NANA VASCONCELOS & MAURICIO MAESTRO "Visions of Dawn" 
(Far Out Recordings)  

パーカッショニストのナナ・ヴァスコンセロス、マルチ・インストゥルメンタリスト / プロデューサーで、ジョイスの前夫でもあるモウリシオ・マエストロ、そしてもちろん言わずと知れたブラジル音楽のミューズ、ジョイス。この 3 人が 1976 年にパリで行ってたセッションが 33 年の時を経て発掘された。

リリースはジョー・デイヴィスが主宰するファー・アウト。相変わらず、いい仕事してくれる。この時期、このメンツってだけで、まぁ、十分期待しちゃうんだけど、その期待を裏切らない仕上がりで、文字通り、お宝音源って呼ぶのが相応しい。

2009/05/05

Astral years.

"Astral Weeks: Live at the Hollywood Bowl" VAN MORRISON 
(Listen To The Lion Records) 

ワン・アンド・オンリーの存在感を放ち続けるアイリッシュ・ソウル・マン、ヴァン・モリソンが 2 枚目のソロ・アルバム(実質的には 1 枚目と言える)にして不朽の名盤の誉れ高いアルバム "Astral Weeks" をリリースしてから 40 周年を記念して、去年の 11 月に行った「アルバム再現ライヴ」を収めたライヴ盤。なんでも、"Astral Weeks" のアルバム全曲をライヴで演ったのは初めてなんだとか。でも、リハーサルは 1 回しか演ってないらしいけど。

まぁ、"It's Too Late to Stop Now ..." とか "A Night in San Francisco" のようなライヴ盤を聴けばわかる通り(残念ながら一度も来日してない、文字通り「最後の大物」なんだけど)、もともとライヴには定評があるし、年を感じさせない最近のライヴっぷりも YouTube のオフィシャル・チャンネルで確認できるヴァン・モリソンだけど、その期待をまったく裏切らない見事な仕上がりで、聴き応え十分。

2009/05/04

Do the right sh*t.

『くう・ねる・のぐそ ― 自然に「愛」のお返しを』
 伊沢 正名 著(山と渓谷社) ★★★☆☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

去年の 12 月に発売されて、そのシンプル且つインパクト十分なタイトルのせいもあって、一部でわりと話題になってるっぽい一冊。要するに、排便行為、特にトイレを使わずに自然の中で排便する行為、つまり '野グソ' についての本ってこと。

個人的には、'野グソ' っていうと頭に浮かぶのは日本屈指のパンチ・ライン職人として知られる NIPPS のブッダ・ブランド(BUDDHA BRAND)の "病める無限のブッダの世界"(Links: iTS / Amzn) 収録の "Funky Methodist" のパンチ・ライン、"I drop da funk like a 冬場の野グソ" くらいなんだけど、もちろんそれは全然関係なくて、山の屎尿問題と絡んでちょっと気になってた問題で。富士山とか特にそうだけど、山のトイレの問題ってす ごく深刻で、でも、じゃあ、何ができるのか、どうすればいいのか、ってのはけっこうナゾだったんで。

アウトドアの本なんかだと「穴を掘って埋める」ってサラッと書いてあったりはするんだけど、 実際のところ、どうなのさ? ってのがイマイチわかってなかったんで、ヒントになるかな、と。まぁ、あまりにも直接的な言葉なのもアレなんで、ここでは 'ナチュラル・シット' と呼ぶことにするけど(もちろん、こんな言葉はないと思うんだけど)。

2009/05/03

Whole lotta Love.

忌野 清志郎 Kiyoshiro IMAWANO (2 April 1951 - 2 May 2009) - R. I. P.

レビューではないけど、こないだバラク・オバマのプラハでの演説のレビューにキヨシローさんがカバーした『イマジン』を貼ってたり、ちょっと前に訳あって RC サクセションやタイマーズ、ソロの作品をいろいろ聴き直す機会があって、あらためて、なんてカッコイイんだろうって思ってた矢先だっただけに、昨日の夜にニュースを見てすごくビックリしたし、ショックだったし、悲しいんで。もちろん、癌に患ってて闘病中だったってのは知ってたけど。

実は、個人的には
キヨシローさんにハマったって経験はなくて、世代的にも、物心ついたときにはもういた人なわけで、『雨あがりの夜空に』とかは知らぬ間に聴いてて、なんか頭に残ってたけど(「こんな夜に お前にノレないなんて こんな夜に 発射できないなんて」だからね。こどもには刺激が強いね)、一番インパクトが強かったのは、こども心に度肝を抜かれた坂本龍一さんとのコラボレーション『い・け・な・い ルージュマジック』だったりするから、決して王道の、熱心な RC / キヨシローファンではない。

2009/05/02

Black and blue.

