2009/05/03

Whole lotta Love.

忌野 清志郎 Kiyoshiro IMAWANO (2 April 1951 - 2 May 2009) - R. I. P.

レビューではないけど、こないだバラク・オバマのプラハでの演説のレビューにキヨシローさんがカバーした『イマジン』を貼ってたり、ちょっと前に訳あって RC サクセションやタイマーズ、ソロの作品をいろいろ聴き直す機会があって、あらためて、なんてカッコイイんだろうって思ってた矢先だっただけに、昨日の夜にニュースを見てすごくビックリしたし、ショックだったし、悲しいんで。もちろん、癌に患ってて闘病中だったってのは知ってたけど。

実は、個人的には
キヨシローさんにハマったって経験はなくて、世代的にも、物心ついたときにはもういた人なわけで、『雨あがりの夜空に』とかは知らぬ間に聴いてて、なんか頭に残ってたけど(「こんな夜に お前にノレないなんて こんな夜に 発射できないなんて」だからね。こどもには刺激が強いね)、一番インパクトが強かったのは、こども心に度肝を抜かれた坂本龍一さんとのコラボレーション『い・け・な・い ルージュマジック』だったりするから、決して王道の、熱心な RC / キヨシローファンではない。

リアルタイムでキチンと自覚的に聴いた記憶にあるのは、たぶん RC の『カバーズ』辺り。高校生だったかな? 「素晴らしすぎて発売できなかった」なんてニュースもあったり(「
放射能はいらねー 牛乳を飲みてー」で知られる『ラヴ・ミー・テンダー』とかね)、当時は洋楽のほうが聴いてたから洋楽のカヴァーってのグッときたし。その後は、タイマーズも含めてわりとマメにチェックしてるけど、RC よりもソロとか別プロジェクトとかのほうが好きだったりして。やっぱり直球なキヨシローファンじゃないらしい。

忘れられないのは大阪で目撃した
キヨシローさん。もう 10 年以上前のことだけど、FM 802 が主催してる野外イベントに仕事で行ったときのこと。炎天下の万博記念公園が会場で、バックステージでモニター見てたら目の前に短パン+タンクトップ+ビーサン+頭にタオルを巻いたむさいオッサンがいると思ったら奥田民生だったとか、そういう状況で。まぁ、メチャメチャ暑いし、どのアーティストもアコースティックだったり、わりとシンプルでユルい感じで進行してたんだけど、陽が沈んだ頃にトリとして登場したのがキヨシローさんで。ピンクの 3 ピースのスーツでバッチリキメてて、超ノリノリで、もう、ハンパじゃなくくらい、メチャメチャカッコよくて。うわっ、ヤバイな、この人、って。

昨日、訃報を聞いてから、(たぶん、日本中の多くの人と同じように)YouTube でいろんな映像を観てるんだけど、やっぱり
キヨシローさんは、もちろん名曲も多いんだけど、同時にカヴァーもコラボレーションも素晴らしくて、名パフォーマンスも多いなぁ、ってあらためて思う。しかも若い頃だけじゃなくて、わりと最近のモノも素晴らしくて。すごくいい年の取り方をしてた。『上を向いて歩こう』ももちろんだし、ウルフルズと共演したこの『デイドリーム・ビリーバー』もメチャメチャいいし、隠れたキヨシロークラシックとしては井上陽水さんとのコラボレーションの『帰れない二人』も最高だし(「もう星は帰ろうとしてる」って、なんて美しい歌詞なんだろう)。個人的にはライムスターと共演した『雨あがりの夜空に 35』もけっこう好き。おもしろそうなことならやっちゃうっていうオープン・マインドなスタンスも清志郎さんっぽいし、キング・オブ・ロックとキング・オブ・ステージの共演っつうのもバカっぽくていいし。まぁ、要するに "Walk This Way" ってことなんだ、と。「ビンビン且つ不謹慎なエネルギー発射!」ってのもナイス・パンチ・ラインだし、ヴァースに入ってる「ガッデム!」もピッタリだし。それに、ヒップホップ・マナーの煽りって、実はキヨシローさんにすごく似合ってるし。DJ JIN のヴァースで見せるスクラッチの振りとアウトロのフロウも微笑ましい(そして、キヨシローさんに名前をシャウトされてる DJ JIN が羨ましい)。もちろん、他にも『スロー・バラード』とか『パパの歌』とか『世界中の人に自慢したいよ』とか、もう、ホントに名曲は数知れず。

あらためて、なんてカッコイイんだろうって思ってた」って書いたけど、わりとグッときちゃう感じになってきたのは自分がオトナになってからで、なんでだろうなぁって最近すごく思ってたんだけど、最近、なんかわかった気がした。たぶん、この人の声と言葉には愛が溢れてるからなんだろうなぁ、って。しかも、薄っぺらなヤツじゃなく、スケールがデッカイ愛。奇抜さも過激さも毒もストレートなメッセージもユーモアもイナタい腰つきも、全部含めて、愛が溢れてて、なんかチャーミングで。しかも、難しくて大切なことを、頭デッカチにならない絶妙なサジ加減で、脳ミソにもハートにも訴えてくる。だから、ビンビン伝わってくるし、心に染みちゃうんだと思うし。そういえば、「愛しあってるかい?」って昔から言ってたし。「最近のアーティストは…」なんてオッサンみたいなセリフだけど、まぁ、もうすっかり立派なオッサンなわけで、それを承知で言うと、なんか最近は、品行方正というか、優等生というか、TV 向けというか、キヨシローさんみたいに放送できないようなホントのことを歌っちゃう、歌えちゃう(しかも、ユーモラスに)アーティストっていないよなぁ、なんてすごく物足りなく思ったりしてて。そんな矢先の訃報だったんで、よけいにショックだったんだけど、同時に、やっぱり希有な存在だったんだなぁ、って再確認したし、こういう日本語の音楽を聴くと、日本人で良かったなって思うし。まさに日本人による日本人のためのブルースであり、ソウル・ミュージックであり、もちろん最高にロックンロールだなぁ、と。

Remember You すべて忘れたとしても Remember You 君を覚えているよ
ボクの目が 耳が 口が 胸が どうやっても君から離れない

Remember You すべて失くしたとしても Remember You ボクは覚えているよ
ボクの目を 耳を 口を 胸を そうさ 今も忘れられないのさ

昨日から、『GOD』ってアルバムに入ってる "Remember You" って曲のフレーズが頭の中で鳴り続けてる。写真はやっぱピンク。そして、ただただ、合掌。




0 comment(s)::