Link(s): 2000black.com / iTunes Store / Amazon.co.jp
1990 年代初頭からの長いキャリアを持ち、4 ヒーロー(4HERO)を筆頭に数々の名義で多くの作品をリリースしてきたディーゴ(DEGO)が満を持して(っつうか、どんな心境の変化で?)リリースしたディーゴ名義でのファースト・ソロ・アルバム。先月、自ら主宰するレーベル、2000 ブラックのウェブサイトと iTunes Store 等、デジタル・リリースされてて、CD でもボチボチリリースされるはず。
先にブッチャけちゃうと、ディーゴとは 15 年くらいの個人的な付き合いがあったりするんで、言ってみれば、'いいも悪いもない' 的な感じもなくはないんだけど、ただ、元々は友達として知り合ったわけではなく、あくまでもアーティストとして、彼の作る作品のファンってスタンスで知り合ってはいるんで、作品は作品としてキチンと接することができる関係ではあるかな。
結論としては、ディーゴ名義でのリリースに相応しい、これぞディーゴってサウンド以外の何モノでもないって印象かな。すごくタイトで、シンプルで、渋くて、妙にアディクティヴで。個人的な期待値はかなり高かったんだけど、正直、期待以上の出来映えでビックリっつうか、まぁ、バッチリだった、と。
これまでにもディーゴ関連の作品は何枚かレヴューしてるけど、キチンとバイオグラフィ的なことは触れてなかったっぽいんで、いい機会だから、あらためてベーシックな部分から触れてみようかな(ちょっと長くなるんで、必要なければ下のほうの*印まで移動しちゃったほうがいいかも)。
ディーゴは、UK ブラックのご多分に漏れず(その辺の背景については『ジミ・ヘンドリックスとアメリカの光と影』のレヴューでもちょっと触れてる)ジャマイカ系のイギリス人で、シーンに登場したのは 1990 年代の初頭。ドラムンベースのパイオニアとして知られる 4 ヒーローの一員としてであり、後のシーンを代表するアーティストを数多く輩出したレーベル、リインフォースト(Reinforced)の主宰者の 1 人としてだった。
4hero: Dego (center) with Marc Mac (right) and Ian (left). Gus wasn't there unfortunatelly. |
1990 年代半ばのロンドンは、レイヴ・シーンでのアシッド・ハウス〜テクノと UK ブラックのルーツ・ミュージックであるレゲエ〜サウンドシステムを融合させることで生まれたラフでアグレッシヴなサウンド・スタイルだったジャングルに、ヒップ・ホップやデトロイト・テクノ、さらにはジャズ〜レア・グルーヴ、ソウル、ファンク等、さまざまな要素を貪欲に取り込んで音楽として洗練させることで、ドラムンベースがダンス・ミュージックの新たなアート・フォームとして、そのスタイルを確立させつつあった時期。今ではひとつのダンス・ミュージックのスタイルとしてすっかり定着したドラムンベースがまさに生まれた時期であり、ドラムンベース誕生の動きを体現し、メチャメチャ大きな役割を果たしたのが 4 ヒーローでありリインフォーストでありディーゴであった、と。もちろん、ドラムンベースは 4 ヒーロー(だけ)が作ったってわけじゃないし、他にもいろいろなアーティストやレーベルが大きな役割を果たしたことで、半ば偶然の産物として生まれたモノだと思うんだけど、最大の功労者の 1 人(っつうか、ユニットでありレーベル)だったことは、まぁ、異論はない。
4HERO "Parallel Universe" (Reinforced / 1994) |
4HERO "Two Pages" (Talkin' Loud / 1998) |
4 ヒーローとしてのキャリアは現在まで続いてて、ドラムンベースってスタイルから逸脱しつつも、2001 年には素晴らしいプロダクションとカリーナ・アンダーソン(CARINA ANDERSON)のヴォーカルでミニー・リパートンの名曲 "Les Fleur" をリ・プロダクション(っていうか、'再現' って感じ)してみせ、ジル・スコット(JILL SCOTT)やテリー・キャリアー(TERRY CALLIER)、ロイ・エアーズ(ROY AYERS)との共演も果たした "Creating Patterns"(Links: iTS / Amzn)を、2007 年にはよりリラックスしたムードの中で 1970 年代のソウル・ミュージック的なサウンドを聴かせる "Play with the Changes"(Links: iTS / Amzn)をリリースするなど、ややゆったりとしたペースながら期待を裏切らない良作を発表し続けてて、イギリスのクラブ・ミュージック・シーン(厳密には、もっと広義に、クラブ・ミュージック由来の音楽シーンをって言ったほうがいいのかな)で活躍してる。
