2011/12/05

Be thankful for what you've got to be.

"DON'T BUY THIS JACKET" Black Friday / Cyber Monday Ad (Patagonia) ★★★★★ 
 Link(s): The Cleanest Line website (English / Japanese)

先月のアメリカの感謝祭の翌日のブラック・フライデーにパタゴニア(Patagonia)がニュー・ヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載した広告。週明けの月曜日、いわゆるサイバー・マンデーにも同内容のメール・マガジンが送信された(右の写真はメール・マガジン版)。

見ての通り、上部にドン! と書かれてるメイン・キャッチコピーは 'DON'T BUY THIS JACKET'。まぁ、普通に考えれば、小売業の企業が使うキャッチコピーとは思えないような、ある種、ちょっと挑発的な(?)言葉遣いが、すごく印象的でパタゴニアらしい広告。目的は、当然、大量(過剰)消費が自然環境に与える負荷についての意識を高めるために、購買の必要性について考えることを促すモノ。アメリカで消費が爆発的に増える感謝祭のタイミングに合わせて行われた。

ちょっと時間が経っちゃったし、感謝祭って日本ではイマイチ馴染みがないんでそれほどピンとこない類いの話題かもしれないけど、個人的にはすごく気になる動きだったんで、メモを兼ねて。

感謝祭(Thanksgiving Day)ってのは、11 月の第 4 木曜日のアメリカの祝日で、'thanksgiving' っていうくらいで、'自然の豊かな恵み' に感謝する '収穫祭' 的な意味合いの日。それこそ、日本の祭りも基本的には同じ意味合いのものが多いと思うし、世界中に似たようなファンクションの行事は多い。その多くは(特に原始的な宗教観に基づいた)宗教的な意味合いが濃くて(日本の祭りが神社や寺で行われるように)、アメリカでももともとはそうだったんだろうけど、今のアメリカではだいぶ意味合いが変わってきてるように見える。

個人的な印象は、'アメリカ人が浮き足出す日'。ちょっと大袈裟な言い方をすると、感謝祭からクリスマスにかけての時期になるとアメリカ人は仕事のやりとりとかであまり使い物にならなくなるって感じ。まぁ、もちろん、みんながみんな、そうなるわけじゃないんだけど、でも、なんか、アメリカ社会全体がちょっと浮かれモードっていうかパーティ気分になる印象で。

もちろん、'自然の豊かな恵み' に感謝する行事はいいことだと思うし、それでちょっと浮かれモードになること自体もそれほど悪いことじゃないと思うけど、アメリカの場合、そこに大量消費が加わるどころか、もはや本質がすり替えられてる印象で。昔、この時期に何度か NYC に行ったことがあるけど、やっぱ、ちょっとトゥー・マッチな感じで、ツーリストとして買い物とかはしてたけど、それでも、なんか、ちょっと引いちゃう部分もあったりした。もちろん、消費自体を否定するわけじゃないけど、それと大量消費(過剰消費)ってのは別の問題だと思うんで。

ブラック・フライデーとかサイバー・マンデーもそこに密接に関連してて、ブラック・フライデーは感謝祭の翌日の金曜日で、一般的にはクリスマス・セールが始まる日ってことになってる。ネーミングは 1869 年の金融危機に由来してるらしいんだけど、今はショッピング・シーズンの幕開けって認識でいいんじゃないかな。とにかく、その週末から人々が街に繰り出して買い物しまくる、と。サイバー・マンデーってのは、インターネット時代以降に使われ出した言葉(shop.org によると2005 年から使われてるらしい)で、感謝祭後の週明けの月曜日にオンライン・ショッピングの売り上げが急増することからこう呼ばれるようになったらしく、まぁ、要するに、ブラック・フライデーのオンライン版ってことなのかな。

