2008/01/30

Total communication.

PEACE BED アメリカ vs ジョン・レノン

. :デビッド・リーフ / ジョン・シャインフェルド 監督 ★★★☆

遅ればせながら観てきました、『PEACE BED アメリカ vs ジョン・レノン』(The U. S. vs John Lennon)。六本木ヒルズで上映されてるのがなんとなくイヤな感じで、行けてなかったんだけど(六本木ヒルズでジョン・レノンとか、違和感あり過ぎじゃね?)、吉祥寺のバウスシアターで演ってるとなれば俄然行く気にもなるってもんで。

映画自体は、ビートルズ後期〜グリーンカード取得までの、アメリカ政府によるジョンへの圧力を、当時のフィルム、その後に公開された FBI のいわゆる「レノン・ファイル」、関係者のインタビューで構成して描いたドキュメンタリーなんだけど、なんつったってジョン・レノンだからとにかく観とかなきゃ、なんて半分義務感(?)で観たんだけど、思いのほか面白かった。

その理由のひとつは、実はイマイチイメージが掴みにくかったテーマを、すごくリアリティのあるカタチでまとめてくれたドキュメンタリーだったってこと。なんとなく、「平和活動に傾倒して、アメリカ政府から盗聴されたりしてて大変だった」ってことは知ってたけど、その辺の「なんかサクッと流しちゃってた」部分を生々しく描いてくれてる。

あの頃=ベトナム戦争のアメリカ(特にニクソン政権)の酷さは今更言うまでもないけど、日本で、しかも追体験だとどうしても端折られがちな部分だし、イメージしにくかったから。

で、あらためて感じたのは、ジョンのメッセージの伝え方の上手さ。シンプルで、パワフルで、ユーモラスで。ヨーコさんが「それまでの平和活動家はインテリで、弱っちくて、読む気もしない小難しい冊子を配ってただけ」みたいなことを言ってたけど、まさにそういうこと。メッセージの伝え方に関するインスピレーションに満ちてる。バギズムで「トータル・コミュニケーション」なんて言ってたけど、ホントに今=インターネット時代に生きてたらどんなメディアの使い方をしたんだろう、って考えるだけでもすごく面白いし、そう考えることで、ヨーコさんの言ってた通り「ジョンは生きてる」ってことになるんだろう、なんて思ったりもした。

このドキュメンタリーがよかったもうひとつの理由は、映像作品としての質の高さ。過去の映像と過去の音源とインタビューしか素材がないにも関わらず、そういう制約を全然感じさせないのは構成と編集の素晴らしさ以外の何ものでもない。音と映像が有機的にシンクロしてるって意味では、本当の意味で AUDIOVISUAL だし、そこに歌詞の意味までシンクロしてる。すごくレベルが高いし、メチャメチャクリエイティヴ。映像作品としての質の高さは、日本の映像作家にも見習って欲しいもんだ(映画に限らず)。

ちなみに、アメリカ版のポスターと日本版のポスターの違いも比較すると面白い。片や既存の写真をそのまま使ってる日本版(すごくいい写真だけど)。片や「これだけで成立しちゃうの?」って感じのヒネリのあるクリエイティヴを見せるアメリカ版。この辺もレベルの違いかな。

0 comment(s)::