2012/04/02

Run Free. Run further. Run forever.

MICAH TRUE a. k. a. 'CABALLO BLANCO' (November, 1954 – April 1, 2012) - R. I. P.

前にレヴューした傑作『BORN TO RUN 走るために生まれた』でメイン・キャラクターの 1 人として取り上げられてたランナーで、ウルトラマラソンの先駆者でありベアフット・ランニングの伝導者としても知られる 'カバーヨ・ブランコ(CABALLO BLANCO)' ことミカ・トゥルー(MICAH TRUE)の訃報が伝えられた。享年 58 歳。

カバーヨ・ブランコは火曜日にランニングに出かけたまま戻らず、翌日から『BORN TO RUN』の著者のクリストファー・マクドゥーガル(CHRISTOPHER McDOUGALL)等のヴォランティアを含めた多くの人々が捜索に当たったものの、ニュー・メキシコ南西部の荒野で発見されたのは土曜日になってからで、既に死亡していたとのこと。詳しい死因等はまだわかってないっぽい。特別な目的ではなく、ごく日常的なランニングに出かけただけだったんだとか。行方不明になったってニュースを知ったときから、心配しつつもどっかで「ひょっこり帰ってこねぇかなぁ」って祈ってたんだけど。

カバーヨ・ブランコは 1954 年コロラド州ボルダー出身で、英語でカッパー・キャニオン(Copper Canyon)と呼ばれるメキシコのチワワ州にあるバランカ・デル・コブレ(Barranca del Cobre / 銅峡谷)でカッパー・キャニオン・ウルトラマラソン(Copper Canyon Ultramarathon)を開催したことで知られる人物。このバランカ・デル・コブレはタラウマラ山脈の 6 つの峡谷からなる峡谷地帯で、タラウマラ(Tamahumara)族の伝統的な居住地でもあることが、'史上最強の走る民族' と言われるタラウマラ族につながる部分で、ここでのタラウマラ族の '走りの秘密' をめぐるエピソード『BORN TO RUN』の主題(のひとつ)になり、それがウルトラマラソンとベアフット・ランニングにもつながった、と。ちなみに、'カバーヨ・ブランコ(caballo blanco)' ってのはスペイン語で '白馬' って意味なんだとか。

ご多分に漏れず、カバーヨ・ブランコのことを知ったのは『BORN TO RUN』でだったし、NHK スペシャルの『人は走るために生まれた メキシコ山岳民族・驚異の持久力』(Links: Amzn / Rktn)も観たいと思いつつまだ観れてない(カバーヨ・ブランコが出てるのかもわからないし)んで、全然詳しいわけじゃないんだけど。『BORN TO RUN』を読んだ後に YouTube でいくつか動画を観たくらいで。

以下はそのうちのひとつで、カバーヨ・ブランコのトークが約 30 分観れる。



映像を観たときの印象は、正直、何とも言えない感じだったかな。贅肉が全然ないスキンヘッドって風貌の白人って、何とも言えない威圧感があるんで。達観した仙人のようでもあるけど、なんか小難しくて頑固そうにも見えたりして。まぁ、話してるときの表情とか語り口とかは基本的にすごくナイスだし、何の問題もないんだけど。

CABALLO BLANCO (1954 –2012)
まぁ、カバーヨ・ブランコがいなければ『BORN TO RUN』はなかっただろうし、『BORN TO RUN』がなければ(少なくとも今のようなカタチで)日本でベアフット・ランニングが広まってなかったって言っても過言ではないんじゃないかな。個人的にも、ランニング・シューズをクッション入りのシューズからナイキ・フリーに変えて、ランニング・フォームの変更に取り組むようになったのは『BORN TO RUN』の影響だし。たぶん、そういう人は世界中にいるはず。これだけ情報化が進んで社会では、たった 1 人の個人がいなかっただけで、ひとつの情報が世界に伝わらなかったり、ひとつのカルチャーが存在しなかったなんてことはなかなかないと思うけど、ここ数年のベアフット・ランニングとカバーヨ・ブランコの関係性はその希有な例外って言えるんじゃないかなって思っちゃうくらい。それくらい功績は大きい。

具体的に何が直接的な死因になったのかわからないんで何とも言えないけど、死ぬまで走ってたってのは、ある意味、象徴的だったのかな。前に奥多摩に行ったときに聞いたハナシを思い出したりして。何年か前に奥多摩で熊に襲われて亡くなった人がいるんだけど、その人は奥多摩在住の登山家で、海外の山なんかもたくさん登ってる、かなり熟練した強者だったんだんだとか。こういう、自然の中での事故死のニュースがあると、とかく「自然を甘く見過ぎだ」的な論調が出てきがちだったりするけど、実際は、どんなに熟練した強者でもビギナーでも死ぬときは死ぬし、助かるときは助かるわけで。もちろん、体力・技術・知識なんかで確率に違いが出るのは間違いないけど、でも、どれだけ熟練してても 100% なんて絶対にないわけで。カバーヨ・ブランコくらいの、ウルトラランナー中のウルトラランナーでも、死ぬときはやっぱり死ぬんだな、と。もちろん、すごく悲しいニュースであることは間違いないけど、でも、すごくカバーヨ・ブランコらしい最期だったのかなとも思えてくる。ちょっとありきたりだけど。まぁ、'Rest in peace.' っつうか、'Run in peace.' って感じかな。永遠に走ってそうだし。

"New York Times" の記事にカバーヨ・ブランコが 1 月に Facebook に書いてたってコメントが引用されてて、これがまるでラスト・メッセージみたいな内容だったんで、ソースを探してみたらみつかった。"New York Times" の記事で引用されてるのは一部なんだけど以下は全文(カッパー・キャニオン・ウルトラマラソンの Facebook ページより)。

Caballo Blanco is no hero. Not a great anything. Just a Horse of a little different color, dancing to the beat of a peaceful drum, and wanting to help make a little difference in some lives. If i were to be remembered for anything at all, I would want that to be that I am/was authentic. No Mas. Run Free!

読んでの通り、ちょっと出来過ぎな感じがしちゃうくらいメチャメチャカッコイイこと言ってやがる。2 ヶ月以上前のコメントなんで、当然、自らの死を想定してたわけじゃないはずなんだけど。


'CABALLO BLANCO' (November, 1954 – April 1, 2012) - Run in peace.  


* Related Post(s):

『BORN TO RUN 走るために生まれた』 クリストファー・マクドゥーガル 著
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史上最強の '走る民族' と言われるタラウマラ族について、ランニング・シューズと人間の足の関係、タラウマラ族とウルトラランナーのレースが交錯する最新ランナーズ・バイブル。カバーヨ・ブランコが重要なキャラクターとしてフィーチャーされてる。

『なぜ人は走るのか』トル・ゴタス 著
 Link(s): Previous review
民俗学と文化史を専門にしているというノルウェー人の作家による著作で、サブ・タイトルに 'ランニングの人類史' って付いてる通り、人類と走ることの歴史について綴ったモノ

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