ただ、ディーゴのキャリアって意味でいうと、1998 年ってのはもうひとつ、重要な意味を持ってる。それは、自身のレーベル、2000 ブラック(2000Black / Link: 2000black.com)を設立したこと。始まりはメチャメチャ唐突で、何の前触れもなく突然、"Dumped Funk"・"He Said"・"She Said" っていうディーゴ名義の曲が 3 トラック入ったアートワークなしの 12" インチがポロッとリリースされたことだった。レーベル面には '2000Black' って書いてあって、カタログ・ナンバーらしき部分には '2001 Black' というカタログ・ナンバーらしき表記。まぁ、ブッチャけ、最初は '2000 ブラック' ってのがレーベル名だってことすらよくわかんないような状態だった、と。しかも、音も、"Two Pages" とはかなり違う印象だったし。"Two Pages" は、サウンド・ディレクション的には狭義のドラムンベースの範疇をハミ出てたものの、リズム・パターン的にはドラムンベース(的)だったけど、 この 12" インチは全然違ってて。
4 ヒーロー / ディーゴは、4 ヒーロー以外の名義、例えば、ジェイコブズ・オプティカル・ステアウェイ(JACOB'S OPTICAL STAIRWAY)名義でデトロイト・テクノ・マナーのアルバム、"Jacob's Optical Stairway"(Links: iTS / Amzn)を 1995 年の時点で出してたり、テック 9(TEK 9)名義で 1996 年に "It's Not What You Think It Is"(Links: iTS 1/2 / iTS disc 2/2 / Amzn)、1999 年に "Simply"(Links: iTS / Amzn)ってヒップ・ホップ・マナーの作品を出してたりして、もともと 'ストリクトリー・ドラムンベース' って感じではなかったんだけど、"Dumped Funk"・"He Said"・"She Said" の 3 曲はそういうモノとも違う感触で、何とも言えない不思議な印象だった。'ブレイクビーツ(をベースにしたダンス・ミュージック)' としか言えないというか。曲によって BPM もリズム・パターンも音色も違ってるし、ヒップ・ホップとかドラムンベースとか、既に確立されてたスタイルには簡単には当て嵌められない感じで。実際には、ディーゴもマークも 4 ヒーローもその後はドラムンベースのリズム・パターンにこだわらない作品を量産するんだけど、この時期はまだ "Two Pages" のインパクトが強すぎたこともあって、けっこうシーンでの一般的な受け取られ方は困惑気味だった印象もあったりして。
その頃から、ドラムンベース・シーンを出自にしつつも、ある種、定型化されて、ちょっと穿った言い方をしちゃえばワン・パターンになって閉塞してた感のあったドラムンベース・シーンからちょっと距離を取りつつ、よりフリースタイルでハイブリッドなトラックを作るようになり、しかも、それまで以上にジャザノヴァ(JAZZANOVA)近辺のシーンとかキング・ブリット近辺のシーンとかともクロスオーヴァーするようになっていった感じで。その辺りの動きで特にロンドンを拠点にしてたアーティストを指して、イギリスのメディアは 'ブロークン・ビーツ' とか 'ウェスト・ロンドン・サウンド' とか、これまたビミョーな名前で呼ぶようになるんだけど。
2000 ブラックは、まさにディーゴのアイデンティティを体現するレーベルとして、ムスタング(MUSTANG)ことアレックス・アティアス(ALEX ATTIAS)やレストレス・ソウル(RESTLESS SOUL)ことフィル・アッシャー(PHIL ASHER)、名曲 "Black Mary" を残した今は亡きパリス・クレモンス(PARISS CLEMONS)、ディーゴとの抜群のコンビネーションを見せることになる元ザ・ハーバライザー(THE HERBALISER)でバグズ・イン・ジ・アティック(BUGZ IN THE ATTIC)の一員でもあるキーボード・マエストロのカイディ・テータム(KAIDI TATHAM)、もともとはリインフォースト・クルーでバグズ・イン・ジ・アティック(BUGZ IN THE ATTIC)の一員でもあるセイジ(SEIJI)、同じくリインフォースト・クルーだったドム(DOMU)やヌビアン・マインズ(NUBIAN MINDZ)等、イギリスのメディアが呼ぶところの 'ブロークン・ビーツ / ウェスト・ロンドン' のシーンを代表するアーティストたちの 12" インチをリリース。