2011/07/30

Life as travel. Travel as life.

"180° SOUTH" クリス・マロイ 監督(キングレコード) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray)

かなり前にジャック・ジョンソン(JACK JOHNSON)主宰のレーベル、ブラッシュファイア(Brushfire)からリリースされたサウンドトラックをレヴューしてた映画『180° South(ワン・エイティ・サウス) 』。劇場公開時に観ててレヴューし忘れてたんだけど、DVD がリリースされてたんで。DVD はまだ観てないんだけど、でも、また観たい、っつうか、いつでも観れるように持っていたいって思える映画なんで。まぁ、個人的には、DVD ってメディアはキライなんで、できれば iTunes Store で販売・レンタルしてもらえたほうがいいんだけど(現時点では iTunes Store にはないらしい)。

映画は、パタゴニア(Patagonia)の創業者のイヴォン・シュイナード(YVON CHOUINARD)とザ・ノース・フェイス(The North Face)の創業者のダグ・トンプキンス(DOUGLAS TOMPKINS)の 2 人が 1960 年代(つまり、それぞれのブランドを始める前)に行ったパタゴニア地方への旅を今、あらためてトレースしたドキュメンタリーで、サーフ・ドキュメンタリーの傑作 "Thicker Than Water"(Link: Amazon.co.jp)で知られるクリス・マロイ(CHRIS MALLOY)が監督を務めてる。

内容は、イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスが 1968 年に体験した人生最高の旅を収めた映像を見つけたジ­ェフ・ジョンソンという現代の冒険家が、イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスの旅を 2008 年に追体験するというドキュメンタリー(まぁ、厳密に同じルートをトレースしてるわけじゃないんだけど。ルートはオフィシャル・サイト内で紹介されてる)。タイトルは「2 人の人生を 180° 変えた旅」って意味とのことで、サブ・タイトルには 'conquerors of the useless' って付いてる。発見された古い映像と追体験の旅の新しい映像が混ぜながら進んでいく構成で、イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスのインタヴューも収録されてる。2010 年の作品で、日本では今年の 1 月に劇場公開された。以下は日本版のトレーラー。



基本的には、旅や自然、サーフィン、トレッキングを讃えながら環境やライフスタイルの本質についての示唆を影響するような内容で、パタゴニア地方だけでなく、その途中で立ち寄る場所でのさまざまな出会いや交流、発見等をわりと淡々と、美しい映像で表現したモノ。まぁ、想像できる通り、映像はバッチリ美しい。ジ­ェフ・ジョンソンはパタゴニアだけじゃなくて、ガラパゴス諸島とかイースター島まで行ってやがるし、これでもかっつうくらいサーフィンしてやがるし。これだけでも十分観る価値があるし、持っていたいと思わせる部分だったりする。それくらい美しい映像がテンコ盛り。


とは言いつつも、もちろん、ただの雄大な自然映像集ではなくて、そこにはキチンとメッセージが込められてる。サブ・タイトルに 'conquerors of the useless' って付いてるくらいで。まぁ、イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスなんで、基本的には「どう生きていくか」的なライフスタイルのハナシ、そして、そこからのつながりで、具体的には環境の問題になってるんだけど、個人的にツボだったのはイヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスのインタヴュー部分。特にダグ・トンプキンスかな。これまでにも、わりとイヴォン・シュイナードについてはいろいろ本とか雑誌とかでフォローしてたんで、それほどサプライズはなかったんだけど、ダグ・トンプキンスはそれほどチェックしてなかったんで。イヴォン・シュイナードとの関係なんかも全然知らなかったし。

それは、内容をバラさない程度に一言で言っちゃえば、2 人のアプローチの違い。イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスはそれぞれ似たような時期にアウトドア・ブランドを始め(パタゴニアは 1972 年でザ・ノース・フェイスは 1968 年)、ブランドの設立以来、常に環境問題に意識的であり続けて、いろいろな活動を行ってきてるんだけど、具体的に採ってるアプローチが真反対だって言えるくらい違ってて。それがパタゴニアとザ・ノース・フェイスの企業としての在り方の違いにも反映されてるし。

イヴォン・シュイナードは、『社員をサーフィンに行かせよう ー パタゴニア創業者の経営論』(Link: Amzn)なんて本も出してるくらいなんで(これは名著。このブログを始める前に読んじゃってたからレヴューしてないけど。でも、そのうち、ちゃんとレヴューしといたほうがいいな)、一般的にもわりとラディカルな企業家・経営者なんだと思うけど、ダグ・トンプキンスのほうが全然ラディカルでブッ飛んでるじゃん! って感じで。前に展覧会が開催された「DO MORE WITH LESS 40 Years of the North Face」に併せて出版されたTHE EARTH BOOK』って本はあったけど、ザ・ノース・フェイスはパタゴニアに比べてそういうスタンスをあまり表に出してないから、それほど強い印象はなかったんだけど。別にどちらが正しいとか間違ってるとかってハナシではなく、どっちも一理あるし、すごく面白い。ホントに、ただ、アプローチの仕方が違うだけで。対照的でありながら、でも、お互いに(相容れない部分もありつつも?)認め合ってる感じもいいし。

他にも、イヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスの昔の旅の映像もなかなか味わい深いし、ジ­ェフ・ジョンソンの旅の風景やら出会いやらもかなりいい感じだし、ジ­ェフ・ジョンソンの旅に一部同行しちゃうイヴォン・シュイナードもいい味出してるし、かなり観応えがある。

まぁ、個人的には、特に最近、表現・エンターテイメント・興行としての映画の在り方自体にわりと疑問があるっていうか、あまりシックリきてないところがあったりして、昔に比べてそれほど映画を観てるわけじゃないから、映画作品としての比較とかは全然できない感じなんだけど、普通に映像コンテンツとしてすごく面白い。あと、劇場で観たのは 1 月だったんで、A311 の今、あらためて観てみると、感じ方も違ったりするのかな、とも思ったりして。早く iTunes Store でもリリースしてくれないかな。

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