2008/10/20

Natural paradox studies.

山と渓谷 2008 年 11 月号 山の環境読本

(山と溪谷社

創刊は 1930 年(!)という老舗山岳誌『山と渓谷』の最新号の特集は「山の環境読本」。個人的に最近とても気になっているタイムリーな内容なので即購入しました。

トレッキングをしてていつも感じるんだけど、「登山と環境」って、すごく親密であるような、でも実は相反するような、ある種の大きな「矛盾」を孕んでるトピックで、すごく深くて難しい問題。特集の冒頭のイントロダクション的な原稿で野口健氏は「環境問題は人間社会が問題なんだ」って言ってるけど、もっとキツイ言い方をすると「人間こそが問題」、厳密には「人間という変な活動をしてやがる動物の問題」なんだと思ってて。そこら辺の考え方がすごく難しいし、簡単に整理して結論が出せる問題じゃない。

この特集では、具体的に尾瀬や八甲田とかの具体的なケースを挙げて紹介してて、それぞれのハナシはもちろん大変な問題だし、取り組みが必要なんだけど、なんか頭からモヤモヤとしたモノが消えないのは何故なんだろう?

「地球に優しく」とか「環境に優しい」なんて言葉は勘違いヤローのゴーマンな物言い以外の何物でもないと思うけど、「ゴミは持ち帰る」とか「テント泊は決められた場所で」とか、「ルール」をいくら決めても本質的に解決にならないと感じたり。例えば、「テント泊は決められた場所で」とか徹底して、キャンプ場が混雑してるとかナンセンスだし。「テント泊というのはどういう行為で、どういう影響を及ぼすから、こういう場所でやると良くない / こういう場所なら問題ない」ということを教育せずに、ただ「テント泊は決められた場所で」なんて言ってるだけじゃ結局、その知識はいつまでたっても一部の専門家のモノでしかないわけで。で、こういう、いわゆる「山系」のメディアとかを見てると、「そんなことも知らないなんて…」的な発言をしてる専門家がけっこういるんだけど、逆に言うと告知(啓蒙・教育と言ってもいい)が徹底されてないってことなわけで。学校や会社などでの連絡事項と違って、宣伝や告知というのは不特定多数を相手にしていて、誰もが必ず目にしてるわけではないし、必ずしも積極的に知ろうとしているわけでもないのが当たり前で、だからこそ最低限のことは、常に繰り返し伝えるのが基本のはずなのに。それが足りてない(怠ってる)のを棚に上げて、「登山者のモラルが…」みたいな論調が出てくるのもどうかと思うし。結局、本当に必要なのは、盲目的にルールを守るよりも、キチンと学んで自分で判断する力なわけで、そういうことを学ぶ環境が整わない限り何の解決にもならないよなぁ、なんて思ったり(実際に整ってないと思うし)。

まぁ、この問題は、山に限った話ではなく、なかなか一筋縄にはいかない難しい問題なわけで、そんなことをいろいろ考えさせてくれる特集ではある。あと、そんな特集内容を反映してか、「山岳装備大全」というレギュラー・ページでフリースを取り上げてて、パタゴニアのフリース開発史を詳しく紹介されてて、これはなかなか読み応えがあって面白い。ただ、やっぱり、全体の印象としては、ちょっとズレてるというか、勉強にはなるけどイマイチしっくりこない、って感じも拭えない雑誌ではあるけど。

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