(Photo: Roy Ayers Project) |
ギル・スコット・ヘロンといえば、アフロ・アメリカン・カルチャーを代表する詩人であり、作家であり、ミュージシャンであり、ある種のアクティヴィストであり、ラップに多大な影響を与えたことで知られてるアーティスト。訃報はまず Twitter で知り(最近、このパターンが多い)、その後、Google News で(主に英語ソースの)各種報道を併読して詳細を確認したところ、死亡した事実と人物紹介はされてるものの、どうも、詳しい死因は報じられてないっぽい。享年 62 歳。思ってた印象よりも若い。
個人的にはメチャメチャ好きなアーティストの 1 人なんで、そういう意味では、もちろん、すごくショックだし悲しいんだけど、一方で、死亡したって事実自体にはそれほど驚かなかったって面もあったりして(年齢を考えると、もちろん、若すぎるとは思うけど、そもそも、もっと年齢が上だと思ってたんで)、一見相反するような感情が共存するような、ちょっと変な気持ちだったりもしてる。
ギル・スコット・ヘロンのデビューは 1970 年なので、実は 20 歳そこそこでデビューしてたことになる。そんな印象はまるでなかったんだけど。なんか、若手っぽさとか早熟さよりも、何とも言えない迫力とか貫禄みたいなモノを感じてたんで。
ギル・スコット・ヘロンのデビューは 1970 年なので、実は 20 歳そこそこでデビューしてたことになる。そんな印象はまるでなかったんだけど。なんか、若手っぽさとか早熟さよりも、何とも言えない迫力とか貫禄みたいなモノを感じてたんで。
GIL SCOTT-HERON "Small Talk at 125th and Lenox" |
その後のオリジナル・アルバムのディスコグラフィは以下の通り。
- 1970 "Small Talk at 125th and Lenox" (Flying Dutchman)(Links: iTS / Amzn)
- 1971 "Pieces of a Man" (Flying Dutchman)(Links: iTS / Amzn)
- 1972 "Free Will" (Flying Dutchman)(Links: iTS / Amzn)
- 1974 "Winter in America" (Strata-East)(Links: Amzn)
- 1975 "The First Minute of a New Day" (Arista)(Links: Amzn)
- 1976 "From South Africa to South Carolina" (Arista)(Links: Amzn)
- 1976 "It's Your World" (Arista)(Links: Amzn)
- 1977 "Bridges" (Arista)(Links: Amzn)
- 1978 "Secrets" (Arista)(Links: Amzn)
- 1980 "1980" (Arista)(Links: Amzn)
- 1980 "Real Eyes" (Arista)(Links: Amzn)
- 1981 "Reflections" (Arista)(Links: Amzn)
- 1982 "Moving Target" (Arista)(Links: Amzn)
- 1994 "Spirits" (TVT)(Links: iTS / Amzn)
- 2010 "I'm New Here" (XL)(Links: iTS / Amzn)
この他にも、ライヴ盤やコンピレーションもリリースされてるんだけど、ディスコグラフィをあらためて見てわかるのは、1970 年のデヴュー以降、1980 年代初めまで、すごくコンスタントに活動してたってこと。その中でも、ジャズ・レーベルのフライング・ダッチマン(Flying Dutchman)から 3 枚リリースした後、スピリチュアル・ジャズ系のレーベルとして今でも人気の高いストラタ・イースト(Strata-East)からの 1 枚を挟んで、当時、クライヴ・デイヴィス(CLIVE DAVIS)が設立したばかりの新興レーベルとして注目されてたアリスタ(Arista)がサインしたってことが目を引くかな。しかも、最初に契約したアーティストだったんだとか。個人的には、あまりコマーシャルな成功をしたアーティストって印象はなかったんだけど(実際、それほど成功はしていない)、それなりに注目されてたというか、期待されてたらしい。
音楽的な面では、大学時代の友人でもあるキーボートとフルートの奏者で作曲家・プロデューサーのブライアン・ジャクソン(BRIAN JACKSON)とのコンビネーションで作り上げた、ジャズ / フュージョン〜ソウル・ミュージック / ファンク〜ブルーズを融合させたようなサウンドに、社会的でラディカルなメッセージをのせるっていうスタイルが特徴。ギル・スコット・ヘロン自身は、後にラップに大きな影響を与えることになる、ラングストン・ヒューズ(LANGSTON HUGHES)直系のメッセージ色の濃いパワフルなポエトリー・リーディング=詩(詞)の朗読と、わりとオーソドックスなヴォーカルを使い分けてて、前者の印象が一般的に強いけど、後者の歌も、技巧的に上手いわけではないものの、どこかで朴訥としていて、でも、同時に無骨でブルージーな力強さもあって、なかなか味わい深かったりする。
