『越境するトポス』 野田 研一・結城 正美 編 (彩流社) ★★★☆☆
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「環境文学論序説」なんて小難しいサブ・タイトルが付いているのでなかなか取っ付きにくい印象で、実際に中身を見たらその印象通りの一冊だけど、内容的にはなかなか興味深いので頑張って読んでみた。
タイトルだけでは何のこっちゃわかりにくいんだけど、ネイチャー・ライティングに関する論考を集めたもので、個人的な興味としてはその中で触れられている宮沢賢治とゲイリー・スナイダー、ジョン・ミューア辺り。あと、イマイチ全体像がつかみにくいネイチャー・ライティング自体についてを知るって意味でも、なかなか勉強にはなったかな、と。
曰く、ネイチャー・ライティングとは「人間と自然との関係を前景化する言語表象行為」で、「人間と自然という、私たち自身が踏襲してきた二項対立のパラダイムを根源から再考すること、つまり人間と自然との関係性の多様な意味を解きほぐし、それを再定位することが試みられている」ということらしい。
特徴としてよく使われる言葉は「場所の感覚(sense of place)」。アメリカ人のウォレス・ステグナーの言う「侵略と移動をやめ、落ちついた時を得て、所有の感覚ではなく帰属の感覚を持ったときに、この国と社会は健康なものになりうる」という感覚。ケルアックの『オン・ザ・ロード』に代表されるような、移動という行為が生み出すダイナミズムみたいなものとはかけ離れた、動きのない地味にモノと思われがちな、でも実はとても地に足の着いた、サステイナブルなライフスタイルを示唆する文学として、とても興味深いな、と。
この文脈の中で藤原新也やジョージア・オキーフなんかも取り上げられてるところは興味深いし、グローバリズムの権化と思われるマクドナルドのフライドポテトは生態地域的な意識の中から生まれたなんてエピソードは、物事を表面だけ単純に見ちゃいけないっていうことを物語ってて面白い。
ただ、やっぱ、この手の本って、読みにくいし、つまらん。なんでなんだろ? 面白いテーマなのに、全然面白そうに書いてないのは。まぁ、学術論文っぽい、って言えばそうなんだろうけど、とりあえず、エンターテインメントととしては成立してないよなぁ。タイトルとか装丁デザインも含めて。「トポス」って言われても…。ちょっと別の能力の問題なんだろうけど、この辺はもっと考えたほうがいい部分。すごくもったいない。
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