2008/01/10

Clad in the sky, with the earth for a pillow.

『惑星の未来を想像する者たちへ
 
ゲーリー・スナイダー 著 山里 勝己・赤嶺 玲子・田中 泰賢 訳
(山と溪谷社) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

ニール・キャサディがジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』(『路上』)で実質的な主人公格のキャラクター、ディーンのモデルとなったように、同じケルアックの『ザ・ダルマ・バムズ』でジャフィーのモデルとなったことで知られるゲーリー・スナイダー。若い頃にビート・ジェネレーションの流れの中でビートニクスのひとりとして出会ってたけど、ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズといった主要人物に比べるといまひとつ印象が薄くて、当時はあまり気にならない存在だったけど、今に(この年齢に)なってみると他の誰よりも気になる存在になってる。ちょっと不思議でもあり、とても幸せな再会。

ケルアック、ギンズバーグ、バロウズら、多くのビートニクスが激しく、早急に人生を駆け抜けた印象なのに対して(若いうちはそういう生き方のほうがグッとくる)、スナイダーは静かに、でも力強く、一貫した姿勢を貫く創作活動とライフスタイル。自分が年齢を重ねてみると、こういう生き方のほうがインスピレーションを受けるし、いわゆるビートニクスが 50 〜 60 年代のアメリカを反映したカルチャー、過去のある時点を映し出したカルチャーだった(つまり追体験しかできなかった)のに対して、ビートニクス〜ヒッピー的な流れを汲んだネイチャー・ライティングとかディープ・エコロジーとかって言葉で語られるスナイダーの活動は追体験から始まりつつも今現在にキチンとつながってて、今の生活の中でもメチャメチャリアルに感じられる。


この『惑星の未来を想像する者たちへ』は彼の最近の、21 世紀以降に向けた考え方がまとめられたエッセイ集で、禅やネィティブ・アメリカンの土着の思想、コスモポリタニズムなどをベースに育まれた彼の思想がまとめられている。さまざまな叡智を活かしながら自然と共生していくライフスタイルを提唱し、実践してる彼の思想は、決してエコとかロハスとかみたいになんかウサン臭い感じでもなく、やたらと説教臭いわけでもなく、静かで、でもすごく力強い、実践を伴ってて、すごくインスピレーションに富んでる。ホクレア号だったりパタゴニアだったり『地球交響曲』だったり川勝平太氏だったり、最近気になって考えたり勉強しているいろいろなモノに、直接つながってるわけじゃないっぽいけど、強くつながってる気がする。それこそ、いろいろな考え方やアイデアのハブとか、ウェブ状につながる知やアイデアのネットワークのイメージ。こういう感覚を感じることはめったにないけど、すごく快感。

惑星の未来を想像する者たちへ』の中で引っかかった部分はたくさんあるけど、特に気になっているのは「最定住(reinhabitation)」って考え方。ノマディックな生き方にすごく魅かれる反面、本当に大切なモノは 'inhabitation' から生まれるって側面もすごく強く感じてて、その「定住地」すら持ってない(持ててない / 持てない)現状にすごくストレスを感じてるんで、すごく引っかかってる。

あと、もうひとつ「空を衣装に、大地を枕に。(Clad in the sky, with the earth for a pillow.)」って言葉。原文は Amazon の Search Inside のおかげで見つかったんだけど、この言葉にもすごく引っかかってる。

今後も、ことあるごとに何度も読み返しそうな予感バリバリな 1 冊。

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