GIL SCOTT-HERON "The Bottle" |
後で知ったんだけど、実はリリース当時もやっぱりこの曲は相当インパクトがあったようで、特に、メッセージ・ソングとしてだけでなく、ダンス・トラックとしても人気だったらしい。クライヴ・デイヴィスがアリスタで契約しようと思ったキッカケもこの曲で、ポップ・ミュージックとしてのヒット・ポテンシャルを感じたんだとか。
ハナシを戻すと、個人的な流れとしては、'ラップに大きな影響を及ぼした' 的な文脈よりも、レア・グルーヴの動きでの再評価の中で、手に入りやすかったコンピレーションやら、後にポツポツとリイシューされるようになった CD やらを遡って片っ端からチェックするようになったんだけど、そうした中で、レア・グルーヴ的な面だけじゃなく、'ラップに大きな影響を及ぼした' 的な文脈とか、サウンドとしてのヒップ・ホップのサンプリング・ソース的な側面も発見しつつ、でも、それ以上に、純粋に 1 人のアーティストの作品として、それこそ、カーティス・メイフィールド(CURTIS MAYFIELD)とかマーヴィン・ゲイ(MARVIN GAYE)とかスティーヴィ・ワンダー(STEVIE WONDER)とかスライ・ストーン(SLY STONE)とか同じようにハマっていった感じだった。
* * *
GIL SCOTT-HERON / BRIAN JACKSON "Winter in America"
(Strata-East) ★★★★★ Link(s): Amazon.co.jp
アルバムで 1 枚選ぶなら、上でも触れた 1974 年リリースの 4 枚目のアルバムの "Winter in America" かな、やっぱ。
今回の訃報の後、手持ちの作品を一通り聴き直してみたり、いろいろな記事とか映像とかを読み直し(観直し)たりしたんだけど、オリジナル・アルバムで一番好きなのはやっぱりコレかな、と。
リリースがストラタ・イーストってこともあって、かなりディープでスピリチュアルで、同時にすごくソウルフル且つブルージーな印象。代表曲としては、やっぱり "The Bottle" ってことになるけど、オープニングの "Peace Go With You, Brother" もキャリアの中でもハズせない代表曲だし、即興っぽいポエトリー・リーディング・スタイルの "H2Ogate Blues" もメチャメチャクールだし。
* * *
もちろん、他にも "Save the Children"・"Lady Day and John Coltrane"・"When You Are Who You Are"・"Pieces of a Man" とキャリアを代表する名曲揃いの "Pieces of a Man" とか、疾走感溢れるタイトル・トラックのサウンドが印象的な "Free Will" とか、名曲 "Johannesburg" が収録されてる "From South Africa To South Carolina" とか、意外なくらいラヴリィなアートワークの "Real Eyes" とか、どれも捨てがたいんだけど。
GIL SCOTT-HERON "The Revolution Will Not Be Televised" |
言わずと知れたギル・スコット・ヘロンの出世作であり、「革命は TV には映らない。革命は生で起こるんだ」っていう痛烈なメッセージは、激動の時代だった 70 年代はもちろん、今、聴いても(今だからこそ?)超リアリティがあるし、まさにタイムレスな名曲と呼ぶに相応しい。
後にリリースされたベスト盤的なコンピレーション(Link: Amzn)のタイトルにもなってるし、たぶん、今回の訃報に際しても、最初に紹介されるのはこの曲だったりしてるはず。マルコム X(MALCOLM X)を彷彿とさせる独特のポエトリー・リーディング・スタイルを全面に押し出した曲だってことも含めて、もっともギル・スコット・ヘロンらしい曲だと思うし。
GIL SCOTT-HERON and BRIAN JACKSON "Bridges" |
Just 30 miles from Detroit
Stands a giant power station
It ticks each night as the city sleeps
Seconds from annihilation
But no one stopped to think about the people
Or how they would survive
And we almost lost Detroit this time
How would we ever get over losing our minds?
デトロイトからたった30マイルの場所に巨大な発電所が建っている。
毎晩、都会が眠ってる間にも、絶滅までの秒針を刻み続けている
しかし、誰も足を止めて人々のことを、どうやって生き残るかについて考えようとしない。
それで今回、我々はデトロイトを失いかけた。
この気が狂った状態から、どうすれば立ち直れるんだ?
