2010/10/06

Alone together.

孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生
 
ロバート・D・パットナム 著 柴内康文 訳 柏書房
 Link(s): Amazon.co.jp 

けっこう前に読んでてレヴューし忘れてたんだけど、わりと興味深かった一冊。まぁ、700 ページ近くあるヴォリュームも、価格もなかなかヘヴィーなんだけど、内容も負けず劣らずなかなかヘヴィー。基本的にはアメリカの話だけど、日本人にとっても笑えない話だし。

原書は 2001 年に出版された "Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community" で、訳書も含めてまずタイトルに
かれちゃう。'Bowling Alone / 孤独なボウリング' ってなかなか秀逸なタイトル。一瞬、ちょっと違和感があって、でも、内容をキチンと示唆していて。まぁ、ご多分に漏れず、あまり基礎知識もなく、タイトルに魅かれて読んだんだけど。

内容的には、「米国コミュニティの崩壊と再生」という
サブ・タイトルの通り、現代のアメリカ社会でのコミュニティの崩壊について、その時期・背景・理由等を膨大な調査とデータを用いて分析したモノ。著者はハーバード大学の教授。経済行為に関わる '物的資本' や高等教育に関わる '人的資本' と並ぶ豊かな社会形成に不可欠な '財' である '社会関係資本' について述べられていて、著者は '社会関係資本' 論の第一人者なんだとか。

'社会関係資本' ってのは豊かな社会形成のために不可欠な、金銭的な見返りなどを求めない自発的なコミュニティの結成・参加から生まれる社会的な '絆' みたいなモノのこと。近代アメリカ社会でのデータがベースに分析されてるんだけど、まぁ、個人的には、リアリティを持って感じられるかっていうと、ちょっと微妙だったりする。自分がリアリティを感じられるアメリカって、やっぱり 1980 年代以降だったりするし、そもそも、日本人に伝わってくるのは '本物のアメリカ' ではなかったりするし。わりと馴染みのある NYC とか LA とか SF とかって、実は全然 '本物のアメリカ' じゃないから。そういう意味では、ここに書かれているのは、ある意味で、日本人があまり知ることができない '本物のアメリカ' のデータって言えるのかもしれないなぁ、って思ったりもする。

それでも、わりと興味深く読めたのは、リアリティを感じられない反面、自分(≒日本)と決して無関係な話じゃなく思えるからだったりもするんだけど。そもそも、「豊かな社会形成のために不可欠な、金銭的な見返りなどを求めない自発的なコミュニティの結成・参加から生まれる社会的な '絆' みたいなモノ」ってどんなものなのか、日本にもある(あった)モノなのかもイマイチ実感を持てないし。ただ、逆に、だからこそそういうモノの必要性を自覚してきてる気もするし、実際にそういうトライもしてるし、デジタル・コミュニケーション・ツール / ネットワークを活かした別のカタチのモノも可能な気もする。まぁ、「昔と比べて今は全然ダメ!」って絶望する気もないし、「デジタルのネットワークが新しいコミュニティを作るから大丈夫!」って手放しに楽観する気もないけど。危機感半分、期待感半分って感じかな。それくらいが正常だと思うし。

まぁ、この辺のハナシって、今、そしてこれからすごく大切なテーマになると思うし、特にいろいろな意味で実験的な国家であるアメリカの動きは、これまでも、これからもひとつのサンプルとして面白いし、資料としてもすごく貴重であることは間違いない。
Bristol rules..

0 comment(s)::