"Nuclear Evolution: The Age of Love"
.THE SA-RA CREATIVE PARTNERS(Ubiquity) ★★★★☆
ピンクのアートワークがインパクト抜群のサー・ラーことザ・サー・ラー・クリエイティヴ・パートナーズ(ってカタカナで書くとすごく変な感じ)のニュー・アルバムが西海岸を代表する優良レーベル、ユビキティから登場。まぁ、この組み合わせだけで、ほぼ間違いないって言ってもいい感じなんだけど、その期待を裏切らないなかなかの仕上がり。
サー・ラーは LA をベースにする 3 人組のプロダクション・ユニットで、一応、一般的にはヒップ・ホップってことになってるけど、いわゆるメインストリームのヒップ・ホップとは違う、かなり変人なサウンドが特徴。個人的には、いわゆる直球なヒップ・ホップ・ユニットってイメージはあまりなくて、もっと掴みどころがないような、デトロイトとかフィリーとか NYC とかヨーロッパとかの、もっとエレクトロニックも入っててハイブリッドなアーティストに近い印象。例えば、アンプ・フィドラーとか、ちょっと音のタイプは違うけどキング・ブリットとか、もっと言っちゃえばセオ・パリッシュとかムーディマンとかみたいなところもちょっと感じるような。まぁ、BPM は遅いし、ヒップ・ホップっていえばヒップ・ホップなんだけど、個人的にはヒップ・ホップっていうよりもファンク、それこそ P- ファンクに通じるような、変人なファンクネスを感じる。ちょっとスペーシーでフューチャリスティックな感じとか、ちょっと奇抜なファッションとかも、まさに P- ファンクっぽいし。あと、もちろん、名前の由来にもなってるサン・ラとか、そういう感じもあるけど。
この "Nuclear Evolution: The Age of Love" って何やら意味深なタイトルの今作は、ディスコグラフィ的には 2007 年リリースの "The Hollywood Recordings" に続くセカンド・アルバムってことになる。なんか、EP とかミニ・アルバム的なリリースがけっこうあったから、まだ 2 枚目って感じはしないんだけど。でも、"The Hollywood Recordings" は既発曲の寄せ集めっぽい感じもあったから、ある意味ではファースト・アルバムって言えるのかも。最大の特徴は、ラッパーをフィーチャーした「いわゆるヒップ・ホップ」的なトラックがない点で、エリカ・バドゥのワン & オンリーなヴォーカルをフィーチャーしてたり、ゲーリー・バーツ・カルテットと共演してスペーシーなジャズを披露したりしつつ、遅めの BPM でジワジワと迫る濃密なファンク満載のボーナス CD 付き・全 23 曲っていうなかなかのヴォリュームで、得意のフューチャリスティック・ファンクを展開してる。ただ、ちょっとカワイイブラジリアン・テイストの "Spacefruit (Feat. DEBI NOVA)" とか、アリシア・キーズの共作者・親友として知られるエリカ・ローズのラヴリィなヴォーカルを聴かせる "My Star" とか、ちょっとオシャレなところも見せたりしてて、なかなか侮れない。
まぁ、フューチャリスティックでスペーシーで、遅めのビートでジワジワ迫るような中毒性の高いドロドロとしたファンクネスっていうサー・ラーの魅力が詰まったかなり「濃い」1 枚であることは間違いないし、今年リリーズのアルバムではかなりお気に入りなアルバムかも。
THE SA-RA CREATIVE PARTNERS "My Star (Feat. ERIKA ROSE)"
(From "Nuclear Evolution: The Age of Love")
Jul 6, 2009
Freaky future funk.
Jul 5, 2009
The battle of Solomon.