- GIL SCOTT-HERON and BRIAN JACKSON "We Almost Lost Detroit"
リリックにはこんな一節があるんだけど、これこそまさに、今、日本で聴くと全然笑えないっつうか、リアリティがありすぎるっつうか。だって、もう、完全に 'We Almost Lost Fukushima' って感じだから('almost' で収まってるかも定かじゃないし)。まぁ、こういう表現を好まない人もいると思うけど。特に被災地の人とか。その気持ちはもちろんわからんではないし、配慮したほうがいいのかな? なんて悩んだりもするけど、でも、実際、そう言わざるを得ない状況だし。
前にレヴューした『核のアメリカ ー トルーマンからオバマまで』に、ゴルバチョフが核軍縮に舵を切った大きな要因のひとつがチェルノブイリの事故だったってハナシが載ってたのがすごく印象的だったんだけど、そこでも「広島・長崎の悲劇が次第に忘れられていた」なんて発言があったりして、人間はイヤなことをすぐに忘れる(忘れたがる)アホな動物なんだなって、あらためて痛感させられる。だからこそ、忘れないためにいろいろなカタチで触れることが大事だし、特にアートの持つパワーは強烈だなとも思うし。
ちなみに、この曲は 1979 年のスリーマイルズ・アイランド事故後にリリースされた反原発コンサートのライヴ盤、"No Nukes: The Muse Concerts for a Non-Nuclear Future"(Link: Amzn)にも収録された。
* * *
"GIL SCOTT-HERON: The Revolution Will Not Be Televised" (BBC) ★★★★★
Link(s): Program Info (BBC) / YouTube playlist
もうひとつ、今回の訃報後にいろいろと調べてた中で見つけた動画を。BBC が 2006 年に制作したドキュメンタリーなんだけど、これがメチャメチャ見応えがある。
キャスト的にも、ギル・スコット・ヘロン本人はもちろん、朋友のブライアン・ジャクソンをはじめとして、先駆者的な詩人として知られるザ・ラスト・ポエッツ(THE LAST POETS)、近い時期にイギリスで違うスタイルのサウンドで似たようなことを実践してた LKJ ことリントン・クウェシ・ジョンソン(LINTON KWESI JOHNSON)、アリスタのクライヴ・デイヴィス、さらにギル・スコット・ヘロンに影響を受けた世代からは、ラップ / メッセージ的な面で大きな影響を受けたであろうパブリック・エナミー(PUBLIC ENEMY)のチャック・D(CHUCK D)、90 年代後半の NYC で起こったヒップ・ホップとポエトリー・リーディングを結び付けた動き(デフ・ポエトリー・ジャム等)の中で大きな存在感を放ったラッパーのモス・デフ(MOS DEF)や女流詩人のサラ・ジョーンズ(SARAH JONES)、ポエトリー・リーディング・アーティストのカール・ハンコック・ラックス(CARL HANCOCK RUX)といった渋い(でも、本質に迫るためには最適な)メンツまで出演してる。
内容的には、生い立ちから始まって(なんと、父親は中村俊輔が在籍したことで日本でもお馴染みのスコットランドのサッカー・クラブ、セルティックで初めてプレーした黒人選手だったんだとか)、大学でのブライアン・ジャクソンとの出会い〜レコーディング・アーティストとしてのキャリアって流れで紹介されてるんだけど、当時の時代背景がすごくよくわかってすごく興味深い。ハーレム・ルネッサンスやジャズ、特にジョン・コルトレーン(JOHN COLTRANE)の影響とか、ラングストン・ヒューズへの傾倒っぷりとか、公民権運動〜ブラック・パワー・ムーヴメントとの関係、特にマーティン・ルーサー・キング Jr.(MARTIN LUTHER KING JR.)とマルコム X からの影響の大きさとか、もちろん、時代やアーティスト性を考えれば当然なんだけど、ついつい見落としちゃいがちだったりするんで。でも、こういうカタチで見せられると、その結び付きの強さや必然性がもっとクリアに見えてくるんで。
あと、もうひとつ、すごく印象的だったのが、ギル・スコット・ヘロンを語る上で欠かせない大きな要素としてブルーズがあるってこと。アフロ・アメリカン・ミュージック、特に 60 年代以降のソウル・ミュージックの流れにある音楽は、カーティス・メイフィールドにしてもマーヴィン・ゲイにしてもスティーヴィ・ワンダーにしてもそうだけど、一般的にはゴスペルの影響が濃くて、わりとブルーズの影響は希薄になってることが多い。ブルーズとゴスペルの違いについては、コレはコレで論じ始めたらかなりの文量が要るテーマなんでやめとくけど、まぁ、基本的にはどちらもアフロ・アメリカン・ミュージックを語る上で欠かすことのできないルーツ・ミュージックでありながら、いろんな意味で対照的な特徴を持ってて、ある意味では相反しつつも、実は表裏一体でもあるような、二律背反というか、パラドキシカルというか、アフロ・アメリカンならでは一筋縄ではいかない歴史的・文化的・社会的な事情をもっとも象徴してる要素だったりする。具体的には、個と集団であったり、俗と聖であったり、嘆きと救いであったり。
