2011/02/12

New world order

日本人が知らないウィキリークス』
 小林 恭子 / 白井 聡 / 塚越 健司 /  津田 大介 / 八田 真行 / 浜野 喬士 / 孫崎 亨 著
(洋泉社) ★ Link(s): Amazon.co.jp 

あまり新書は読まないんだけど、これはタイミング的には読んどきたいかな、と。タイトル通り、去年から世界中を騒がせてるウィキリークスについて、その概要にはじまって、ジャーナリズム、インターネット / メディア、技術と思想、外交、理念等を、それぞれの専門家が綴ったモノ。あまりキチンと紹介されることがないウィキリークスについての概要を多角的に整理されている感じって言えるかな。

ウィキリークスの概要については、去年の 12 月にニコニコ動画(それにしてもヒドイ名前だな、こうやって活字で書くと)のこの動画と NHK の『クローズアップ現代』がなかなかわかりやすいんだけど、 やっぱり観終わってもキチンと整理されないっていうか、ちょっとモヤモヤした感じが抜けなくて。まぁ、ある意味、映像の宿命って部分もあるけど。概要を伝えたり、インパクトを与えたりするのには向いてるんだけど、深い理解はさせてくれない感じ。しかも、わかった気にさせちゃいがちだから厄介なんだけど。
まぁ、そんなわけでウィキリークスについてもっと知りたくて、手始めに読んでみたのがこの本。ちょうど、著者の 1 人の孫崎亨氏がジャーナリストの岩上安身氏のインタヴューの中で紹介してたんで早速読んでみた、と。 

感想としては、「とりあえず、概要は掴める」。新書ってのはそういうファンクションのモノだし、 この本自体の目的もそういうことのようなので、そういう意味ではキチンと役割を果たしてるって言えるのかな。まぁ、全体が面白いかって言われると微妙だし、自分自身の基礎知識とか興味・嗜好によって面白い部分、そうでもない部分、既に知ってた部分、初めて知る部分等、いろいろあるし、逆に知りたかったのに触れられてない部分もあったりするんだけど、まぁ、この文量で、しかも、深さよりも広さ(とタイミング)を重視してるっぽいから、そういう意味ではアリかな、と。

個人的には、何かと比較されることの多いいわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」よりも、実はウィキリークスはロシア(ボルシェビキ)革命と類似点が多いっていう白井聡氏の主張とか、ニコニコ動画の番組にも出てた八田真行氏の技術的な解説とサイファー・パンク(サイバーパンクではない)のハナシは面白かった。まぁ、欲を言えば、八田氏にはもっと突っ込んでハッカーのカルチャーとかメンタリティとかを語って欲しかったりもしたんだけど。そこが、ちょっと不満だったりもした。「ハッカー」って言葉って、メチャメチャ誤解されてると思うんで。特に日本では(まぁ、ハッカー側がわざとそうしてる感じもするし、そういう感覚はキライじゃないんだけど)。

本を読む時は、前にレヴューした Post-it 透明スリム見出しを気になる部分に貼りながら読んで(漫画や小説は除く)、このレヴューを書いたりするときはその Post-it の部分を振り返りながら書くんだけど、Post-it の量は写真のような感じ。なんだかんだいって Post-it の量はかなり多めで、それだけ押さえとくべきポイントは多かったかな。

たぶん、これくらいのことは知ってていいはずだし、これを読んでビックリしてちゃマズイ感じ(まぁ、読んでるだけマシだけど)。でも、わりと周りの人と話してると、ウィキリークスって、案外、理解されてないし、問題の所在とか意義とか評価とか、キチンと整理できてる人って少ないっぽいんで(もちろん、客観的な評価ではなく、自分自身の中での評価っていう意味で)、需要はありそうだし、わりといい感じでまとめられてるんで、入り口としてはアリかな。ただ、これだけ読んで、わかった気になるのは危険だと思うけど。案外、そういうヤツ、多そうだけど。

ちなみに、個人的にはウィキリークスは断然支持。ゲリラ戦術の一種だと思ってるんで、そういう意味では、革命との共通点を見いだす考え方はしっくりくる。書き出すと長くなるし、論理的な裏付けがまだ足りてない気もするんでやめとくけど、ポイントは「信頼できる不特定多数のネットワーク」かな。コレ、すごく重要。ジャーナリズムとかメディアとっていう小さな枠で見るべきハナシじゃない。厳密には「ウィキリークスは」じゃなくて、「ウィキリークス的なモノは」ってことだけど。いろんなことに応用可能なアイデアだし、すごく大事な考え方だと思うんで。すごく面白いし、ワクワクする。

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