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 19 巻 ソロモン編・前』
. :安彦 良和 著(角川グループパブリッシング) ★★★★☆
月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。18 巻の発売が去年の年末だったから、かなり久々な印象。タイトルが「ソロモン編・前」とあるように、舞台は遂にソロモン。いよいよ物語は佳境に入ってきた。
表紙を見ても解る通り、ガンダムにマグネット・コーティングが施されてるシーンがあるってことは、モスク・ハンが登場するということ。TV 版ではアムロとの味のあるやりとりが印象的だったけど、映画版では特に触れられることもなくマグネット・コーティング済みだったので登場しなかったモスク・ハンは、アムロの発達した反射神経に反応し切れずに機体に過度な負担をかけていた駆動系の動きを向上させるために白羽の矢が立てられた電磁工学の新鋭エンジニア。TV 版でもなかなか愛すべき技術屋に描かれてたけど、この『THE ORIGIN』では新たにキャラが一新されてて、カツに「ジオンの新兵器かと思った」ってビビられるほどの巨漢の、相当な曲者に描かれている。
この『THE ORIGIN』は、ファースト・ガンダムをベースにしつつも、随所に安彦先生があらためてそのストーリーや細かい設定を見直し・再解釈・再設定しながら描いている作品で、 TV 版や映画版との変更点も多く、初めて語られるエピソードも多くて、特に開戦前を描いた 9 巻・10 巻の「シャア・セイラ編」、11 巻・12 巻の「開戦編」、13 巻・14 巻の「ルウム編」は読み応え十分なんだけど、このモスク・ハン像もそんな変更点のひとつ。こういう細かい部分が物語の質をジワリと、でも確実に上げてくれてる。他にも、アッと驚くザクレロの登場だったり、シャアとキリシアの TV 版・映画版以上の濃密な駆け引きだったり、アムロのエキセントリックさだったり、微妙なディティールがキチンと描かれてて、やっぱり読み応え十分。
個人的には、同じく『ガンダム A』に掲載されてた『機動戦士 Z ガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのレポートより』(『Z ガンダム』のサイド・ストーリーで、1 年戦争終結後、ジャーナリストになったカイの視点で描かれる『Z』時代の物語。単行本は 1 巻・2 巻が発売されて完結したんだけど、今月号から『ガンダム A』で連載が再開されたんで続刊もありそう。ただし、タイトルは『Z』ではなく『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのメモリーより』になっているので、趣向は若干変わりそう)に重要な役柄で登場するラコックが登場したり、今月号の『ガンダム A』で遂に完結した『ガンダム UC』での印象が生々しいミネバ様の愛くるしくて利発な姿が描かれてて、ちょっと感慨深かったりする。まぁ、もちろん、ドズル閣下の不器用なまでの武人としての真直ぐな生き様は、ついついグッときちゃうんだけど。
いつも同じことを書いてるけど、物語は遂に佳境に入りつつあり、早く先が読みたいような、でもまだ終わって欲しくないと思うような、複雑な心境 を抱きつつ、それでも完結まではまだしばらくかかるはずで、まだまだこの幸せな時間を過ごせる喜びを噛み締めながら、安彦先生の健康をただただ祈りたい な、と。
*既発巻:
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 1 巻 始動編』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 2 巻 激闘編』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 3 巻 ガルマ編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 4 巻 ガルマ編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 5 巻 ランバ・ラル編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 6 巻 ランバ・ラル編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 7 巻 ジャブロー編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 8 巻 ジャブロー編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 9 巻 シャア・セイラ編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 10 巻 シャア・セイラ編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 11 巻 開戦編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 12 巻 開戦編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 13 巻 ルウム編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 14 巻 ルウム編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 15 巻 オデッサ編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 16 巻 オデッサ編・後』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 17 巻 ララァ編・前』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 18 巻 ララァ編・後』
Jul 4, 2009
An artist's nature.
"Human Nature"
.DWELE ★★★★☆
6/27 のエントリーに続いてマイケル・ジャクソンのネタなんだけど、この 1 週間くらいで膨大な数、発表されてる数々の MJ トリビュートの中でも、YouTube に公開されてるこのドウェレの "Human Nature" は秀逸なので。
