2008/11/14

Still alive.

『チェ・ゲバラの記憶』 フィデル・カストロ 著 柳原 孝敦 監訳
(トランスワールドジャパン  Link(s): Amazon.co.jp
 
原書は "Che: A Memoir by Fidel Castro" 及び "Che en la memoria de Fidel Castro"。前者はオーストラリアのオーシャン・プレス社が 2006 年に英語で出版したもので、タイトルに 'memoir'(メモアール)とあるように、フィデル・カストロがチェ・ゲバラについて触れた演説やインタビュー等をデイヴィッド・ドイチュマンが編纂したもの。後者は、前者をベースにキューバのオーシャン・スールが該当部分のスペイン語の原テキストを集めたもの。初版の発表は 1994 年、ここで採り上げられた原書は第 2 版で、1994 年以降のものも収められている。つまり、表記的には「フィデル・カストロ著」となってるけど、厳密には、新たに記したわけではなく、これまでにも発表されていたものを集めた「コンピレーション」のような作品だということです。 

内容は、カストロやチェとともに戦った革命戦士であり、1999 年に死亡したヘネス・モンタナの序文から始まって、チェからフィデルへの「別れの手紙」を発表した(せざるを得なかった)1965 年 10 月の演説、チェの死亡を確認した演説、追悼演説、チェの『ボリビア日記』の「必要不可欠な序文」とその出版に際しての演説、アジェンデ大統領に招かれて訪れたチリの首都・サンティアゴ・デ・チレのチェの銅像の前で行った演説、イタリア人ジャーナリストによるインタビュー、チェの没後 20 周年演説、ニカラグアのトマス・ボルヘによるインタビュー、そして 2003 年にアルゼンチンのブエノスアイレスで行った演説まで、時系列に沿って収録するカタチになっている。

読んでて強く感じるのは、カストロにとって、個人としても国家としてもチェの存在がどれほど大きく、同時に、そうであるが故にどれほどやっかいだったか、ってこと。友人として、チェの死を語ること、特に多くの人に対して、その経緯や検証結果を事細かに語らなければならないことは、どれだけ辛いことだったか想像するのは難しいことではない。できれば、そんなことは誰もしたくない。でも、語らないことで生じる様々な憶測や噂話、そして敵対関係にあるアメリカ(及びその属国)による情報操作や誹謗中傷を避ける意味でも真実を語ることは公人としては不可欠なことだったし、革命のコマンダンテとして、国民に伝える義務がある。チェを敵に利用されるのは是が非でも阻止しなければならないし、(本意にしろ、不本意にしろ)チェという存在を利用してでも国を守らなければならないのが彼の立場でもあったわけだし。そういう意味で、私人としても公人としても、カストロにとってチェがどれほど大きな存在で、尊く、同時に扱いが難しい存在だったかということが、カストロの雄弁な言葉の端々から感じられる。

あと、あらためて、カストロはやっぱり「戦士」なんだなぁ、と。武器を実際に手に取らなくなった後も、常に「言葉を武器に戦う戦士」だったんだ、と。オバマのスピーチがあまりにも素晴らしかったことで、スピーチ=言葉の持つ力についてあらためていろいろと考えさせられたりしてるけど、カストロこそ元祖スピーチ・マスターだし。そして、チェもまた然り。言葉を武器に戦ってた。いみじくも、カストロが「戦士は死ぬことがあるでしょう。しかし、その考えは死にません」と語ってる通り、チェの考えは今でも死んでないし、冷戦崩壊後の世界を支配してきたシステムが大きく変わってる時期であり、革命 50 周年を迎えるこの時期だからこそ、カストロやチェのやってきたことや考えたことを、再検証してみるいいチャンスなんじゃないかと強く感じる。

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