2009/10/20

Still slick enough.

"The Great Adventures of Slick Rick" SLICK RICK (Def Jam)  

ちょっと訳あって最近、聴きまくってる正真正銘のヒップ・ホップ・クラシック、スリック・リックの 1988 年リリースのファースト・アルバム。

まぁ、あらためて見てみると、「アートワークがゴキゲンすぎ」とか「オッ、実はアイパッチしてないんじゃん」とか「'スリック・リックの大冒険' ってスゲエタイトルだな」とか、けっこう新鮮だったりするわけだけど、まぁ、何と言っても、サウンド自体がメチャメチャフレッシュ。「エフ・アール・イー・エス・エイチ」とか言いたくなるくらい。

まぁ、スリック・リックのファースト・アルバムって言われてピンとくる人は、よっぽどヒップ・ホップ好きか、それなりの年齢(またはその両方)なんだと思うけど、一応、概要にサラッと触れとくと、スリック・リック(aka ザ・ルーラー)は、実はロンドン生まれで NYC 育ちのラッパー。ダグ・E・フレッシュの 1985 年のヒューマン・ビートボックス・クラシック、"La Di Da Di" に MC リッキー・D 名義でフィーチャされて一躍注目を集めて、そんなノリノリな状況でリリースされたのはこの "The Great Adventures of Slick Rick" だと。プロデューサーは本人とラン・DMC のジャム・マスター・ジェイとボム・スクワッドで、大ネタもアリでゴキゲンなトラックも含めて当時のデフ・ジャムらしいっていうか、第 1 期デフ・ジャム黄金時代(って言っていいのかな?)を代表するアルバムって感じかな。当時、『The Source』誌で 5 本マイクの評価を受けたことでも有名(『The Source』誌のディスク・レヴューは 5 点満点で評価されてて、マイクの数で表現されてたんだけど、5 本マイクってのは滅多に出なかった)。

MC としての特徴は、ユルめのフロウと卓越したリリックで、特にヒップ・ホップ・シーンを代表するストーリーテラーとしての評価は圧倒的に高くて、1 人 2 役とかも自在に駆使した斬新なスタイルが後世のシーンに与えた影響の大きさは計り知れない感じ。その代表格がスヌープだと思うけど、個人的に気に入ってるのはモス・デフとタリブ・クウェリがブラック・スターのアルバム "Mos Def & Talib Kweli are Black Star" で演ってた "Children's Story" かな、やっぱ。

あらためて聴いてみると、ほのぼのしてるというか、牧歌的にすら思えるんだけど、でも、全然ヌルくて聴いてられないとか古くて耐えられないとかってことはなくて、いい意味での時代感は漂いつつも、むしろ、超ファットでフレッシュで。ユルい印象が強かったけど、案外、速めのトラックも入ってたんだなぁとかあらためて発見したり。まぁ、その後、いろいろと波瀾万丈な人生を送っちゃうことになるんだけど、それはそれとして、この "The Great Adventures of Slick Rick" は間違いなくヒップ・ホップ史に燦然と輝くクラシックであることは間違いない。

まぁ、実は、「ちょっと訳あって」ってのは、名前に引っかかったってことなんだけど。スリック・リックって、語感(とその周辺をそこはかとなく漂う時代感とか空気感みたいなもの)がいいなって。「だって、コイツ、絶対、本名はリックで、'オレは超スリックなリックだぜ' 的な感じだよね」って。そういう、バカっぽさっていうか、オールド・スクールな時代ならではの感じが、なんか、すごくいいな、と。

* SLICK RICK "Children's Story" (From "The Great Adventures of Slick Rick")








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