2008/06/09

Family affair.

フィデル・カストロ後のキューバ

. :ブライアン・ラテル 著
. :伊高 浩昭 訳 (作品社)

サブ・タイトルは「カストロ兄弟の確執と〈ラウル政権〉の戦略」。アメリカの対外諜報機関、CIA のキューバ担当者だった著者が、キューバとカストロ兄弟の関係、特に弟で実質的にフィデルの後継者となったラウルの人格と経歴についてまとめたもので、刊行は 2005 年。つまり、フィデルが倒れ、段階的に権限をラウルをはじめとした何人かの幹部に継承しはじめる直前に発表され、フィデルが倒れたことでその重要度が増し、注目されることになった一冊ということ。執筆時期と著者のバックグラウンドをキチンと把握して読むことは読書の基本だけど、特にそのことを気をつけて読むべき本だと言えるってことです。

まぁ、CIA の関係者だっていうだけで、つい警戒心を持っちゃって当たり前。まぁ、敵(って言い方も、まぁ、ナンだけど)側の見方を知ることも大事だろ、と思って読んだんだけど、やっぱアメリカの傲慢さとか、鼻につくっていうか、やっぱ素直には読めないところが多い。自分たちのミスは認めたがらないし。とは言いつつも、さすがにそれは税金のムダだろ、って思うくらいよく調べてはいるので、そういう意味ではなかなか面白い。最近になって(特に、2 月のフィデルの引退表明以降)、ちょこちょこと語られるようになってきてはいるけど、これまではなかなか語られることの少なかったラウルに関する分析は貴重だし、アメリカとキューバのスパイによる諜報合戦や、フィデルは諜報されてることを意識して演説をしてたってエピソードとか、やっぱり当事者ならではのネタを持ってるし。

フィデルの引退〜ラウルの後継とアメリカ大統領選のタイミングがすごく近いのも何かの因縁のような気もするし、まぁ、これから、世界に於けるキューバの立ち位置は大きく変わるだろうから、その辺を見ていく上でも知っておいたほうがいい情報ではあるかな。

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