まぁ、内容は観ての通り、自宅でひとりで "Human Nature" をカヴァーしてるのをワン・カメラで撮っただけの映像なんだけど、このクリエイティヴィティとミュージシャンシップはハンパじゃないな、と。「ちょっと時間ができたから、45 分くらいで演った」とか言ってやがるけど、この出来映えはヤバイ。決して複雑なことやってるわけでもないし、すごくシンプルなインストゥルメンタルなんだけど、パフォーマンス自体がメチャメチャ雄弁に、メチャメチャソウルフルにいろんなことを語ってる。さすがはアーティスト、さすがはミュージシャンって感じだし、まさに、トリビュートと呼ぶに相応しい抜群のパフォーマンスだな、と。
あと、このドウェレのカバーとは関係ないけど、一応、マイケル関連で気になったモノを合わせて。まずは、CBS のスパイク・リーのインタビュー。23 分に渡ってマイケルの思い出を語ってるんだけど、余計な演出とかヘタな小細工がなくてすごくいいし、どれだけマイケルのことが好きだったか、すごくよく伝わってくる。マイケルとスパイクっていえば、思い出すのは映画『クルックリン』とサウンドトラック。ジャクソン 5 が使われてるんだけど、映画自体も当時の雰囲気がすごくよく伝わってきて素晴らしいし、サントラの選曲も当時のヒット曲満載で、さすがはスパイクって感じの絶妙な選曲で、メチャメチャいい出来映え。たしか、個人的に親交もあったよなって思ったら、"They Don't Care About Us" の PV を撮ったりもしてた。しかも、ブラジル撮影と刑務所撮影の 2 ヴァージョンあって、どっちもすごくスパイクらしい仕上がりで。個人的には PV ってモノ自体、特に好きじゃない(っつうか、むしろキライ)だったりして、音楽には特に必要ないモノだと思ってたりするし、この曲自体も決してカッコイイとは思わないけど、この曲に込められてるメッセージを伝えるって意味では、この曲に関しては音楽だけよりも PV のほうがインパクトが強いし、より明確にメッセージが伝わる(特に刑務所ヴァージョン)って意味で、秀逸な PV だなって思うし。
もうひとつ、MEN.STYLE.COM に公開されてるクインシー・ジョーンズのインタビューも見逃せない。クインシーっていえば、もちろん、マイケルを「モータウンのスター」から「ひとりのアーティスト」にした最大の功労者なわけで、なかなか整理できないような、複雑な心境が垣間見える。
まぁ、マイケルの死後のいろんなニュース、特に日本のメディアの取り上げ方を見てると、正直、かなり複雑な心境になったりしちゃう。DJ AKi くんもブログで「こんなにマイケルって日本で愛されてたの?」って言ってたけど、メチャメチャ同感だったりして。自分の周りには音楽関係者も多いし、やっぱり、その影響はメチャメチャデカイんだけど、みんないろいろ茶化すようなことは言いつつも、その前提としてちゃんと音楽を聴いてるし、だから、例えある作品を貶してたとしても、そこには本質的な「愛」みたいのが感じられる。ただ「話題として」取り上げてる(消費してる)のとは、似てるようで、まったく違うなぁ、なんて思ったり。どう取り上げて、何を伝えたいのか。「表現のリテラシー」みたいなことかな。そこに「意味」とか「意志」があるのかってことかもしれないけど。キヨシローさんのときにも、同じようなことをすごく感じたし。
そういう意味でも、やっぱりこのドウェレの "Human Nature" は秀逸だな、と。
Jul 3, 2009
The long-awaited player.
"The LP"
.THE LARGE PROFESSOR(P-Vine) ★★★★☆
ちょっと前のエントリーでレビューしたジョイスとナナ・ヴァスコンセロスとモウリシオ・マエストロの "Visions of Dawn" もお宝だったけど、それに勝るとも劣らないお宝音源が突然発掘・正規リリースされた。
それは、教授(B ボーイにとって「教授」っていえば坂本龍一さんじゃなくて、もちろんこの人)の愛称で親しまれてる(のか?)元メイン・ソースのトラック・メーカー / MC であり、メガネ B ボーイ界のカリスマ(なのか?)ことラージ・プロフェッサーがソロとしてゲフィンと契約して 1996 年頃にリリースするはずだった幻のファースト・ソロ・アルバム。その名も "The LP"(意味は言わずもがな!)。先行シングルはリリースされたものの、アルバムはリリースされずにお蔵入りし、これまでに何度かブーロレグ風なヤツがリリースされて一部で大きな話題になってたヒップ・ホップ・シーンでは有名な「お宝」が、この度、アートワークも新たに(このカワイイアートワークは日本盤だけなのか?)正式に、しかも日本先行で発売された(P ヴァインのグッド・ジョブ!)っていうからこれは聴き逃せないな、と。
1996 年頃の教授っていえば、ナズの "It Ain't Hard To Tell" とかコモンの "Resurrection '95" のリミックスを手掛けてたキレキレの時期だし、先行シングルとしてリリースされた "Ijuswannachill" と "The Mad Scientist" も間違いない仕上がりだっただけに、今、考えてもメチャメチャもったいなかったと思うけど、今回のリリースにはその "Ijuswannachill" と "The Mad Scientist"、ブートレグ盤に入ってたナズをフィーチャーした "One Plus One" ももちろん入ってる。しかもブートレグ盤には入ってなかった未発表音源も含めた全 18 曲入り(iTunes Store でちょっとずつだけど試聴も出来る)ってことで、まさに間違いない仕上がり。
もちろん、好みは人それぞれいろいろあるんだろうけど、やっぱり、ヒップ・ホップはこの時期、つまり、90 年代初め 〜 90 年代末頃が一番充実してた気がする。一番熱心に買ってた / 聴いてたし。このアルバムを聴きながら、そんなことに思いを馳せてたら、そんな時代を象徴してた雑誌のひとつ、"Vibe" が終了するなんてニュースが飛び込んできて(日本風に言えば、「休刊」という名の廃刊かな)、ビックリするやら、切ないやら、なかなか感慨深かったりするんだけど、そんな時代を、そしてヒップ・ホップ史を代表する名盤になるはずだった 1 枚だったのに、当時、キチンとリリースされて、キチンと評価されなかったのは残念以外の何ものでもない。もちろん、今回、こうしてリリースされたのはすごくいいことだけど、だから万事 OK か? っていうと、そんなこと、全然ない。Q ティップの "Kamaal the Abstract" なんかの例もあるし(9 月にリリースされるとか?)、変な悪癖みたいのがあるね、ヒップ・ホップの世界には。まぁ、もちろん、今回、リリースされたのは不幸中の幸いであることは間違いないんで、素直にその恩恵に感謝しつつ、存分に堪能したいな、と。
THE LARGE PROFESSOR "One Plus One (Feat. NAS)" (From "The LP")
Jul 2, 2009
Floating high and around.