特に、自身で手掛けた最初の 12" インチの次の 2002 Black が、決して知名度が高かったわけじゃない(けど間違いない実力の持ち主の)ティトントン(TITONTON)だったことは、ある意味で、すごくディーゴらしかった(もっと知名度の高いヤツに頼もうと思えば頼めたはずなのに)。CD としても、レーベル・コンピレーションの "Good Good" シリーズも 3 枚出てて、ディーゴ自身もいろんな名義やプロジェクト、コラボレーションってカタチでかなりコンスタントに作品を作ってた。もともとは、それほど多作な印象じゃなかったけど(ただ、制作自体が遅かったわけじゃない。リミックスとかスゲェ早かったし)、この時期辺りからかなりプロダクションのペースが上がった印象だったかな。たぶん、スキルとかノウハウ的な面でも、周辺の人的リソース的な面でも、機材・スタジオ等のコストとかスペックとかの面でも、すごくバランスが取れた動きやすくなったんだと思うけど。
"2000Black presents the Good Good" (2000Black / 2000) |
理由はいくつかあるんだけど、まずはこの企画自体の言い出しっぺだってこと。12" インチのリリースが何枚か続いて、曲数はそれなりに溜まってきてたんだけど、12" インチはプレス数自体がすごく少なかったし、レーベル自体の実態もあまり伝わってなくて、なかなか手に入りにくい状況だったから、「そろそろまとめて CD にしないの? ちょうど 2000 年だしさ」的なことを言って。まぁ、結果的には 12" インチのトラックをまとめたモノではなく、新曲ばかりになったんだけど。そんなハナシの流れだったんで、リリースも日本先行で、後にイギリスとヨーロッパでも出て、アメリカではカール・クレイグ(CARL CRAIG)主宰のプラネット・E(Planet E)からリリースされたんだけど、内容的にバッチリなモノになったんで、言い出しっぺとしてはなかなか感慨深かった。
もうひとつの理由は、ロイ・エアーズをフィーチャーした "2000Black" が収録されてるから。これも言い出しっぺ。ロイ・エアーズは、言わずと知れたジャズのリヴィング・レジェンドで、 '2000 ブラック' ってレーベル名は、当然、ロイ・エアーズの 1975 年リリースのアルバム "A Tear To A Smile"(Links: iTS / Amzn)に収録されてる曲のタイトルから採って名付けられてる。だったら、ディーゴとロイ・エアーズが共演して "2000Black" をカヴァーしたら最高じゃね? って、ふと思いついて。しかも 2000 年にリリースできればタイミングもバッチリだな、と。そうしたら、ちょうどロイ・エアーズが来日したんでライヴを観に行って、ライヴ後に(本人には会えなかったのが残念だったけど)マネージャーに話をしたら、ロイ・エアーズ自身はそういうハナシには基本的に前向きだ、と(まぁ、そのちょっと前に誰だか忘れたけどハウスのレコードで自分の曲のカヴァーに参加してたんで、そういうハナシを頭から拒否するタイプではないだろうって計算はあったんだけど)。連絡先を教えてくれたんで、そのハナシをディーゴに伝えたらディーゴも気に入って、あとは直接やりとりして実現した、と。
ちなみに、上でもちょっと触れた通り、ロイ・エアーズは 4 ヒーローの 2001 年リリースの "Creating Patters" でも同じく "2000Black" をカヴァーしてる(ということは…って部分には敢えて触れないけど)。ただし、アレンジはかなり違ってて、4 ヒーローのヴァージョンはかなりオリジナルに忠実な、ほぼ '再現した' 感じなのに対して、このコンピレーションに入ってるヴァージョンはオリジナルなアレンジになってる。まぁ、出来映え自体ももちろんいいんだけど、自分が聴きたかっただけで言ったことが上手く転がって実現しちゃったって意味でも、すごく感慨深いな、と。
