(Listen To The Lion Records) ★★★★☆
ワン・アンド・オンリーの存在感を放ち続けるアイリッシュ・ソウル・マン、ヴァン・モリソンが 2 枚目のソロ・アルバム(実質的には 1 枚目と言える)にして不朽の名盤の誉れ高いアルバム "Astral Weeks" をリリースしてから 40 周年を記念して、去年の 11 月に行った「アルバム再現ライヴ」を収めたライヴ盤。なんでも、"Astral Weeks" のアルバム全曲をライヴで演ったのは初めてなんだとか。でも、リハーサルは 1 回しか演ってないらしいけど。
まぁ、"It's Too Late to Stop Now ..." とか "A Night in San Francisco" のようなライヴ盤を聴けばわかる通り(残念ながら一度も来日してない、文字通り「最後の大物」なんだけど)、もともとライヴには定評があるし、年を感じさせない最近のライヴっぷりも YouTube のオフィシャル・チャンネルで確認できるヴァン・モリソンだけど、その期待をまったく裏切らない見事な仕上がりで、聴き応え十分。
本人曰く、"Astral Weeks" の曲を今までライヴで演らなかったのは、リリース当時、"Astral Weeks" は全然プロモーションされなくて、アルバム自体があまり売れなかったからなんだとか。確かに、ヒット曲満載の "Moondance" に比べればそれぞれの曲の知名度は低いけど。まぁ、アートワークについてはどうかと思ったりもするけど、内容的にはバッチリ。ソウルフルで、ブルージーで、ジャジーで。それにしても、御年 63 歳にしてこのパフォーマンスって。ただただ脱帽。
基本的には「昔の名前」を惰性でありがたがるような傾向はなくて、「過去の業績」と「現在のクオリティ」についてはけっこうドライに考えてるんで、キャリアを通じてずっと好きなアーティストって実はそれほど多くないんだけど、その数少ないアーティストのひとりがヴァン・モリソンだったりする。今でもアルバムは必ずチェックしてるし。しかも、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズと同世代だったりするって、あらためて考えてみると、スゴイことだなぁ、と。円熟はしてるけど、決して老け込んではないし、惰性で懐メロを垂れ流してるわけでもないし。
* VAN MORRISON "The Way Young Lovers Do [Live Verssion]"
(From "Astral Weeks: Live at the Hollywood Bowl")
"Astral Weeks" VAN MORRISON(Warner Bros)★★★★★
これが "Astral Weeks: Live at the Hollywood Bowl" のもとになった1968 年リリースのセカンド・ソロ・アルバムにして、クラシック中のクラシック・アルバム。決してわかりやすいアルバムでもないし、ヒット曲が収録されてるわけでもないのに、ロック史に残る名盤として高く評価されてる希有な作品と言える(これがロックなのかどうかは、大いに疑問の余地があるけど)。
もともとはゼムのフロント・マンとして、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズに代表される60 年中期のブリティッシュ・ロック・シーンで活躍してたヴァン・モリソンは、リズム & ブルース / ソウルの影響が強かったシーンでも人一倍「黒い」個性を放ってたシンガー・ソングライター。この "Astral Weeks" がリリースされた 1968 年ってのは、ザ・ビートルズが "The Beatles"(ホワイト・アルバム)、ザ・ローリング・ストーンズが "Beggars Banquet" をリリースした年。つまり、"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" や "Their Satanic Majesties Request" はもうリリースされてるわけで、ビートの利いたストレートなロック〜ポップだった 60 年代のブリティッシュ・ロックが、サイケデリックだったり、ハード・ロックだったり、いろいろな方向に拡散していった時期だった。
そんな中で、ゼムを解散してソロになったヴァン・モリソンはよりディープにルーツを掘り下げるような方向に向かった。一応、1967 年にリリースした "Blowin' Your Mind!" ってアルバムがファースト・ソロ・アルバムってことになってるんだけど、これはヴァン・モリソン本人の許可を得ずにレーベルがシングルを寄せ集めて作ったモノなんで、1968 年リリースの "Astral Weeks" が実質的なファースト・ソロ・アルバムってことになる。
サウンドはジャジーで、ブルージーで、フォーキーで、ソウルフル。実質的なソロ 1 作目にして、一言でロックと片付けることが困難な(というか、もはやロックじゃない)、ヴァン・モリソンならではとしか言いようのな世界観を確立してる。なんと、この時、まだ 23 歳。声はもともとオヤジ声だったけど、この渋すぎるサウンドにはビックリするばかり。シングル向きなポップな曲こそないけど、アルバム全体の完成度は抜群で、タイムレス・クラシックと呼ぶに相応しい。個人的にはいつも iPod / iPhone に入ってる 1 枚で、今後もずっと聴き続けるに違いない。
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