2008/02/10

Truth is more interesting than fiction.

地球(ガイア)のささやき
:龍村 仁 著(角川ソフィア文庫
 

映画『地球交響曲(ガイア・シンフォニー)』の監督として知られる龍村仁氏が '95 年に出したエッセイ集。時期的には、『地球交響曲』の第一番〜第三番(厳密には第四番をつくりはじめる頃)に書かれたものをまとめたもので、当然、『地球交響曲』の内容ともダブっている部分が多く、『地球交響曲』を見ていたほうが楽しめる。

地球交響曲』は、大学時代に第三番まで劇場で観てて、最近、第一番〜第五番を収めた DVD ボックスを大人買いして観直して、第六番を去年、下高井戸で観たので、一応、全部観てることになる。大学時代に第一番〜第三番を観てえらく感動した記憶があったけど、10 年以上経って、オトナになって、あらためて観直しても感動は変わらず、より深くなった気がする。当時は、湾岸戦争があったりして、いわゆる「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」的なモノに違和感を感じはじめたりした時期だったんだけど、その傾向は間違いなくドンドンと大きくなってるし、リアルになってる。そんな中で、安易でお手軽に使われてるウサン臭い「エコ」とか「ロハス」とはまったく違う、もっと大事なモノが 10 年以上の時を超えて貫かれている、そんな力強さを感じる。

この『地球(ガイア)のささやき』は、地球交響曲』の制作・取材を通じて得たものや感じたことなどが、わりと読みやすいボリュームでまとまってるんだけど、やっぱりグッとくるハナシが多い。例えば、「ブッシュマンには動物・植物・人間といった概念の区別はなく、生命を分かち合うもの・生命を脅かすものって区別しかない。生命を分かち合うものの中では動物・植物・人間は区別されてない」ってハナシとか、フロリダの若い学者がイルカと名前を呼び合ったってハナシとか。あと、作り手(取材者)としての姿勢のハナシとして、「撮りたいと思ってる像が撮れなかった時は、その撮れなかった過程、どれほどの知恵とエネルギーを使って撮るための努力をしたかを撮れば、リアルな真実を描いた作品になる」ってハナシとか、やたら予定調和が過剰に求められて、その結果として蔓延してる中、すごく参考になるし勇気が出る(そう言えば、石川直樹くんと念願の初対面を果たした時、石川くんも同じようなことを言ってた)。あと、自転車派なところとか、親近感を抱いたり。

そんな中でもクライマックスと言えるのが、
地球交響曲』には反映されてない、世界的女優として知られるシャーリー・マクレーンと彼女の娘と日本人女性と一休としん女のハナシ。「事実は小説より奇なり」って言葉があるけど、まさにその通り。英語では「Truth is stranger than fiction.」って言うらしいけど、「strange」っていうよりも「interesting」で「mysterious」って言ったほうが相応しい、って思うほどの不思議なハナシ。これだけで 1 冊書けそうだし、しかもそこいらの小説なんかよりよっぽど面白いものになりそう。こんな体験してるから、地球交響曲』みたいな作品をつくり続けることができるんだなぁ、と感心しちゃった。そういう意味では、エッセイ集ってカタチでまとまっちゃってることが、ある意味ちょっと不満だったりする。

最後に、あとがきに書かれている「on the road」という感覚について。これは、日本人でありながら、アメリカに渡ってベトナム戦争に参戦して、地雷で片眼と手の指と片足を吹き飛ばされたという人物の言葉で、「目的地がはっきり見えているから旅に出るのではなく、まず旅に出て、その旅の一瞬一瞬をいかに旅するかによって、本当の旅の目的地が見えてくる」というもの。この言葉、この感覚には、なんかありそうな予感がする。

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