まぁ、何年かに渡って、それなりにアフロ・アメリカン・ミュージックを自覚的に聴いてきて、本とか映画もなるべく読んだり観たりしてきて、未だに一番感覚的にわからないのが、実はブルーズとゴスペルだったりするんだけど。たぶん、それだけ根幹というか、コアの部分に大きく関わってるからなんだと思うけど。何でもそうだけど、コアな部分に近づけば近づくほど、そして、土着してるというか、肌感覚のことであればあるほど、言語化したり客観視するのは難しくなりがちなんで。例えば、ブラジル人にとっての 'ジンガ' とかフランス人の 'エスプリ' とかもそうだと思うし、たぶん、(自覚してるかどうかはともかく)日本人の 'ワビ・サビ' 的な感覚もそうだと思うし。
そういう意味では、潜在的には内在してるんだろうけど、少なくともテクニカルな部分でブルーズの直接的な影響を感じさせるアフロ・アメリカン・ミュージックは 60 年代以降にはそれほど多くはない印象で(突発的には出てくることがあるけど)、そんな中でギル・スコット・ヘロンの存在感は異彩を放ってたはず。だって、あまり意識してなかったけど、言われてみればブルージーそのものだし。しかも、個人的にはそこに大きく魅かれてたんだってことに気付いたりもして。ゴスペルに象徴される集団が生み出す高揚感的な意味でのアフロ・アメリカン・ミュージックが好きであると同時に、ブルーズのミニマルな表現もすごく好きだったんで。ギル・スコット・ヘロンが自身を 'bluesologist' って称してたらしいけど、それもすごく合点がいくっていうか。そんな面を本人の言葉で(再)発見できて、ギル・スコット・ヘロンってアーティストのいた '独特の場所(立ち位置)' をあらためて確認できたって意味でも、このドキュメンタリーはすごく面白かったし、ちょっと目から鱗だった。
ちなみに、このドキュメンタリーを作ったのは、ロンドン・パンクを代表するバンドのザ・クラッシュ(THE CLASH)を脱退したミック・ジョーンズ(MICK JONES)と共にビッグ・オーディオ・ダイナマイト(BIG AUDIO DYNAMITE)のメンバーとして活躍し、後にスクリーミング・ターゲット(SCREAMING TARGET)を結成したことで知られるドン・レッツ(DON LETTS)だったりするのも個人的には感慨深い。ビッグ・オーディオ・ダイナマイトもスクリーミング・ターゲットもけっこう好きだったんで。スクリーミング・ターゲット以降はあまり音楽活動のハナシは聞こえてこなくて、たまにレゲエのコンピレーションなんかをコンパイルしたりしてる(実は、わりとたくさんリリースされてる)くらいの情報しかなかったんだけど、映像作品を作りながら BBC なんかで活躍してたらしくて。まぁ、よくよく思い出せば、もともとザ・クラッシュとかを中心にしたパンク・シーンの映像を撮って 1978 年に "The Punk Rock Movie"(Link: Amzn)って作品にまとめてたりするし、その流れで、パンク・シーンとレゲエをつなぐ人物の 1 人として、ザ・クラッシュ中期以降のレゲエ〜ダブの導入とか、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトにつながったんだけど。ただ、スクリーミング・ターゲット以降の映像作家としてのキャリアは、個人的には完全にノー・マークだったんで、ちょっとビックリ。ただ、フィルモグラフィはなかなか立派。BBC のサイトにはこんなバイオグラフィのページもあったりするくらい活躍してて、2003 年にはザ・クラッシュのドキュメンタリー、"The Clash: Westway to the World"(Link: Amzn)でグラミー賞の最優秀長編音楽ヴィデオ賞(Best Long Form Music Video)まで穫ってるらしい。そして、そのフィルモグラフィの中のひとつが、このギル・スコット・ヘロンのドキュメンタリーだったってことになるんだけど、さすがはドン・レッツというか、なかなかいい仕事をしてるし、かつて好きだったアーティストにこんなカタチで再会できるのはすごく嬉しい限りだったりもする。
* * *
ギル・スコット・ヘロンの死の直後の "New York Times" の記事の中で、チャック・D のこんな発言が紹介されてた。
“You can go into Ginsberg and the Beat poets and Dylan, but Gil Scott-Heron is the manifestation of the modern word. He and the Last Poets set the stage for everyone else.”