'DON'T BUY THIS JACKET' on New York Times
今の日本の状況とか、一連の 'Occupy' ムーヴメントの動きを見てると全然ピンとこないけど、今年のブラック・フライデー / サイバー・マンデーの売上高は過去最高だったらしく(例えば、コレとかコレとかによると)、これはこれで個人的にはスゲェ違和感を感じたりもするんだけど、今回、パタゴニアがニュー・ヨーク・タイムズに右のような広告(っつうか、意思表明。 Link: PDF)を出したのがまさにそのブラック・フライデー当日。さらに、週明けのサイバー・マンデーにも上に貼ったメールを送ることで、明確に企業としての意思を示した、と。

広告とメール・マガジンに掲載された文章は以下の通り。但し、冒頭の 'Today is ...' って部分だけはブラック・フライデー・ヴァージョンとサイバー・マンデー・ヴァージョンが変更されてて、以下はサイバー・マンデー・ヴァージョン(ちょっと長いけど頑張って訳も付けてみた)。

Today is Cyber Monday. It will likely be the biggest online shopping day ever. Cyber Monday was created by the National Retail Federation in 2005 to focus media and public attention on online shopping. But Cyber Monday, and the culture of consumption it reflects, puts the economy of natural systems that support all life firmly in the red. We’re now using the resources of one-and-a-half planets on our one and only planet.
今日はサイバー・マンデーです。サイバー・マンデーは 2005 年にオンライン・ショッピングにメディアや市民の関心を集めるために全米小売協会(NRF)が造ったものです。消費文化を反映するサイバー・マンデーは、我々の生活を支えている自然環境に損失を与えます。我々は地球 1 + 1/2 個分の資源を浪費しています。
Because Patagonia wants to be in business for a good long time – and leave a world inhabitable for our kids – we want to do the opposite of every other business today. We ask you to buy less and to reflect before you spend a dime on this jacket or anything else.
パタゴニアはいつまでも事業を継続させたいと思っており、子供たちにも生存可能な地球環境を残したいと思っています。だからこそ、我々は他の企業とは反対のことをしたいと思います。皆さんにお願いがあります。このジャケットや他の商品にお金を費やす前に、買い物を少しでも減らして欲しいのです。
Environmental bankruptcy, as with corporate bankruptcy, can happen very slowly, then all of a sudden. This is what we face unless we slow down, then reverse the damage. We’re running short on fresh water, topsoil, fisheries, wetlands – all our planet’s natural systems and resources that support business, and life, including our own.
環境破壊は、企業が倒産するのと同じように、ゆっくりと進行し、そして、ある日、突然、起こります。我々が消費ペースを落として、損害進行を反転させなければ、環境破壊に直面することになるでしょう。すでに淡水や表土、魚介類や湿地帯が枯渇しつつあります。これらは地球の自然生態系であり、我々の生活やビジネスの資源となっているものです。
The environmental cost of everything we make is astonishing. Consider the R2® Jacket shown, one of our best sellers. To make it required 135 liters of water, enough to meet the daily needs (three glasses a day) of 45 people. Its journey from its origin as 60% recycled polyester to our Reno warehouse generated nearly 20 pounds of carbon dioxide, 24 times the weight of the finished product. This jacket left behind, on its way to Reno, two-thirds its weight in waste.
我々が生産する製品すべての環境コストを計算すると驚くべきことがわかります。ベストセラーである R2 ジャケットを例に挙げると、このジャケット 1 着を作るために 135 リットルの水が要りますが、これは人が 1 日に必要とする水(1日にコップ 3 杯)の 45 人分に相当します。このジャケットの素材の 60% がリサイクルされたポリエステルですが、原料から製品となりリノにある倉庫に運ばれるまで、およそ 20 ポンドの二酸化炭素が排出されるのです。これは、このジャケットの重さの 24 倍にもなります。そして、このジャケットがリノに運ばれるまでに、この重さの 2/3の重量の廃棄物がでるのです。
And this is a 60% recycled polyester jacket, knit and sewn to a high standard; it is exceptionally durable, so you won’t have to replace it as often. And when it comes to the end of its useful life we’ll take it back to recycle into a product of equal value. But, as is true of all the things we can make and you can buy, this jacket comes with an environmental cost higher than its price.
60% リサイクルのポリエステルで作られたジャケットは高い品質基準の下で製造されています。耐久性は非常に高く、頻繁に買い替える必要はありません。そして、耐用年数後には引き取って同じ価値の製品にリサイクルします。しかし、我々が生産してユーザーが買うものすべてについても同じことが言えるのですが、このジャケットを作るのにかかる環境コストは商品価格自体よりも高額なのです。
There is much to be done and plenty for us all to do. Don’t buy what you don’t need. Think twice before you buy anything. Go to patagonia.com/CommonThreads, take the Common Threads Initiative pledge and join us in the fifth “R,” to reimagine a world where we take only what nature can replace.
我々が行わなければならないことはたくさんあります。必要でないものを買うのはやめましょう。何か買う前に再考してください。そして、コモンスレッズ・イニシアチヴのサイトにアクセスして誓約してください。5 番目の 'R' にあるように、自然が元に戻せる量だけの消費で済む世界を想像(リ・イマジン)してみてください。