"High With A Little Help From"
.CARLOS NIÑO & FRIENDS(Kindred Spirits) ★★★★☆
ちょっと前のエントリーで、ミゲル・アットウッド・ファーガソンと一緒に J・ディラのトラックをオーケストラでカヴァーした "Suite For Ma Dukes" をレビューした(最近、『waxpoetics No.4』で聞き捨てならない記事を読んだので追記を書いてある)プロデューサーのカルロス・ニーノがオランダ・アムステルダムの良質レーベル、キンドレッド・スピリッツからリリースしたアルバム。情報は今年のはじめくらいからあったんだけど、実際にリリースされたのは最近っぽい。
カルロス・ニーノっていえば、ビルド・アン・アークやアモンコンタクトとしても知られてるプロデューサーなんで、スピリチュアル・ジャズとかヒップ・ホップとかってイメージが強いんだけど、"Suite For Ma Dukes" とかギャビー・ヘルナンデスとか Spaceways Radio Show とかを聴くと、全然それだけじゃなかったりして、なかなか掴みどころのないアーティストだったりする。
この "High With A Little Help From" も、なかなか一筋縄ではいかないっていうか、一言で形容しにくい感じの音だったりする。制作は 2006 年から始められて、一定期間に集中して作ったわけではなく、いろいろなセッションで作ったサンプル・ネタを集めて、それをベースにそこからアイデアを広げていくような感じで仕上げていった作品集とのことで、生楽器ネタが多いのが特徴。出来上がったサウンドは、ダウンテンポで、ムーディで、ドリーミィで、スペーシーで。アンビエントっぽかったり、トライバルっぽかったり、フォークっぽかったり、ジャズっぽかったり、クラシックっぽかったりして。映画のスコアっぽい感じもあったりするし、ある意味、ちょっとトランシーでもあるし。まぁ、アートワークのイメージはわりとピッタリではあるんだけど、美しくて浮遊感があって、でも、この手のヤツにありがちな表面だけをなぞったような薄っぺらな感じじゃなくて、なかなかドープだったりもして。"Rabbit Island" なんて、ちょっと 90 年代の UK ロック〜アシッド・ハウスっていうか、セカンド・サマー・オブ・ラヴ的な感じとか思い出させたりして(こんな曲、なかったっけ?)。サウンド的にはビルド・アン・アークやアモンコンタクトよりもギャビー・ヘルナンデスに近いかな。
決してポップでもキャッチーでもないけど、でも気が付くとわりと頻繁に、何度も聴いてる不思議なアルバムで、なかなか売りにくいアルバムだろうなって気はするけど、聴いてるうちにジワジワと効いてくる、なかなか危険な 1 枚かな、と。
CARLOS NIÑO & FRIENDS "Rabbit Island" (From "High With A Little Help From")
Jul 1, 2009
Lifting off.
『宇宙兄弟 6 巻』
. :小山 宙哉 著(講談社) ★★★★☆
これまでにも 1 巻・2 巻・3 巻・4 巻・5 巻をレビューした『宇宙兄弟』の最新刊。5 巻の発売が 3 月だからなかなかコンスタントなペースで発売されてる。
ハナシは、天真爛漫でナチュラルでちょいニュータイプで天然も入ってる弟と、そんな弟を誇りに思いつつもコンプレックスも抱えててる兄の兄弟が共に宇宙飛行士を目指す物語。だから、その名も『宇宙兄弟』。今回の舞台はアメリカ・NASA。弟・ヒビトは遂に月へのリフト・オフ。兄・ムッタは NASA で最終面接兼ヒビトの激励・見送り。こう書くとあまりたいしたことじゃない感じがするかもしれないけど、そこでも適度に笑わせながら、適度にグッとくる、そんな何とも言えない「ドライ・フィット」感が相変わらずなかなか絶妙で。なかなか気持ちいい読後感。
この後、ヒビトは日本人初 & 史上最年少のムーンウォーカーに、ムッタは念願の宇宙飛行士になれるのか!? って流れなんで、まだまだ目が離せない。
*既発巻:
『宇宙兄弟 1 巻』
『宇宙兄弟 2 巻』
『宇宙兄弟 3 巻』
『宇宙兄弟 4 巻』
『宇宙兄弟 5 巻』
Jun 30, 2009
For beautiful human life.
