『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 福岡 伸一 著 (木楽舎) ★★★☆☆
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別に特別興味があったわけじゃないんだけど、ちょっと訳あって読んでみた一冊。でも、読んでみたらなかなか興味深くて、思ってた以上に面白かった。
著者の福岡伸一氏は青山学院大学教授の分子生物学者。最近はマス・メディアでの活動も多いらしく、わりと '売れてる' 学者のひとりらしいんだけど、まぁ、あまりマス・メディアを観ない(見ない)ので、あまり詳しくはわからない。ただ、あまりマスじゃないメディアにもよく出てるんで、そういうところで見かけた記憶はあって、その印象はそれほど悪くなかったんで、わりと抵抗なくすんなりと読めたかな。
この『動的平衡』は 2009 年 2 月発行なんで、わりと最近の著書ってことになる(夏頃に『世界は分けてもわからない』って本も出してる。未読だけど)んだけど、その後、何本か TV 番組を観てみても、基本的に印象は変わらなかったかな。
学者なんで、当然、難しいことを専門にしてるだけど、それをシンプルな言葉遣いで語る / 記すことにすごく長けてる。あと、多くの学者が 'その専門ジャンル内の言語しか使わない(使えない)/ 視野しか持ってない' って傾向に陥りがちなんだけど、そういう傾向がほとんどなくて、上手いこと日常生活でイメージできる話題に落とし込みつつ、でも、そのジャンルの専門家って視座からはブレない、その立ち位置がなかなか絶妙で。マス・メディアで重宝されてる理由は解る気がする。過剰に着飾ってなかったりするところも好感持てるし。
言ってること自体もなかなか面白いんだけど、個人的にはタイトルになってる「動的平衡(dynamic equilibrium)」って言葉自体がちょっとツボで。別に著者の造語ではないんだけど、とてもいい言葉。一見、相反したり、結び付かなそうに思える 2 つの単語が結び付いて、何とも言えないパワーを持つことってあると思うんだけど、個人的にはこういうのを 'ハイパーバラッド' 系(もちろん、ビョークの名曲のタイトル)って呼んでて、坂本龍一さんの "Sweet Revenge" なんかもそうだけど、この「動的平衡」ってのもそのひとつだな、と。英語の 'dynamic equilibrium' って語感もすごくいいし(っつうか、英語のほうが座りはいいかな)。もちろん、肝心の「動的平衡」自体の「常に動きながら一定の状態を保ち続けることにこそ、生命の根源がある(んじゃないか?)」的な考え方もすごく興味深いし。
あと、科学者なのに科学を盲信していないというか、科学を盲信することの危うさを自覚してる感じも、わりと共感しやすいポイントなのかも。その辺が科学(盲)信者に嫌われるところなんだろうけど。まぁ、その気持ちもわからんではないけど。
まぁ、この『動的平衡』は『ソトコト』等で発表していたモノをベースにして、それをまとめたモノなんで、ちょっと散漫な印象もあるけど、まぁ、読みやすいモノではあるんで、これはこれで、全然アリなんじゃないかな、と。巷にやたらと蔓延してる意味不明なダイエットやらアンチ・エイジングみたいなモノに、何か一石を投じたりするような役割を果たしてくれるなら大歓迎だし。dynamic equilibrium
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