2010/08/27

So beautiful. So hopeful.

ESPERANZA SPALDING "Chamber Music Society" (Heads Up) 
Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store

これまでにも何度か取り上げてる女性ジャズ・ベーシスト / シンガー、エスペランサ・スポルディングスのニュー・アルバム。通算 3 枚目ってことになるのかな? リリース前からすごく楽しみにしてた 1 枚なんだけど、期待を裏切らない出来映え。

スペイン語で「希望」という意味の名前を持つ彼女はバークレー出身で、大きなアフロ・ヘアで、大きなダブル・ベースを弾きながらジャズを歌う姿がメチャメチャ印象的なアーティスト。ルックスも歌声もメチャメチャチャーミング且つラヴリィで、前作の "Esperanza" をどこかでたまたま見つけて一目惚れして以来、最も好きな女性アーティストのひとりだったりする。新譜がこんなに楽しみだったの、スゲェ久しぶりだし。

前作 "Esperanza" では、彼女のチャーミングなヴォーカルを全面的にフィーチャーしつつ、ジャズをベースにしながらも、ラテン〜ブラジル・テイストを上手く消化した、(いい意味で)ポップで上質なフュージョンに仕上がってたけど、今作はもっと音楽的に深化したようなディープな印象。一応、事前に EPK(下にエンベッドした動画)を観てたんである程度は覚悟ができてたんだけど、思ってた以上にディープで、音楽的に、ある意味、アヴァンギャルドとも言えるような意欲作って印象かな。

プロダクション面での特徴としては、まず、ストリングス・トリオをフィーチャーして、クラシカルで壮大な世界観を展開してることがある。クラシカルな方法論を全面に導入して印象がアヴァンギャルドってのも変なハナシだけど、たぶん、今の時代の(広い意味での)ポップ・ミュージックに於いて、クラシカルって多分にアヴァンギャルドでもあると思うんで。あと、凝ったコーラス・ワークも印象的で、ジョビン・クラシックの "Inutil Paisagem" のカヴァーとか、ほぼヴォーカルだけで見事に美しい世界観を描き出してるし。

アルバムのハイライトは、やっぱりミルトン・ナシメントをフィーチャーした "Apple Blossom"。前作 "Esperanza" でミルトンの名曲 "Ponta De Areia" のラヴリィなカヴァーを披露してたけど、この曲では 'ブラジルの声' と言われる御大・ミルトン自身とデュエットしてて、なかなか味わい深い仕上がり。EPK でもレコーディング風景がちょっと紹介されてたけど、エスペランザのヴォーカルにミルトンがテキトーに(?)絡んでいくパートとか、なかなかいい感じで。

まぁ、ポップ・ミュージックとしての完成度で言ったら、前作 "Esperanza" のほうがポップって感は否めないけど、でも、前作でカタチになった方向性に安住することなく、意欲的に新たな可能性を求める姿勢はアーティストとして好感が持てる。それこそがジャズだと思うし、そういう意味では、すごく正しいジャズ・ミュージシャンとしての姿勢だとも言えるかな。あと、一番大事なのは、それが姿勢やコンセプト等だけが先行して頭デッカチになるんじゃなく、作品としてキチンと完成度が高いこと。これって、なかなかできることじゃないから。しかも、まだ 25 歳。まさに才色兼備で末恐ろしいアーティストだなぁ、とあらためて強く感じさせてくれるし、今後も繰り返し聴くことになる予感がメチャメチャしてる。秋〜冬辺りの季節にハマりそうだし。

ちなみに、来年の春にはこのアルバムと対を成す(?)ようなアルバム "Radio Music Society" がリリース予定で、よりファンキーなサウンドなんだとか。それはそれですごく楽しみ。


ESPERANZA SPALDING "Chamber Music Society" EPK

SO LOVELY

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