2009/02/17

Light is beautiful.


(Hiker's Depot) ★☆

2008 年に三鷹にオープンしたアウトドア・ショップで、オープン当初から興味があったショップ。なかなかチャンスがなくて、行けてなかったんだけど、ちょっと吉祥寺に用事があったので足を伸ばしてみた。

「アウトドア・ショップ」って書いたけど、これは正確ではなくて、「ライトウェイト・アウトドア・グッズ・ショップ」ってのが正しくて、ライトウェイト・ハイキングに特化してるのが特徴。オーナーは元アウトドア・ショップ勤務で自ら「ウルトラライト・ハイカー」なんて自称してる土屋智哉氏で、アウトドア系のメディアなんかでもよくライトウェイト・ハイキングを勧めてるのを見かける(例えば、こんな記事とか)。こういう風に、どんな人がどんな考え方でやってるのかがわかるのも、すごく現代的っていうか、これからますます重要な要素になりそうな気がする。ウェブサイトもスッキリしてるし(けっこうヒドイのが多いからね、この世界は)、いろんな自作っぽいアルコール・バーナーが展示してあったり、なかなか魅力的。

ライトウェイト・ハイキングってのは、レイ・ジャーディンが 1999 年に "Beyond Backpacking: Ray Jardine's Guide to Lightweight Hiking" で唱えたって言われてるハイキング・スタイルで、その名の通り、とにかく軽さを追求してるのが特徴で、格闘技で例えると、これまでのハイキング / トレッキング・スタイルがミドル級だったのに対して、新たにライト級って階級ができたような感じ。もちろん、自分で必要な装備を常に背負っていくことが前提なわけで、重いより軽いほうがいいのは当たり前。「少しでも軽く」って努力はこれまでも常に行われてたんだけど、その傾向は確かに最近、すごく顕著なように感じる('GoLite' なんて名前のブランドまであるし)し、単に「より軽く」っていう物理的な要素だけじゃない部分もあったりするんで、そういう意味ではタイムリーというか、いい傾向を象徴するショップだって言えるのかも。

ハイキングと呼ぶかトレッキングと呼ぶかバックパッキングと呼ぶかはともかくとして、アウトドアの世界って基本的にはすごくハイテクな世界で、それこそコンピュータとか携帯機器とかと同じくらい、ものすごいスピードで進化してる。その中で、モノだけじゃなくて、その背景にある考え方なんかもどんどん変化してて、今までの常識が常識じゃなくなっちゃったり(例えば、古くはフロッピーとか、最近だと MO とか DVD-R とか、もうすっかりなくなっちゃったみたいな感じ)とか、トレンドがあったり再評価があったりする(最近だと、個人的にはウールとソックスと脱ガス・バーナーがツボ)ところが面白いんだけど、このライトウェイト / ウルトラライトの傾向も、「物理的により軽く」ってことだけじゃなく、同時に「メンタルもより軽く」みたいな部分も含んでて、そこがすごく面白いというか、シンパシーを感じるところだったりもする。

どういうことかっていうと、これまで、いわゆる「日本の山の世界」で主流だった(支配的だったって言ってもいいかも)のは、昔ながらの登山部・ワンダーフォーゲル部的な「頑なにピークを目指す(征する)」みたいな世界の考え方だと思うんだけど、そうではなくて、ピークを征服することにこだわらずに、より軽快に、より自由に、シンプルでプリミティヴなカタチで、なおかつロー・インパクトな自然の楽しみ方もある、っていうこと。こういう部分って、すごくシックリくるっていうか、かなりツボなんで、そういう意味でも興味深い。

店自体は、それほど大きいわけじゃないから、品揃えがメチャメチャいいとかってわけじゃないけど、セレクトにはこだわりが感じられる。あと、ギアだけじゃなくて、ナチュラルな乾燥食材(特に和モノ)に力を入れてるところも面白い。あと、あえて三鷹っていうのもいいな、と。井の頭公園からも遠くないし、サイトにも「奥多摩、奥秩父、八ヶ岳、日本アルプス。中央線は街と山とを結ぶ線路です。そんな中央線にあるハイカーズ・デポをハイキングの前後にちょっと立ち寄る停車場(デポ)として気軽に利用してください」ってあるけど、こういう感覚、けっこう大事な気がする。

前にどっかで「ショップとストア」ってハナシを見たか読んだかしたんだけど、それを思い出したりした。英語の「ショップ」と「ストア」はどっちも日本語では「店」なんだけど、実は意味合いが違ってて、「ショップ」ってのは店の裏にちょっとした作業場的なスペースがある形態の店で、職種ごとに特別な呼び名があったりするような店(例えば、コンフェクショナリーとかフローリストとか)。一方の「ストア」は、店の裏にあるのは倉庫で、在庫が置いてあるだけのタイプ(例えば、ブックストアとか)。何が違うかっていうと、「ストア」は単に仕入れて売っているだけなのに対して、「ショップ」はその店ならではの付加価値を付けて売っててるので、「ストア」の場合は取扱品の数・種類・値段が勝負になるけど、「ショップ」の場合は必ずしもそれだけではなくて、実際に、シャッター商店街が問題になってる中でも頑張ってるのは「ショップ」なんだとか(「ストア」の場合は大型量販店には敵わないことが簡単に想像できる)。

アウトドア・ショップの世界も大型の「ストア」が多いし、やっぱりそういう店がメインになってるけど、ユーザーが「金に使い方」に自覚的になればなるほど、「ショップ」の価値がすごく大事になると思うし、このハイカーズ・デポもそういう「ショップ」のひとつとしてすごく興味があるし、応援したい気持ちにもなってくる。

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