common threads initiative
REDUCE: We make useful gear that lasts a long time. You don’t buy what you don’t need. リデュース:我々は長く使い続けられる製品を製造する。みなさんは不要なモノを買わない。 
REPAIR: We help you repair your Patagonia gear. You pledge to fix what’s broken. リペア:我々はパタゴニア製品のリペアを援助する。みなさんは傷んだものはリペアすることを誓う。 
REUSE: We help find a home for Patagonia gear you no longer need. You sell or pass it on*. リユース:我々は、みなさんが使わなくなったパタゴニア製品を譲る相手を見つけられるようサポートする。みなさんは、不要なものは売ったり譲ったりする*。 
RECYCLE: We will take back your Patagonia gear that is worn out. You pledge to keep your stuff out of the landfill and incinerator. リサイクル:我々は耐用年数後のパタゴニア製品を引き取る。みなさんはパタゴニア製品を埋め立て地や焼却炉へ送らないことを誓う。 
REIMAGINE: Together we reimagine a world where we take only what nature can replace. リ・イマジン:自然に元に戻せる分だけの消費で済む世界を想像(リ・イマジン)を一緒に想像しましょう。 
* If you sell your used Patagonia product on eBay and take the Common Threads Initiative pledge, we will co-list your product on patagonia.com for no additional charge. パタゴニア製品を eBay で売る場合、コモンスレッズ・イニシアチヴから出品すると、追加料金無しでパタゴニアのウェブサイト内のページに表示されます。


さらにブラック・フライデー当日には、パタゴニアのウェブサイト内のクリーネスト・ラインのページにその理由が掲載されてて(日本語ページもある)、そこにも詳しく企業としての意思が表明される。

前に T シャツのレヴューでも触れた通り、前からウェブサイトで創設者のイヴォン・シュイナード自ら「必要としていないシャツであれば、買わないでおくということ」なんて言ってるわけなんで、個人的には別に驚かなかったし、すごくパタゴニアらしいなって思ったんだけど、このタイミングとニュー・ヨーク・タイムズって媒体のセレクトはなかなかナイスだな、と。まぁ、こんなことをわざわざ言わなきゃいけない事態とか、こういう行動がちょっと奇異に思われるような状況自体が、そもそもよっぽど問題だと思うし、そういう意味ではすごくシニカルな状況だとも言えると思うけど(もちろん、こんなことをわざわざここに書いてることも含めて)。


* Related Post(s):

"180° SOUTH" クリス・マロイ 監督 Link(s): Previous review
パタゴニアの創業者のイヴォン・シュイナードとザ・ノース・フェイスの創業者のダグ・トンプキンスの 2 人が 1960 年代に行ったパタゴニア地方への旅を今、あらためてトレースしたドキュメンタリー。


イヴォン・シュイナード『社員をサーフィンに行かせよう』 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
パタゴニアの創業者のイヴォン・シュイナードがパタゴニアの企業理念やヴィジョンを綴った書籍。気が付けば、このブログではレヴューしてなかったんだけど(このブログを始める前に読んでたのかな? まぁ、そのうちあらためてレヴューしてみたいとは思ってるけど)、パタゴニアを知るにはもってこいの一冊。

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