"TRACE #83 Black Girls Rule! Issue" (TRACE) ★★★★☆
'transcultural styles + ideas' を標榜して 1996 年にイギリスで発行され、1998 年からはヘッドクォーターを NYC に移して出版されているカルチャー / ライフスタイル誌、 "TRACE" の最新号。
1998 年から毎年 1 度取り上げている "Black Girls Rules!" 特集号で、ゲスト・エディターは映画監督のスパイク・リー。こう聞いただけで、十分期待できるんだけど、期待を裏切らない内容。しかも、オフィシャル・サイトから PDF がダウンロードできる。
個人的にツボだったのは、表紙にもある通り、スパイク&トーニャ・ルイス・リー夫妻による次期ファースト・レディ、ミシェル・オバマのエクスクルーシヴ・インタビュー。日本にいるとなかなか実感しづらいけど、アメリカではファースト・レディ(及び大統領の家族)ってメチャメチャ影響力がある存在だし、彼女自身の魅力と人望(≒人気)もバラク・オバマの勝利に大きく寄与しているみたい(特にペイリンが副大統領候補に指名されてからは)。
年齢はバラクのほうが年上なんだけど、なんか、イメージは「姉さん女房」っぽいっていうか、すごくしっかり者な印象。そんな彼女へのインタビューへのインタビューってだけでも興味深いんだけど、さすがにスパイクだけあって、ありきたりなことは聞かないらしく、最初の質問は「ふたりの娘のことを聞きたいんだけど、ふたりは何が起こってるのか、事情を理解してる?」。実際にインタビュアーをやってみるとわかるんだけど、こういう質問からポロッと始められるって、実はなかなかスゴイと思う。インタビュー自体も、やたらと大きな(でも抽象的な)ことを語るんでもなく、実務的でつまんないハナシをするんでもなく、ダウン・トゥ・アースな、でも軸はブレてないインタビューになってて面白い。ちなみに、この記事に載ってたわけではないけど、ウィキペディアによるとオバマ夫妻は最初のデートでスパイクの『ドゥ・ザ・ライト・シング』を観たんだとか。ちょっといいハナシ。そういえば、"TRACE" のサイトのトップ・ページもオバマの勝利を祝うページになってる(いつまで掲載されてるかわかんないけど)。
あと、前にアルバム "Esperanza" をレビューしたエスペランザ・スポルディングスのページもすごくクール。記事自体は短いけど、彼女のキャラクターは伝わってくるし、写真がメチャメチャチャーミング。やっぱフォトジェニックだなぁ、この娘は。
エスペランザの写真もそうだし、ミシェル・オバマのページもそうだけど、全体のエディトリアル・デザインが相変わらずメチャメチャクール。"TRACE" は創刊された頃からすごく好きで、創刊当初はヒップホップ・カルチャーを中心とした音楽メインの内容だったんだけど、アメリカのヒップホップ系雑誌みたいな下世話さがあまりなくて、でも当時のイギリスの音楽 / カルチャー誌にありがちなレイヴ・カルチャー臭もしなくて、いろんな意味ですごくイギリスっぽい、ジャズやレア・グルーヴなんかと同様に、アフロ・アメリカン・カルチャーが好きなイギリス人によるアフロ・アメリカン・カルチャーの解釈が成功してて、すごく好みだった。その後は、拠点を NYC に移したり、内容も音楽を軸にしつつファッションやアート、さらには海外のカルチャーなどにまで幅を広げて、文字通り 'transcultural styles + ideas' な感じになってて、以前ほど熱心に追いかけてるわけじゃないけど(内容がつまらなくなったわけではなく、個人的に海外の雑誌を熱心に追いかけることをしなくなっただけ)、やっぱり、見かければつい手に取っちゃう雑誌ではある。デザインも、内容も、写真や記事のクオリティも、スタンスも、情報量も、いろんな意味ですごくバランスが取れてて、こういう雑誌をやりたいなぁ、とすごく思うし(しかも、そう思ってる人を自分以外にも何人か知ってる)、すごく信頼できる。
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