『「美の国」日本をつくる ー 水と緑の文明論』
. :川勝 平太 著(日本経済新聞出版社) ★★★★☆
前にレビューした『智慧の実を食べよう 学問は驚きだ。』にも出てる川勝平太氏の 2006 年の著作。別に最近読んだわけじゃなくて、発売時に読んでたんだけど、今、ちょっとした話題の人になってるんで、このタイミングで紹介しない手はないな、と。
その話題っていうのは、なんと川勝氏が今週末に投票を控えてる静岡県知事選挙に出馬してて、しかも有力候補のひとりだってこと。まぁ、わりと最近まで知らなかったんだけど、ちょっと前に Google Alert で来たメールを見たらオフィシャル・サイトができたってニュースで、サイトを見てみたら県知事選に出馬してた、と。しかも静岡ってのもすごく興味深い。
川勝氏は歴史学者・経済学者で、文明論とか地方分権論とか、なかなか斬新で大胆なアイデアが個人的にはけっこうツボな学者。最近まで静岡文化芸術大学の学長を務めてたんだけど、今回の出馬に際して辞任したらしい。著書も多くて、『文明の海洋史観』とか『富国有徳論』とか『敵を作る文明 和をなす文明』(安田喜憲氏との共著)とか『「美の文明」をつくる ー「力の文明」を超えて』とか、主なモノはなるべく読むようにしてるんだけど、どれもなかなか面白くて。最近のモノで、あまり学術書っぽくなくて、わりとこれまで述べられてきたことが包括的にまとまってるのは同じく 2006 年の『文化力 ー 日本の底力』か、この『「美の国」日本をつくる』だと思うんだけど、いろんな意味でより手に取りやすいのは文庫本の『「美の国」日本をつくる』かな、と。もちろん、『智慧の実を食べよう 学問は驚きだ。』もすごく解りやすいけど、さすがにちょっと情報が足りない気もするんで。
まぁ、学者の書いた本なんで「手に取りやすい」とは言っても限界があるっていうか、それほど柔らかいってわけじゃないんだけど、でも言ってることはなかなか面白い。例えば、大国ではなく中規模の先進国並みの、地域特性を活かした地方分権=道州制のハナシ(日本は 4 〜 5 地域くらいに分割しても、それぞれがカナダやオランダといった国くらいの GDP 規模になる)のハナシとかは、わりとタイムリーな、そして、たぶん、今回の出馬とかにもつながってくる部分なのかなと思うけど、他にも、少子化問題(個人的には「少子化問題」問題だと思ってるけど)とか、自然との関わりとか、いろんなテーマについてのヴィジョンが述べられてる。
個人的には、全体(もちろん他の著書も含めて)から感じられる「量」より「質」に重きを置くような感じにすごくシンパシーを感じてるというか、シックリきてる。最近、「数値化できない価値」みたいのにすごく魅かれてるというか、いや、違うな、「数値化できること」にしか価値を見出せない無粋でつまんねぇヤツらが多すぎるってすごく感じてて、そういう感覚と、川勝氏の言ってることがちょっとシンクロするというか、わりとシックリくることが多くて。「美」なんてその最たるもんだけど、他にも右肩上がり至上主義ではない経済とか、「力」を軸にしない考え方とか、なかなか興味深いアイデアが多い。
まぁ、もちろん、全部がシックリくるわけじゃないんだけど。具体的には、言葉のセンスとか、かなり違和感があって。違和感というか、「せっかく面白いことを言ってるのにもったいないなぁ」って感じなんだけど。すごく大きな意味で、「内容がいいのにデザイン(もちろん、見た目だけの意味じゃない)が伴ってないがために伝わらない」っていう、まぁ、いろんなところでよく目にする(そして、ちょっと悲しくなる)ケースの典型って感じなんだけど。「富国有徳論」とか、キャッチーじゃなさ過ぎだし。まぁ、選挙とか政治とかの場ではカタイくらいのほうがいいのかもしれないけど、やっぱりちょっともったいないよなぁ、と。
まぁ、ともあれ、Google Alert に登録してるくらいなんで前からずごく興味があった人なんだけど、まさか、フツーにニュースとかで名前を耳にするとちょっと不思議な感じがしたりもする(まぁ、選挙自体とかヴィジョン・政策なんかはまったく語られず、専ら政局絡みの話の中で出てくるだけなのが悲しいやら、呆れるやらって感じだけど)。しかも、静岡ってのも、なんかいいし。ちょっと前から、わりと真剣に東京(≒都市部)を離れることを考えたりしてるんだけど、住んでみたいって思えるところのひとつ、しかもランキングのかなり上位にくるのが静岡だったりしたんで。海があって、山があって、暖かくて、関東にも関西にも同じくらいの距離で、魚も美味いし、お茶も美味いし、温泉もあるし、富士山まであるし、と。いいことずくめじゃん、って。地震さえなければかなりいいところだなぁ、と。まぁ、そう思ってた場所の知事に前から興味があった人がなったりしたら、それはそれで面白いことだなぁ、なんて思ったり。首相のダメダメっぷりもあって、なんか微妙に全国的な注目を集めてるっぽい(とは言っても、内容に関しては案の定、全然触れられてないけど)んで、選挙の結果にも注目しつつも(残念ながら選挙権はないで)、まぁ、選挙なんて水モノというか、勢いに左右されるイベントでしかないと思うんで、もちろん勝ったら素晴らしいとは思うけど、勝っても負けてもどっちでもいいっつうか、結果だけじゃない部分、本質の部分をしっかりと見て、考えていかないとな、と。それが一番大事なことだと思うんで。
Jun 29, 2009
Funky Brazilian songbook.