"White Lies For Dark Times"

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BEN HARPER & RELENTLESS7(Virgin)

ベン・ハーパーのトータル 9 枚目(になるのかな?)のスタジオ・アルバムはベン・ハーパー & リレントレス 7 という名義でのアルバム。リレントレス 7 についてはよくわからないけど、リレントレス 7 のオフィシャル・サイトを見ると、ベン自身もメンバーのひとりとしてクレジットされてるから、ベン+サポートのバック・バンドって感じではなくて、あくまでもひとつのバンドとしての作品ってことらしい。

聴いた印象としては、かなりシンプルでストレートなロック・アルバム。これまで一緒にやってきたイノセント・クリミナルズは大所帯だったのに対して、リレントレス 7 は「7」って付いてるけど 7 人ではなくて 4 人編成のバンドで、ベンのヴォーカル+スライド・ギターにギター、ベース、キーボード、ドラムスを加えた編成なので、当然と言えば当然だけど。ちなみにメンバーは "Both Sides of the Gun" に参加してたメンバーなんだとか。わりとハードでラフなロックあり、ブルージーな渋い曲もありで、骨太でいい感じの仕上がり。すごくロックで、すごく黒い。

ちなみに、実はアルバムの全曲を MySpace で試聴できちゃったりする(期間限定かも?)んだけど、さらにオフィシャル・サイトでは、アルバム収録曲以外にレッド・ツェッペリンの "Good Times Bad Times" とプリンスの "Purple Rain" のカバーも聴けちゃったりする。

実はベン・ハーパーはファースト・アルバムのリリースから常にリアルタイムでチェックしてきたアーティストの数少ないひとりなんだけど、個人的にはわりと地味で、ロック色よりブルース〜フォーク色の濃いアルバム、具体的にはファースト・アルバムの "Welcome to the Cruel World"、ライヴ盤の "Live From Mars" のディスク 2、ザ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマと共演した "There Will Be a Light"、"Both Sides of the Gun"(特にディスク 2)辺りが好みなんで、今回のアルバムはちょっとロックっぽすぎるかなぁ、なんてちょっと思う曲もないことはないけど、全体としてはやっぱりさすがの出来映え。ただ、アートワークは、ちょっとどうかと思うけど。

考えてみると、10 年以上のキャリアがあって、これだけのアルバムを出してきてて、常に一定以上のクオリティを保ち続けてるってスゴイことだし、今の時代にはすごく希有な、貴重なアーティストだなぁ、と思ったりもする。最近はジャック・ジョンソン辺りとの絡みで、ちょっとオシャレなサーフ・ミュージック的な人気もあるみたいで、それはそれで、音楽的なクオリティが低いわけでもないし、無闇に何かに迎合してるわけでもないから全然悪いことじゃないと思うし。ただ、個人的には、海のイメージじゃないような気はするけど。


BEN HARPER & RELENTLESS7 "Number With No Name"
(From "White Lies For Dark Times")










2009/05/01

Surf your soul.

Coyote No.36 特集 海は学校 いまだ知られざる水の島、ハワイへ

(スイッチ・パブリッシング

これまでにも何度か取り上げてる『coyote』誌の最新号の特集は「海は学校」。
サーフィンを軸にした内容で、表紙にジェリー・ロペス、イヴォン・シュイナード、ナイノア・トンプソンなんて名前を並べられたら思わず、やっぱり手に取っちゃう。

特集のサブ・タイトルが「いまだ知られざる水の島、ハワイへ」ってなってる通り、特集のメインはハワイ。前半は、前に
レビューした★!!ホクレア 星が教えてくれる道』の著者、内野加奈子さんが取材するは、写真取るは、原稿書くは、さらには「クムリポ」というハワイに伝わる創世詞の翻訳もするはの大活躍。とてもいい仕事をしてて、素晴らしい内容。ハワイでも海を知らずに育つこどもが増えてて、そういうこどもたちに海について、ハワイについて教えるアフター・スクールのハナシも面白いし。実務的なことだけ教えてるわけじゃないのがポイントかな、と。ナイノアの記事は、内野さん自身もクルーであるホクレア号の次の計画について。3 年かけて世界・57000km を巡る航海を予定してるんだとか。なんとも壮大な計画。また日本にも来るのかな?

