2008/11/24

An aloha lifestyle.

Coyote No.12 特集 ジェリー・ロペスの静かな暮らし 
(スイッチ・パブリッシング ★

2006 年発行で、発売当時に読んだ号だけど、今年出版されたジェリー・ロペスの著書『サーフリアライゼーション』を読むに際して、読み直したのであらためてレビューを。

取材が行われたのは、現在、彼が住むオレゴン州のベンドという街。オレゴン州は太平洋に接しているけど、ベンドはカスケード山脈を越えた東側にある。つまり、ハワイアンであり、伝説的なサーファーであるジェリーが海のないセントラル・オレゴンに住んでるってこと。それだけでも十分興味深い。もともとは奥さんが気に入った土地らしいけど、今ではスノーボードを楽しみつつ、時にはカスケード山脈を越えて海に出たり、川でリバー・サーフィンをしたりしてるらしい(ジャック・ジョンソンのミュージック・ビデオにも使われてる場所なんだとか)。


 メインとなるのは、ベンドの街でジェリーとともに過ごしながら行われた長いインタビュー記事。両親のことや家族のこと、ハワイのこと、ベンドのこと等、いろいろなことを語っているそのインタビューの中で、「サーフィンの魅力は何ですか?」というストレートな質問に対してジェリーは「待つことにある」と答えてるのがとても印象的だった。曰く、「サーフィンの本質は 99%、待つことにある。そして自分と対峙することかもしれない」「待つことは禅に似ている。人は荒立っていたら待ってはいられない。内なる平安がないと待ってはいられない」と。

チューブ・ライディングとショートボードのオリジネーターのひとりとして「ミスター・パイプライン」と呼ばれてたり、サーフィン・ムービーのクラシック『ビッグ・ウェンズデー』に本人役で出演してたり、シェイパーとして革新的なサーフボードを数多く世に送り出してたり、サーフ・トリップの先駆者だったり、パタゴニアのサーフィン・アンバサダーだったり、いろいろな功績を残してきたジェリーだけど、一番の功績は文化的な面、ライフスタイルの面なのかな、と。この特集を読んで、あらためてそう思った。

そのライフスタイルとは、サーフィンの進化を体現しながら学んだことを、ヨガやアロハ・スピリットとブレンドしたようなそのナチュラルで穏やかなライフスタイル。とても魅力的だし、インスピレーションに溢れてる。ちなみに、アロハの概念は「与えるということは全く見返りを期待しないということ」「ハワイアンにとっては与えることは彼らの存在全体の重要な部分だった」とか。この辺もすごく面白いし、もっと掘ってみたいジャンル。しかも、ジェリーの母は日系 3 世だったりするし、ハワイの日系人とハワイの文化の関係ももっと知りたい部分だったりするんで
(そして、ジェリーの考えに日本文化の影響があるのかについても)、そういう意味でもジェリー・ロペスの体現してるライフスタイルはとても興味深い。

他にも、彼の書いた文章が幾つか掲載されてたり(
サーフリアライゼーション』に掲載されてるものとダブってるけど、こちらに掲載されてるものは片岡義男訳)、ジェリーと親交が深くサーフリアライゼーション』の訳者のひとりでもあるマウイ在住の岡崎友子の原稿、旧知の仲であるサーファーのレアード・ハミルトンのインタビューなど、読み応えは十分。素晴らしい写真も多いし。

ちなみに、ジェリーは基本的に 1 日 1 食だとか。常々、現代人は過剰に食料を消費しすぎてるって感じてただけに、妙に腑に落ちた。自分もそうなんで。

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