2009/08/29

The century in motion.

NHK スペシャル 映像の世紀(NHKエンタープライズ)  

昨日のエントリーでレヴューした『ヨーロッパの 100 年』を読む上で、ベースというか、基礎知識のひとつ(しかも、かなり重要な)になったのが、この NHK スペシャルの『映像の世紀』ってシリーズ。もちろん、完全に同じ部分をカバーしてるわけではないんだけど、すごく参考になる。前から、ことあるごとに観てたんだけど、今回も、『ヨーロッパの 100 年』を読むに当たって、やっぱり観直したんで、あらためてレヴューを。

この
映像の世紀』は 1995 年 3 月から 1996 年 2 月までの 1 年間をかけて OA された NHK 放送開始 70 周年を記念したドキュメンタリー番組で、NHK とアメリカ・ABC との国際共同取材で制作された NHK スペシャルのシリーズ。もう 10 年以上前の作品だし、20 世紀全体を扱っていながら、OA 時期の関係で 20 世紀の最後の 5 年をカバーしてなかったりはするんだけど、まぁ、その点を差し引いても、今でも十分観るに値する内容で、さすがは NHK スペシャルって感じの仕上がり。上の写真とリンク先は、後に発売された DVD ボックスで、こういう形態での売り方自体には疑問を感じなくもないけど、そこに目をつぶれば、こういうカタチでキチンと手に入って、観れるってこと自体は悪いことじゃないなって思う。

内容的には、20 世紀全体を映像で振り返るっていう企画で、世界 30 カ国以上に残されてた映像アーカイヴから選りすぐった貴重な映像がふんだんに使われてる。しかも、そもそも「映像」って記録形態が人類にもたらされたのがまさに 1900 年頃(厳密には 1895 年)だったから、20 世紀ってのは「歴史上初めて映像で記録された世紀」ってことになるわけで、当然、20 世紀の歴史を振り返ってるとともに、映像の歴史を振り返ってるような内容でもあったりする。

内容は全 11 章構成で、各章のタイトルは以下の通り。
  1. 20 世紀の幕開け - カメラは歴史の断片をとらえ始めた
  2. 大量殺戮の完成 - 塹壕の兵士たちは凄まじい兵器の出現を見た
  3. それはマンハッタンから始まった - 噴き出した大衆社会の欲望が時代を動かした
  4. ヒトラーの野望 - 人々は民族の復興を掲げたナチス・ドイツに未来を託した
  5. 世界は地獄を見た - 無差別爆撃、ホロコースト、そして原爆
  6. 独立の旗の下に - 祖国統一に向けて、アジアは苦難の道を歩んだ
  7. 勝者の世界分割 - 東西の冷戦はヤルタ会談から始まった
  8. 恐怖の中の平和 - 東西の首脳は最終兵器・核を背負って対峙した
  9. ベトナムの衝撃 - アメリカ社会が揺らぎ始めた
  10. 民族の悲劇果てしなく - 絶え間ない戦火、さまよう民の慟哭があった
  11. JAPAN - 世界が見た明治・大正・昭和

まぁ、内容はタイトルとサブ・タイトルの通り。大雑把に言っちゃうと、1 章が第一次世界大戦前、2 章が第一次世界大戦、3 章が第一次世界大戦後と大恐慌、4 章が大恐慌後から第二次世界大戦への流れ、5 章が第二次世界大戦、6 章が第二次世界大戦後の世界各地の植民地の独立運動、7 章が第二次世界大戦後の世界情勢、8 章が冷戦、9 章がベトナム戦争、10 章が冷戦崩壊後の民族紛争、11 章が映像に残った日本って感じかな。それぞれ、大まかには時代の流れに沿いながらも、それに固執しすぎることなく、多少前後したりダブったりする部分はありつつも、ある程度、テーマごとにまとめる感じの構成になってる(11 章だけはちょっと違う切り口だけど)。『ヨーロッパの 100 年』と「完全に同じ部分をカバーしてるわけではない」って書いたのは、どちらも同じ時代に焦点を当てていながら、『ヨーロッパの 100 年』が、そのタイトル通り、ヨーロッパって地域に限定してるのに対して、この映像の世紀』は、特に地域を限定はしていないから。当たり前だけど、世界中の出来事を撮影した映像を紹介してる。ただ、やっぱりヨーロッパを舞台にした出来事が多いのも事実で、そういう意味では、わりとダブる部分が多くて、だから参考になるんだけど。

あと、各章のテーマごとに、キチンとその背景部分から触れてくれる(例えば、9 章のテーマはベトナム戦争だけど、第二次大戦前に日本軍が占領する前のベトナムがどういう状態だったかから説明してくれる感じ)んで、あまり知らないテーマでも、比較的理解しやすかったりするかな。世界史の基礎知識が不足してる人間にとってはありがたい限り。

