ライター的な稼業をしててついつい安易に使っちゃいがちな(故に慎重に使おうと思ってる)手癖的な表現ってのはいくつかあって、そのひとつに「待望の」って表現がある。でも、実はホントの意味で「待望」なモノって実は世の中にはそれほど多くはなかったりする。そんな中で「ホントに待望の」って言えるのが、このシャーデーのニュー・アルバム。
スタジオ・アルバムとしては、2000 年リリースの "Lovers Rock" 以来ってのも驚きなら、約四半世紀のキャリアで 6 枚目のアルバムってのも驚き。サウンド自体はもちろんだけど、そういうところも含めて、浮世離れしたというか、仙人みたいというか、どこか超然とした存在感を放っているのが、シャーデーってアーティストなんだけど。
今作に関しては、前にマックスウェルのアルバム "BLACKsummers'night" のレヴューで書いた通り、去年の春頃からレコーディングに入ってるらしいって噂は聞いてた(っつうか、マックスウェルが漏らしてた)んだけど、まぁ、わりと順調にリリースまでこぎつけてくれて嬉しい限り。
秋頃(だったかな?)にタイトル・トラックの先行シングル "Soldier of Love" を聴いたときは、「お、ちょっと、なんか勇ましいぞ(だからソルジャーなのか?!)」なんて思ったりもしたけど、アルバムの出来映えは何の問題もないっつうか、期待通りバッチリな仕上がり。まぁ、ごく初期のジャズ / フュージョン的なサウンドよりは、ブルージーでアーシーな感じの近作の流れの延長線上にあるサウンドって言えるんだろうけど、まぁ、そういう形容が陳腐に思えるくらいワン & オンリーの世界観は健在で、言ってみれば「ジャンル:シャーデー」って感じ。
それにしても、この神々しいまでの存在感は何なんだろう? もちろん、ヴォーカリストであり、バンドの顔であるシャーデー・アデゥの声とリリックとルックスが醸し出す雰囲気に起因する部分が大きいんだろうけど(前にスウィートバックの同名のアルバムとマックスウェルのアルバム "BLACKsummers'night" のレヴューでも書いてる通り、シャーデーというのはあくまでも 4 人編成のバンド / ユニットの名前。そのヴォーカリストのシャーデー・アデゥの名前がバンド名になってるからややこしくて、よく女性ソロ・アーティストと勘違いされがちなんで、念のため。スウィートバックはシャーデー・アデゥ以外のメンバーによるユニットで、素晴らしいアルバムをリリースしてる)。こないだ、コリーヌ・ベイリー・レイの "The Sea" のレヴューで、コリーヌのイメージが機動戦士ガンダム MS イグルーに出てくるヨーツンヘイムのオペレーターのジーン・ザビエル嬢にちょっとカブるって書いたけど、シャーデー・アデゥはララアとイメージがカブる。ララアが年を重ねたらこんな風になるんじゃないかって思っちゃう。まぁ、つまりシャーデー・アデゥはニュータイプに違いないってハナシなんだけど。
リリース後の世界各国のチャート・アクションもいいみたいだんだけど、サウンドや存在感ももちろん、こういうキャリアの重ね方をして、こういうサウンドで、国やジャンルを超えて、同業者や評論家からライト・ユーザーにまで幅広く愛されて、セールスがキチンと伴うっていうことも、ある意味、奇跡的っていうか、やっぱりワン & オンリーでミラクルって言うしかないなぁ、と。まさに、作り手側にも聴き手側にも愛が溢れる至福の 1 枚。
SADE "Babyfather" (From "Soldier of Love")
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