- CHUCK D / PUBLIC ENEMY (quoted from "NYT" article on May 29)
簡単に訳すと、「(アレン・)ギンズバーグ(ALLEN GINSBERG)やビートニク詩人たち、ボブ・ディラン(BOB DYLAN)については論じられることが多いが、ギル・スコット・ヘロンこそが現代的な言語表現の表れなんだ。彼とラスト・ポエッツがその舞台を作ったんだ」って感じかな? たぶん、ヴォーカルとかポエトリー・リーディングとかラップとかっていう 'ヴォーカル表現' っていうよりも、もうちょっと大きな枠で、(特にアフロ・アメリカンの)'(特にヴァーバルな)言語表現' っていう部分で、後のアーティストたちにとてつもなく大きな影響を及ぼしたってことなんだろうな。
まぁ、晩年に関しては決して幸せな感じってわけではなかったみたいだけど、それでも最後に "I'm New Here" っていう、最高傑作とは言えないまでも決して昔の遺産をヌルく焼き直したようなモノじゃない作品を出してから亡くなったのもギル・スコット・ヘロンらしい気がする。だって、新譜リリースのニュースを聞く前に名前を聞いたのはコカインの不法所持で逮捕されたってニュースだったし(しかも 2007 年!「いい歳してコカインかよ!」って驚きつつも、同時にどっかでちょっと納得しちゃったところもあったりして)。
死後には、いろんなアーティストがさまざまなカタチでコメントを発表したり、トリビュート・ミックスを公開したりしてて、可能な限り聴いてみたけど、やっぱり秀逸だったのはジャイルス・ピーターソン(GILLES PETERSON)が SoundCloud に公開したこのミックスかな。個人的に初めてギル・スコット・ヘロンを知った 90 年代のアシッド・ジャズ〜レア・グルーヴ的な流れの中心人物でもあったって意味でもシックリくるし。
* Gil Scott-Heron Tribute Mix by Gilles Peterson by gillespeterson
他にも、ちょっと探せば聴ききれないくらいいろんなミックスが見つかるんだけど、個人的にわりと気に入ったのはスペインのクッキン・ソウル(COOKIN' SOUL)のミックスとか DJ メイヘム(DJ MAYHEM)のミックス辺りかな。ホントは mixcloud にアップされてたブラック・クラシカル(BLACK CLASSICAL)のミックスがスゲェ良かったんだけど。あえてギル・スコット・ヘロンの楽曲だけじゃなくて、当時のシーンや時代背景を感じさせる曲とか、ギル・スコット・ヘロンの精神を受け継いでるアーティストの曲までフィーチャーしたコンセプチュアルなミックスで。でも、残念ながら削除されちゃったらしい。
すっかり長くなっちゃったけど、まぁ、個人的にはどうしても長くならざるを得ないっていうか、思うところが多すぎるアーティストなんで仕方がない。
もちろん、客観的にもメチャメチャ功績の大きなアーティストであることは間違いないんだけど、それ以上に、個人的にメチャメチャツボな要素が多いんで。技巧に走らずにシンプルで骨太な感じとか、一貫した無骨で攻撃的なアティテュードとか、ミュージカルであると同時にリリカルなところとか、ハートと脳味噌の両方に(そして、腰にも)同時にガンガン訴えかけてくる感じとか、能天気すぎない感じとか、キャッチーさの欠片もない佇まいとか、もう、挙げればキリがない感じ。「亡くなってあらためてその偉大さに気付く」ってことはよくあるけど、個人的には全然それ以上の存在で、(その時の気分で入れ替わりながらも)何枚かのアルバムが常に iPhone の iPod に入ってて、いつでも聴けるようにしときたいくらいのアーティストだったんで。
まぁ、今回、あらためてアルバムを聴き直したり、映像を観たり記事を読んだりしてて感じたのは、やっぱりシーンの中でもとてつもなくユニークなアーティストだったんだなってこと。いろいろな部分に突出した要素があって、それが絶妙のバランスで共存してて。アフロ・アメリカン・ミュージック / カルチャーの系譜をしっかりと受け継ぎつつも、同時にフレッシュさとかユニークさもあるというか。あらためて、いかに希有なアーティストだったかってことを痛感させられた感じかな。
GILBERT 'GIL' SCOTT-HERON (April 1, 1949 - May 27, 2011) - Rest in peace, brother.
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