『ブラジリアン・サウンド』
. :クリス・マッガワン / ヒカルド ペサーニャ 著
. :武者小路 実昭 / 雨海 弘美 訳 (シンコーミュージック) ★★★☆☆
1991 年にアメリカのテンプル・ユニヴァーシティ・プレスから出版された "The Brazilian Sound: Samba, Bossa Nova and the Popular Music of Brazil" の 1998 年の改訂版の翻訳書で、「サンバ、ボサノヴァ、MPB ー ブラジル音楽のすべて」というサブ・タイトルの付いた日本語版の発行は 2000 年。ブラジルの歴史から始まって、サンバ、ボサ・ノヴァ、MPB、トロピカリズモ、ロック、ジャズ等、イギリスとアメリカ合衆国の音楽を除くと、おそらくもっとも世界中で愛され、世界のポップ・ミュージックの歴史にもっとも大きな影響を与えてきたであろうブラジルの音楽について、その成り立ちや特徴を一通り網羅してます。
ブラジルと言えば「素晴らしい音楽と素晴らしいフットボーラーと素晴らしい格闘家を輩出し続けてきた国」なわけだけど、サッカー同様、音楽と生活との密着度はおそらく世界でも屈指の濃密さ(これはブラジルに行った時に実感しました)。アメリカ合衆国の黒人に一番似てると思うんだけど、好きとか嫌いとかそういうレベルではなく、水や空気のようなレベル、衣食住のようなレベルで生活の中に音楽が存在してる感じ(特にサンバはその典型)。同時に、様々な形態の音楽が、あるときは自然に、あるときは試行錯誤の末に、民族音楽からポップ・ミュージックまで、さまざまなレベルで生み出されて、世界中で愛されてるという現象は、アメリカのブラック・ミュージック、レゲエと並ぶアフロ・アメリカン・ミュージックのひとつとしてもとても重要だし、世界のポップ・ミュージックの大きな潮流のひとつと言えるはず。
それぞれのスタイルにそれほど詳しく言及しているわけではないし、全てに興味があるってわけでもないし、読み物として特別面白いっていう類いのものでもないけど、全体を俯瞰するためのものとしてはとてもバランスよくまとまっているし、日本語版には追記も付いているので、ブラジル音楽の歴史の大きな流れをつかむにはとても参考になる一冊です。
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