その後も、4 ヒーローとしての活動と平行して(前から知り合いとかには言ってた表現なんだけど、4 ヒーローってのは、言ってみればダウンタウンみたいなもんで、いつも一緒につるんでるわけじゃなく、むしろ、いつもは互いに別々の気が合うヤツらとつるみつつ、でも、お互いをリスペクトし合いながら、必要があれば一緒にやるコンビって感じ。芸風もけっこう違うし)、ディーゴは 2000 ブラックを中心にしながら、"Good Good" シリーズの "Vol. 2"(Link: Amzn)・"Vol. 3"(Link: Amzn)をリリースしたり、別名義で "2000BLACK Presents PAVEL KOSTIUK and The Musicals"(Links: iTS / Amzn)ってインスゥルメンタル・アルバムをリリースしたり、バグズ・イン・ジ・アティック・クルーのカイディ・テータムとダズ・I・キュー(DAZ-I-KUE)とのユニットの DKD としてアルバム、"Future Rage"(Link: Amzn)を作ったり、カイディ・テータムとのコンビで 2000 ブラック名義で "Next Set A Rockers"(Links: iTS / Amzn)をリリースしたり、よりヴォーカル・オリエンテッドのユニットのシルエット・ブラウン(SILHOUETTE BROWN)のアルバムを 2 枚、2005 年に "Silhouette Brown"(Links: iTS / Amzn)、2010 年に "Two"(Links: iTS / Amzn)をリリースしたり、良質な作品をコンスタント且つ積極的に連発しつつ、DJ としても "Selector Series 2"(Link: Amzn)、前にレヴューした "4hero ... mixing" 等のミックス CD を手掛けてたりと活躍してる(ちなみに、"Selector Series 2" のアートワーク写真は渋谷でメシを喰ってるときにたまたま撮ったモノが気が付いたら使われてた。自分が撮った写真が CD のアートワークに使われたのは初めてだったんで、ちょっとビックリしたのも、今となっては懐かしい思い出)。
* * *
前振りがすっかり長くなっちゃったけど、そんな長いキャリアを誇るディーゴが、遂にリリースしたディーゴ名義の初アルバムがこの "A Wha' Him Deh Pon?" ってことになる。
* Dego "A Wha' Him Deh Pon? by SOUNDROTATION
上に貼ったプレーヤーで全曲のダイジェストがプレヴューできるんだけど、見てわかる通り、全 20 曲っていうヴォリュームにまずビックリ。まぁ、近年はかなり多作になってはいたんだけど、さすがに 20 曲も入ってるとは予想してなかった。
サウンド的には、冒頭に「ディーゴ名義でのリリースに相応しい、これぞディーゴってサウンド以外の何モノでもない」って書いた通り、2000 ブラック以降のディーゴらしさが前面に出てる感じかな。
実は、4 ヒーローの作品でも、特に "Creating Patterns" 以降のモノに関しては、よく聴くと主にディーゴがイニシアチヴを取ってるトラックと、主にマークがイニシアチヴを取ってるトラックに分かれてることがわかったりするんだけど、その辺りのプロダクションも含めて、1990 年代末以降の、ポスト・ドラムンベース期のディーゴならではのサウンドって言えると思う。
その特徴を一言でいうと 'ブギー感' ってことになるのかな。実は、イギリスのメディアに 'ブロークン・ビーツ' とか 'ウェスト・ロンドン' とか言われ始めた頃から、ディーゴ自身は自分のやってるサウンドについて、'ロンドン・ブギー・スタイル' とか 'ロンドン・ブギー・サウンド' とかって言い方をしてた(あまり理解されなかったのか、メディア等ではあまり使われなかったけど)。
もともと、わりとヒネクレたところがあって、特定のジャンルの中で語られたりすることは嫌ってたんで、こっちから訊かなきゃ「別に何て呼ばれてもいい。気にしてない」的なことしか言わなかったんだけど、「'ブロークン' って、別に壊れてねぇし」とか「別に 'ウェスト・ロンドン' じゃねぇし」とか言いながら、「強いて言うなら」みたいな感じで使ってたのが 'ブギー' って単語だった。
まぁ、ここで 'ブギー' って音楽について、それこそジャズとかブルーズを引き合いに出して論じてたらメチャメチャ長くなるし、そもそも、それほど詳しく語れる自信もないから、あくまでも印象って感じだけど。でも、最近の音楽シーンではそれほど使われることのない 'ブギー' っていう言葉の持つボンヤリとしたイメージが、妙に自然に重ねられるのも事実だったりする。音楽的ではあるんだけど、あくまでもビート・オリエンテッドで、体感的にやや速くて刻みが多めで(必ずしも BPM が速いってわけじゃなかったりするけど)、ちょっとウネるようなグルーヴが。
もちろん、特定のリズム・パターンの曲ばかりってわけじゃなく、曲ごとに変幻自在にいろんなパターンとかスタイルを使い分けてるんだけど、質感的には統一感がある。それが、ここで言うところの 'ブギー感' みたいなモノで、「ディーゴ名義に相応しいディーゴらしさ」ってことになるのかな。