ただ、どちらかというと、政治的な歴史に比重を置いてるっていうか、まぁ、言っちまえば、あんまり楽しくない内容というか、見ててツラくなる部分が多かったりもする。やろうと思えば、もうちょっと楽しい部分に触れることもできなかったわけじゃないと思うけど、まぁ、でも、客観的に考えると、こうせざるを得ないっていうか、こういう時代だったってことなのかも、とも思わざるを得ない面もある。

ヨーロッパの 100 年』を読んだときにも感じたけど、第二次世界大戦〜太平洋戦争以前と以後で印象が違うっていうか、自分からの距離感みたいなモノに大きな隔たりがあった気がしてたんだけど、やっぱり、こういうモノを通して観てみると、歴史は間違いなくつながってるって感じるし、あと、時間軸だけじゃなくて、横のつながりというか、世界各地のつながりみたいなのも感じられる。こういう感覚って、日本史とか世界史の授業、特に大学受験を目的にした授業では感じにくい(感じられない?)ことだけど、やっぱりもっとちゃんと勉強しておけばよかったなぁ、なんて思ったりもする。

ホントは個別に 1 章ずつレビューしても全然できちゃうような内容ではある。まぁ、それをやると異常に長くなっちゃうんでやめとくけど。個人的には、あまり知らなかったこともあって、前半部分というか、第二次世界大戦以前の部分のほうが面白かったというか、インパクトは強かったかな(もちろん、キング牧師の演説とか何度聞いても泣きそうになるし、ベトナム戦争とか、映像が鮮明になってるだけにインパクトも強いんだけど)。もちろん、映像の画質自体はヒドいんだけど、そういうこととは別の次元で、やっぱメチャメチャインパクトはあるな、と。ロシア革命当時のロシアとか、第一次世界大戦とか、大恐慌とか。20 世紀って時代がどれだけドラマチックだったかがよくわかる(良くも悪くも)。

ただ、基礎知識があったほうが理解が深まるのも事実で、映像は所詮映像って側面があることも否めない。前に『終戦のローレライ』のレヴューでもちょっと書いたけど、個人的には、映像を過大評価するのはちょっと危険だと思ってて。もちろん、映像でなきゃ伝わらないこととか、映像だとより伝わりやすい情報があるのは間違いないけど、同時に、映像で何でも伝わるわけではないっていうか。でも、わかった気になっちゃっうのはどうかな、と。つい、わかった気になっちゃいがちだけど。でも、映像が伝えられるのはフレームの中だけなわけで。あと、映像は観る側に時間の流れというか、シークエンスをコントロールさせてくれないって側面もあるし。もちろん、事実を事実として伝えるためには、リアルタイムであること、つまり 3 分の出来事を 3 分で見せることは大事だけど、その情報を理解したり、整理したり、味わったりする余韻が欲しかったりするときに、映像って実は不親切だって思ってて。例えば、本だったら読むスピードを自分でコントロールしても不自然じゃないけど、映像だとそうもいかなくて、ドンドン進んじゃうから。DVD とかビデオでひとりで観てるなら一時停止したり巻き戻したりもできるけど(それはそれで、流れというか、グルーヴ的には微妙なんだけど)、必ずしもそうできるわけじゃないし。もちろん、構成とか編集とかである程度は調整できる(すべき)部分だけど、でも、その結果、最大公約数的にならざるを得なかったりもするし。

まぁ、これは別にこの映像の世紀』の問題ではなくて、「映像」ってメディア自体の持つ特性であり、問題であり、限界なんだと思うけど(最近、すごく気になってる部分だったりするんで、ちょっと過敏になっちゃう)。同じように印刷物、もっと細かく分ければ、写真(=静止画)には写真の、文章には文章の特性も問題も限界もあるわけで。

まぁ、そういう側面があることは留意しつつも、少なくとも、「映像」って形態の作品として考えれば、極上の部類に入ると思うし、クラシ
ックであることは間違いない。予備知識なしにこれを導入とか入門としても理解できないほど難しくないし、でも、本とかで得た情報とか知識の補足としても十分役立つくらいの奥行きもあるし。実際、今回、ヨーロッパの 100 年』を読んでるときに観直したら、今まで特に気にならなかったというか、スルーしちゃってたところが引っかかってきたりもしたし。やっぱり、なかなか奥深いし、クオリティは高いなって再認識した感じかな。

1 comment(s)::

K2HG said...

本編が、映像という技術がリュミエールによって
生み出されるところから始まってるだけあって、
映像という表現そのものについて
再考させる番組でもあるね。
ノイズが入った無声フィルムですら、
記録としての力は、洗脳されかねないほどの力がある。
と同時に、この100年のテクノロジーの進化には
驚かされるものがあるのも確か。