"Tudo Ben: Jorge Ben Covered"
.VARIOUS ARTISTS(Mr. Bongo) ★★★★☆
サブ・タイトルに 'Jorge Ben Covered' ってある通り、ファンキーなサウンドでお馴染みの、ブラジル音楽を代表するアーティスト、ジョルジ・ベンの書いた楽曲をいろんなアーティストがプレイしてる音源を集めたコンピレーション。企画もいいし、アートワークもシンプルでいいなぁ、と思ったらやっぱりイギリス人の仕事だった。Mr. ボンゴのリリース。やっぱり、こういうのを作らせたらイギリス人はピカイチだな、と。
'tudo bem' っていえば、ブラジルに行ったときにたぶん一番よく使ったポルトガル語なんじゃないかって思うような言葉で 'Tudo bem?' は 'How are you?' みたいな意味。'Tudo bem.' って応えると 'Alright.' みたいな意味になるっていう便利な単語(たぶん)。まぁ、よくわかってないで使ってたけど、問題なかったっぽいからそれほど間違いではなかったんじゃないかな、と。
原題の "Tudo Ben" は、'tudo bem' と名前の 'Ben' を引っ掛けた、一歩間違えると駄洒落になりかねないタイトルだけど、解りやすいし、すごくいいタイトル。イギリスの雑誌の見出しとかにもこういうのがけっこうあるけど、上手いよね、こういうことするの。ちょっと洒落てて。日本語でこういうニュアンスを表現するのってわかなか難しい。ちなみに、邦題は「ジョルジ・ベンのイイ仕事」。ムリに直訳せずに、でも解りやすいタイトルで、これもなかなかいい感じ。
収録曲的にも、"Mas Que Nada" とか "Carolina Carol Bela" のような代表曲をキチンと押さえた全 26 曲と、なかなか聴き応えのある内容で、ジョルジ・ベンは本人自体もすごくカッコイイんで、わりと本人の演奏で聴いてることが多いけど、こうやって本人以外の演奏であらためて聴くと、彼のソングライターとしての非凡さがあらためて感じられたりもする。
ELZA SOARES "Mas Que Nada" (From "Tudo Ben: Jorge Ben Covered")
Jun 28, 2009
A whole new world.
Barack Obama’s Speech in Cairo: A New Beginning (on June 4th, 2009)(BarackObama.com) ★★★★★
ちょっと前のエントリーの WWDC 2009 のキーノート・アドレスに続いて、だいぶ時間が経っちゃったけど、やっぱり無視できないっていうか、個人的には衝撃的で、感動的でもあるような、歴史的な演説だと思うんで、備忘も兼ねて(時系列的には順番が前後しちゃってるけど)。なんか、聞けば聞くほど(観れば観るほど / 読めば読むほど)、そして考えれば考えるほど、いろいろなことが絡んでるように思えてきて、時間がかかっちゃったけど。
これは第 44 代アメリカ大統領、バラク・フセイン・オバマが 6 月 4 日にエジプトのカイロ大学で学生たちを前に、広くイスラム世界に向けて行った演説。映像は www.barackobama.com に(映像自体は YouTube 内のホワイト・ハウスのオフィシャル・チャンネルにあって、アラビア語の字幕付きもある。ホワイト・ハウスのオフィシャル・チャンネルの URL が http://www.youtube.com/user/whitehouse って、ちょっとスゴイね。当たり前なんだけど)、テキストはホワイト・ハウスのサイトに公開されてる。
全篇で 1 時間弱のわりと長いスピーチなんだけど、まず最初の印象として、やっぱりスピーチ自体がメチャメチャ上手い。それでいて、なおかつ興味深い内容なもんだから、全然「聞けちゃう」。あと、こういう情報がキチンと、TV みたいにほんの一部を取り上げるんじゃなく、全篇キチンと見れる(読める)って、やっぱりスゴイ時代だなぁ、とあらためて感じるし、ニュース等で観るのとはだいぶ印象が違うことにビックリしたりもする。まぁ、それを活かすかどうかは個人の問題なんだけど。
'A New Beginning' ってタイトルがついてる通り、アメリカとイスラム世界の新しい関係について、かなり大胆で野心的なヴィジョンを高らかに掲げた演説で、そのメッセージはアルジャジーラをはじめ世界各国のメディアを通じて、世界のイスラム圏の人々に向けて発せられた(YouTube の映像にもいろんな言語の字幕が付いてる。YouTube はそんなこともできるようになったらしい)んだけど、まずビックリしたのは冒頭の部分で 'Assalaamu alaykum' ってアラビア語であいさつをしたこと。アメリカの大統領がオフィシャルな場で(しかも、アルジャジーラ等のメディアも含む、世界中のメディアに放映されてる中で)、こういうことをしたのってあまり記憶にないっていうか、画期的なんじゃないかな、と。演説内でも随所にコーランの引用を散りばめてたりしたりするし。
