『大麻入門』 長吉 秀夫 著 (幻冬舎) ★★★☆☆
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ちょっとまえに大麻堂の麻枝光一氏のブログで知って気になってた新書。まぁ、新書はそれほど好きじゃないし、内容的にも新書っぽい内容なんだろうな、と思ってはいたんだけど、まぁ、特に去年の秋くらいからの、何かの意図があって行われてるとしか思えない一連のマス・メディア(というか地上波 TV)の画一的な内容の集中報道(というかプロパガンダ?)と、事実及び世界的な流れの間にとてつもなく巨大なギャップにはメチャメチャ違和感を感じざるを得ないんで、この時期に出る新書にはどんな内容が書かれてるんだろう? ってのを確認する意味でも、読んでみようかな、と。
帯に大きく「横綱力士の綱も、大麻で出来ている」という文字が踊ってて、それはそれでいろんな意味でキャッチーな掴みだと思うけど、結論からいうと、読んだ印象はすごく新書っぽい一冊。良い意味ではすごくマジメなスタンスで、広範に渡ってスッキリとまとまってるし、悪く言うと、ちょっとおとなしくて物足りない。そういうところが、すごく新書っぽいな、と。良い意味でも悪い意味でも。個人的には、特に新しい発見はなかった。それなりに大麻の問題について興味を持ってたり調べたことがあったりして知ってる人なら多かれ少なかれそうだと思うけど。ただ、内容としては新しいデータまで含まれてるし、いろいろな側面からスッキリとまとめられてるんで、便利ではある。逆に、メディアで伝えられてるような一般的なイメージしか持っていない人だと、素直に驚いたり、奇妙(且つ過剰)な拒否反応を示したりしそうな内容とも言えるので、読んだ反応によってその人のリテラシーが測れるって意味でも、タイトル通り、「入門」書としてはよくまとまってるのかな、と。
具体的な内容としては、世界及び日本での大麻(と大麻禁止)の歴史や大麻文化からはじまって、医療大麻や産業大麻といった今(そして、これから)ますます注目を集めること間違いナシのジャンルまで、一通りカバーされてる。個人的に気になったポイントは、「麻薬」とはもともとはアヘンのことを指していて大麻を含んではいなかったって点と、大麻の「麻」の語源は「家の中で麻を裂いて、こすって、干す様子を、林という形で表し」ていて、「磨く」「摩る」という意味に通じるのに対し、麻薬の「麻」はもともと「痲(しび)れる」という文字だった、って点。日本語で「大麻」と「麻薬」に同じ「麻」って文字を使っちゃってることが混乱と誤解を生んでると思うので。たぶん、言葉の整理をキチンとしないと、なかなか理解しにくい(されない)んじゃないかな、と。衣料品等の素材としての大麻との区別とか、薬物の名称と定義も含めて。だって、覚醒剤と大麻がほとんど区別されずに、まるで同じモノであるかのように報じられてる(=誤って認識されてる)から。これは意図的な気もするけど。個人的には、一般的には「大麻」、衣類用・食用とかの産業用の素材としての大麻は「麻(あさ)」「麻素材」「ヘンプ」って呼んで、「麻薬」って言葉は廃止して、「麻薬」に代わる言葉を用意する(「ドラッグ」でもいいけど、ちょっと正確じゃないし、日本語で正確な用語が要る。「違法薬物」とか? もちろん、これに大麻は含まない)とスッキリするんじゃないかな、って思う。で、「大麻」については現行の大麻取締法を改正して(それこそ「大麻取扱法」とか?)、一定の、リーズナブルなルールを設けてコントロールするのが真っ当だと思うけど。
まぁ、いちいち現行の大麻取締法のこととか、それに基づいた取り締まりの意味不明な点について細かく触れると別の議論になるんでやめるけど、大麻所持があたかも殺人犯クラスの大罪人扱いされてる現状は明らかに異常だし、まぁ、それこそ、この『大麻入門』の内容をマトモな感覚で理解すれば、少なくとも現状がいかにマトモじゃなくて、議論に値することかってことくらいはわかるはず。ドラッグって意味では酒もタバコもそうだと思うけど、こういう問題への対応って、その社会がいかにケツの穴が小ちゃくてみみっちいか、寛大でピースフルかを示す指標だと思うので。それに、大麻は単にドラッグの問題ではなく、哲学の問題であり、ライフスタイルの問題であり、医療問題であり、環境問題であり、経済問題でもあるし。
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