2008/10/17

Less is more.

Apple Special Event October 2008 / Keynote Address (Apple Inc.)  

2008 年 10 月 14 日に開催されたアップルのスペシャル・イベントでのキーノート・アドレス(今回もアメリカのアップルのサイトで QuickTime のストリーミングで視聴することができ、ポッドキャストでも既に配信されている)。事前に配られていた招待状に「The spotlight turns to notebooks.」とあったように今回の主役はノートブック。ノートブックのラインが見た目も中身もフル・モデル・チェンジされた。

クラシックが BGM として流れる中で始まったキーノート・アドレスの冒頭にはまず COO のティム・クックが登場して、マックの現状について報告。Vista があまりにも出来が悪いおかげもあって(本当に「名誉ある撤退」説を信じたくなる)マックはとても好調なようで、リテイル・レベルのシェアは確実に増加中。もちろん、iPod や iPhone のおかげでもあるんだろうけど、ともあれとても良い傾向特に大学でのシェアの増加とか)。マックは確実に、ジワジワと、いい感じらしい

次に登場したのは、最近〜現在の、そしてこれからのアップルを語る上で忘れちゃいけないキー・パーソンのジョニー・アイヴ(前は「ジョナサン」って呼んでたけどね)。現在のアップルのデザインはこの人の功績と言っても過言ではない重要人物で、足すよりも削ぎ落とすようなデザイン・ディレクションは、いい意味でアメリカっぽくなくて(実際にイギリス人だし)、ここ数年のアップルのオリジナリティになってる。そんなジョニーが紹介したのは、MacBook Air で初めて採用されたユニボディという製法。通常、たくさんのパーツで構成されていたノート・パソコンのボディの構造を根本から見直し、精密に設計され、ひとつのアルミ版から削り出されたボディを採用することで、より軽く、より薄く、より丈夫にすることを実現してるとのこと。これは文句なく素晴らしく、もう造形美と呼ぶ以外にない仕上がり。スティーヴ・ジョブズは基盤の美しさにもこだわったってエピソードは有名だけど、このボディも中の美しさが見れないのが残念なくらい。ジョニーの、上手くはないけど味のある、ビジネスマンっぽくないプレゼンテーションも新鮮だった。

で、後半はスティーヴが担当して一気に最後までプレゼンテーションを進行。主な特徴としては、LED バックライト・ディスプレイ、NVIDIA の高速グラフィック・ボード、ガラス製のマルチタッチ・トラックパッドで、今回発表された MacBook ProMacBook Air、そして MacBook に採用されてる。デザインも
MacBook Air 以外はモニターの周りが黒いアルミ・ボディに統一されて、iMaciPhone と親和性が高いクールな方向性。あと、あまり注目されないと思うけど、「MacBook のためにつくられたディスプレイ」と唱われてるLED Cinema Display が実はいい感じ。よっぽど特殊な仕事をしてない限り、MacBookLED Cinema Display の組み合わせがベストなんじゃないかな。ガラス製のマルチタッチ・トラックパッドもすごく良さそうだし、ボタンがないってのもアップルらしくていい。まだ実物を触ってないけど、トラックパッド派としては嬉しい変更。今まであまり MacBook に魅かれたことはなかったんだけど、このモデルはかなり欲しいかも。

今回は全体で 1 時間弱のプレゼンテーションで、会場も小さそうだったし、盛り上がりもイマイチで、全体に淡々とした印象のキーノート・アドレスだったけど、何年もノート・パソコンをメイン・マシンとして使ってる(背負ってる)モバイラーとしてはやっぱ気になるし、個人的にはなかなか充実した内容だった。ただ、やっぱり iPhone や iPod に比べて地味になるよなぁ、とは感じる。なんでだろうって思ってたんだけど、たぶん、この世界は基本的に「男(の子)」な世界なんだな、って気付いた。ユニボディの映像を見ててガンプラのマスターグレードを思い出したんだけど、それでピンと来た。あのボディの造形美はもちろん、スペックとかも含めて、多分に「男(の子)」っぽい要素に満ちてるな、だから、あんまり派手に盛り上がる感じにはならないんだな、と。だから好きなんだろうし。

あと、今回気になったのはスティーヴの雰囲気。事前にスティーヴの健康悪化説が流れた(キーノート・アドレス後の Q&A セッションでは先手を打って、まずスティーヴの血圧がスクリーンに表示されたらしい)からか、だいぶ痩せた印象。不健康にも見えるけど、いつも以上に落ちついた口調で淡々と進める姿からは、いい意味でちょっと枯れた老人のような、なんか、何かを悟ってる人の持つ落ちつきのようなモノを感じたり。そういう境地に達しつつあるのかな。

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