画期的と言えば、実はけっこう画期的なことばかりの演説だったというか、「そこまで言っちゃうか」って思うことが何度もあったほど、率直というか、言いにくいであろうこともストレートに語ってたことに驚いた。その中でも一番インパクトが強かったのは、やっぱりイスラエルに関して。歴史・文化に根ざしたアメリカとイスラエルの結び付きの強さやユダヤ人の歴史、特にホロコーストに関しては、そこで犠牲になった 600 万人というのは現在のイスラエルのユダヤ人の人口より多いことに触れながら、その存在自体はキチンと肯定しつつ、でも、同時に、ムスリムだけではなくキリスト教徒も含むパレスチナ人の存在も肯定し、その現状は耐え難いものだっていう事実を強調して、イスラエルのパレスチナ政策をやんわりと、でも明確に非難してて。どちらに対してもすごくフェアな立ち位置で、これまでのアメリカ政府の過剰に感じられるほどの親イスラエルな政策を考えると、かなり画期的なんじゃないかな、と。まぁ、事前にイスラエルのネタニヤフ首相にも会ってるんで、キチンと事前説明(というか根回し)はしてたんだろうけど。
あと、印象的だったのは、イスラエルのことに限らず、イスラム文化が人類史で果たしてきた役割や、中東地域・イスラム社会と西欧、特にアメリカとの関係・歴史についてもキチンとフェアに語ったこと。帝国主義や冷戦、さらにはグローバリゼーションが相互不信や紛争を招いてきたこと、そして「アメリカ人がイスラムの人々をステレオタイプ的に見ているが、同時に、イスラムの人々もアメリカを '独善の帝国' というステレオタイプで見ているんじゃないか」ってことも率直に語ってる。そして、それを示した上で、アメリカ人のステレオタイプ的なイスラム観に対比させるように、アメリカとムスリムの本当の関係を、アメリカの独立を最初に承認したのはイスラム国のモロッコだったことやムスリムの各界での活躍ぶり、現在アメリカには 700 万人のムスリムがいることなどを例に挙げて「イスラム文化はアメリカの一部」であると語る。同時に世界のさまざまな文化の基でアメリカという国が形作られ、近代史の中で世界の発展に大きく寄与してきたという点も、そのひとつの実例として「バラク・フセイン・オバマというアフリカン・アメリカンを大統領に選出した」ことを挙げながら述べ、その上で「アメリカ大統領としての責任において、さまざまなカタチで表れるイスラムに対するネガティヴなステレオタイプを断固戦う」って明言してるんだけど、こういう表現でアメリカの大統領がオフィシャルにイスラムについて語るのは異例だと思うし、すごく新鮮な感じ。
具体的に挙げたポイントはは「テロリズム」「イスラエル / パレスチナ問題」「核兵器」「民主主義」「信仰の自由」「女性の権利」「経済」の 7 点なんだけど、やっぱりこのスピーチのキモはアメリカとイスラム文化の「相互理解」の重要性をあらためて、明確に説いたことに尽きる。お互いイーヴンな関係で、それぞれの違いを尊重し、相互理解を深めた上で、和解して新しい関係を築こう、と。まぁ、こうやって書くと、当たり前すぎるくらい当たり前な、2 者の関係を築く上での基本中の基本とも言えるようなことなんだけど、わざわざそんなことを改めて言う必要があって、しかもそれが大きなニュースになるってことは、そんな当たり前の基本に則った関係を築けてなかったってこと、誰もそれができなかったことの証明以外の何物でもないわけで。
こんなことをイスラム社会に向けてオフィシャルな場でキチンと語れるってだけでも十分衝撃的というか、画期的なことだと思うんだけど、それだけじゃなくて、すごくいろんな背景事情というか、「含み」というか、配慮と意思表明が随所に、綿密に盛り込まれてて。だからこそ、演説自体にも説得力をもたらすし、それも含めてスゲェなぁ、と。
まず、このスピーチがエジプトのカイロで行われたのは 6 月 4 日なんだけど、翌 6 月 5 日にはドイツで強制収容所跡を、その翌日の 6 月 6 日、第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦が決行された通称「D・デイ」にノルマンディを訪れてる点。各方面への配慮が伺える。しかも、翌週の 12 日にはイランの大統領選挙もあって、この大統領選挙戦は過去に例を見ないほどの盛り上がりを見せてた(そして、今もイザコザが続いてる)わけで、まさにその最中で行ったスピーチだったって点も見逃せない。あと、6 月 4 日が天安門事件から 20 年だった点にも、当然、世界的にはこのスピーチのニュースで天安門事件から 20 年って報道が減ることは予想されるんで、直接関係はないかもしれないけど、中国に対する何らかの配慮がありそう。