「学ぶ海、悟る海(Wisdom in the the waves)」ってタイトルの記事は、
前にレビューした(★!!ジェリー・ロペスサーフリアライゼーション』の訳者、岡崎友子さんによるもので、ジェリー・ロペスとイヴォン・シュイナードはここに登場する。メインはパタゴニアのサーフィン・アンバサダーでもあるクリスキースダンのマロイ兄弟。「プロサーフィンの世界に、コンペティション以外のサーフスタイルを確立させた」世代のサーファーということなんだけど、こういう感じは、サーフィンに限らずすごく興味があるというか、気になってたところだったりするんで、興味深く読めたというか、いろいろ考えさせられちゃった。サッカーにしても音楽にしても仕事にしても、なんか似たようなところがあると思うし、なんとなくモヤモヤだけど、そんなようなことを感じてる(考えてる)んで。知らなかった言葉なんで正確な定義はよくわかってないけど、「ソウル・サーフィン」ってすごくいい言葉だなぁ、なんて思ったり。写真も素晴らしいなぁ。ジェリー・ロペスサーフリアライゼーション』で述べられてたようなライフスタイルを具現化するためのプロジェクト、サーフリアライゼーション・フェローシップについてで、これもなかなか興味深い(あと、関係ないけど、ジェリーがヨガをしてる写真を使ってるパタゴニアの広告もカッコイイ)。他にも、医師のドリアン・パスコウィッツ(オフィシャル・サイトの URL が www.alohadoc.com。いい URL だなぁ)の言う、ホントの意味での 'recreation' のハナシとか、なかなかいい感じの記事と写真で、読み応え(見応え)があるというか、味わい深いなぁ、と。

あと、ハワイのモロカイ島のハナシがすごくいいなぁ。全然知らなかったんだけど。岩根愛さんの写真が素晴らしい。
名前はいろいろ見るけど、実はあまりキチンと知らなかった、というか、ちょこちょこ見たことのある写真はそんなに好みじゃなかった印象だったんだけど。あと、モロカイの記事の中に出てくる「サブシステンス(subsistence)」って考え方も面白いし。ここはもうちょっと掘ってみたい感じ。サブシステンスにしても、モロカイにしても。

他にも、『野性の呼び声』や『白牙』などで知られる作家、ジャック・ロンドンが 1911 年に発表し、アメリカにサーフィンを伝えたと言われる "The Cruise of the Snark" の一部の抜粋・抄訳も掲載されてて、なかなか読み応えがある。あと、2006 年 1 月に葉山の海に逝った佐久間洋之助の記事もすごく感慨深い。横須賀生まれなので、場所の雰囲気はイメージしやすいんで。個人的には決して「海育ち」ってイメージなわけではないと思うけど、やっぱり、海までチャリで 10 分くらいのところで育ったわけで、やっぱり地元をイメージするときに海はいつも出て来がちだったりはするんで、そういう意味でも、どの記事もいろいろとインスピレーションに富んだ内容で、なんというか、ゴールデン・ウィークの天気のいい昼間に、公園とかで読んじゃうにはもってこいな感じ。ただ、ノンビリしたり癒されたりするだけじゃなく、同時に考えさせられるところがすごくいい(ただの癒し、しかもホントに癒されてるのかもアヤシイ、「エセ癒し」みたいに見えるモノがやたらともてはやされてるように感じることがすごく多い昨今なだけに)。BGM はやっぱベタにジャック・ジョンソンとかで。まぁ、実はあまりゴールデン・ウィークとか関係ないんだけど。でも、混んでるところにわざわざ出掛けたりするより、公園とかでダラダラするほうがいいんじゃね? なんて。


JACK JOHNSON "Hope" (From "Sleep Through the Static")