さらに、オバマ自身のパーソナル・ストーリーも忘れちゃいけない。大統領選挙戦の期間中に共和党から意味不明な揶揄(≠誹謗中傷)されたりもしてたんでよく知られてることだけど、今回の演説でも自ら触れてる通り、オバマの父親はケニア出身で、何代も続くイスラム教徒の家の生まれ。オバマ自身もイスラム教国のインドネシアで少年時代を過ごしてて、イスラム教徒の生活を自然に見て育ってて、シカゴではムスリムのコミュニティ活動にも接してる。それに、ネイション・オブ・イスラムの例を出すまでもなく、アフロ・アメリカン・コミュニティの中で支持されるってことは、アフロ・アメリカン・コミュニティに一定数、確実に存在してるムスリムからも支持されなきゃいけないってことだと思うし。
あと、今回の演説絡みで初めて知ったんだけど、オバマの大叔父(母方の祖父の弟)は、今回、オバマが訪れたブーヘンワルトの収容所を 1945 年に解放したアメリカ兵のひとりで、その時にそこで目撃した状況に大きなショックを受けて、今でも PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでるんだとか。オバマはこの大叔父にたびたび第二次大戦の話を聞かされてて、56000 人のユダヤ人が犠牲となったブーヘンワルトの話のインパクトは相当強かったらしく、だからこそ、D・デイの追悼に合わせて、その前にブーヘンワルトをぜひとも訪れておきたかったんだとか。
カイロでイスラエルに対して厳しいことを言ったかと思うと、直後にホロコーストの犠牲者に慰霊を行う。やもすると露骨なバランス取りに見えちゃいかねないところに、パーソナルな体験を交えることで必然性と説得力を与えつつ。しかも、ホロコーストでの慰霊は「ホロコーストはなかった」発言(暴言)で波紋を起こしたアフマディネジャドに対する皮肉と牽制の意味もあると思うし。なかなか巧妙で強かな戦略だな、と。
単に「知識」として認識してるってだけじゃなくて、自分のパーソナルな体験を交えることで親近感とリアリティと説得力を加えつつ、すでに知っている(けど、忘れちゃいがちな)人にはあらためて確認を、知らなかった人(主に若い人)には解りやすく説明する意味も含めてキチンと過去と現状を整理した上で、イスラエルに対しても、イスラム社会に対しても、そして世界のその他の人に対しても一定の配慮とともに明確な態度を示す。それは、特定の誰かだけに与することは決してしないし、誰とでもオープンに、フェアに対する、そうすることで新しい未来を作っていこうっていうメッセージ。すごくシンプルで、ストレートで、フェアで、この上なく力強いし、やっぱり画期的なんじゃないかな、と。
実際に話した内容はかなりシリアスで、決して簡単なハナシじゃないことばかり。それに、本人もこのスピーチで語ってるように、言葉はあくまでも言葉でしかない。でも、意志の込められた言葉には人を動かすパワーがあるし、それこそがまさに 'HOPE' になるんだと思うし。
これまでにも、オバマの演説はプラハでの核に関する演説、大統領就任演説、大統領選挙の勝利演説、さらにニュー・ハンプシャーでの演説をベースにした "Yes We Can" をレビューしてきてるんだけど、実はこの演説が一番重要なんじゃないかなんて思ったりもする。プラハでの演説も確かにインパクトがあったけど、イスラエル / イスラムに絡む問題ってやっぱ一番タブーだった部分だと思うし、ここに明確な意志を示すってすごく勇気が要ることだったと思うし、誰もが気にしていながら、みんな避けてきた問題だし。イランでの大統領選挙以降の一連のデモ・暴動とか、イラン代表のサッカー選手が代表から追放される(された?)ってニュースとか、なかなか一筋縄ではいかない問題だけど、それでも適当にやり過ごすんじゃなくて、真っ正面からキチンと向き合って、一歩踏み出そう、と。その姿勢はやっぱりすごく大事だと思うし、伊達に 'CHANGE' と 'HOPE' を公約に出てきた大統領じゃないなって感心するし、何よりも「本気度」みたいなモノがビンビンと伝わってくる。もちろん、伝えるべきことを適切なタイミングで、適切な表現で伝えられる能力ももちろんスゴイけど、実は、こういう「本気度」を伝えられることこそが一番大事で、オバマの最大の功績なんじゃないかって思ったりもする。
SAM COOK "A Change Is Gonna Come" (From "Otis Blue: Otis Redding Sings Soul")