あと、それぞれの曲が短いことも特徴。何曲か長い曲もあるけど、大部分が 2 〜 3 分程度のトラックだったりする。まぁ、曲数が多いせいでもあるのかもしれないけど、全体を通して、タイトにドンドン展開してく印象かな。個人的には、気持ちいいループなら何分でも聴いていたいタイプなんで、「もうちょっと聴かせてくれ」的な感じもないことはないけど。
実はディーゴはちょっと前から拠点を NYC に移してて、このアルバムも基本的には NYC とロンドンの両方で作られてるんだけど、参加アーティストについても、これまで通りのロンドン / 2000 ブラック人脈とアメリカ人脈がもいい感じのバランスで入ってる感じ。けっして話題性を狙ってないっぽいところもディーゴらしい。
ロンドン人脈っていえば、まず欠かすことができないのがカイディ・テータム。個人的にはかなり気に入ってるインストゥルメンタルの "We Are Virgo" で絶妙のコンビネーションを披露しているんだけど、この 2 人は本当に相性がいい。カイディ・テータムと仕事をするようになってから、明らかにプロダクションのペースが上がった印象すらあるくらい。ミキシング・エンジニアを務めてて、"Da Fuzz" に参加してるマット・'ローダマーシー'・ロード(MATT 'LORDAMERCY' LORD)はバグズ・イン・ジ・アティック・クルーの一員としてお馴染み。この辺の絡みは、まぁ、間違いない。
一方のアメリカ人脈で目を魅くのはジョージア・アン・マードロウ(GEORGIA ANNE MULDROW)とテイラー・マクフェリン(TAYLOR McFERRIN)。"Sparkling Minds" に参加してるジョージア・アン・マードロウは、彼女のアルバムのレヴューでも触れた通り、ストーンズ・スロウ(Stones Throw)周辺とかデクレイム(DECLAIME)ことダドリー・パーキンズ(DUDLEY PERKINS)関連の作品で知られる、言わずと知れた実力派女性アーティスト / シンガー / プロデューサー。"Sparkling Minds" は、彼女自身の作品にはあまりないタイプのトラックって言えるかな。もう 1 人のテイラー・マクフェリンはフライング・ロータス(FLYING LOTUS)主宰のブレインフィーダー(Brainfeeder)所属のアーティストで、2 分もない "Interlude" に参加してるんだけど、このトラックが個人的にはメチャメチャツボな 1 曲。メロウで心地いいグルーヴがアルバムの中でいいアクセントになってるんだけど、個人的には 10 分くらいやって欲しいくらい気持ちいいトラックに仕上がってる。
20 曲もあるんで、とても 1 曲ずつ触れたりはできないけど、ポスト・ドラムンベース期のディーゴはヴォーカル・トラックも積極的に作ってきてるんで、ヴォーカル・トラックとインストゥルメンタルもいい感じ。必ずしもインストゥルメンタルが地味ってわけではないところもディーゴっぽいし。
ちなみにタイトルの "A Wha' Him Deh Pon?" ってのは「アイツは何をやってんだ?」みたいな意味のパトワ(ジャマイカで使われている英語)なんだとか。わかりにくいことこの上ないけど。
まぁ、ディーゴって、「わりとヒネクレたところがある」って書いた通り、もともとわかりにくいことがわりと好きというか、あまり自分が全面に出たがらないところがあって。裏方気質というか、職人気質っていうか。やたらといろんな名義を使い分けてたのも、単にクリエイティヴな理由からだけじゃなかったと思うし。「クレジットとかまでよく見て気付いたヤツだけがニンマリしてくれればいい」的なメンタリティとでも言えばいいのかな(イギリスのインディ気質のアーティストにはけっこう多いけど)。
4 ヒーローでメジャー・レーベルからリリースしてたときも、アーティスト写真のピントが合ってなかったりしてたし、プロモーション・ヴィデオにも出たがらなかったし。何年か前には「これからは 2000 ブラックの裏方としていろんなアーティスト、特にヴォーカリストをフロントに立てたモノのプロデュースなんかに力を入れたい」みたいなことを言ってたし。だから、かなり熱心に追いかけてる一部のリスナー以外からは、実績とかクオリティのわりに、なかなかキチンとした評価を受けてないようなところがあって。まぁ、自業自得というか、自分で望んでた面もあるけど、まぁ、プロモーションしにくいことこの上なかったし、客観的に見ると損してた感は否めない。
それが今回、どんな心境の変化があったのかは知らないけど、ストレートにディーゴ名義で、内容的にもディーゴ名義に相応しい、バッチリな内容に仕上げてきたのは素直に嬉しい限り。個人的にも、いい方向性だと思うし。
それだけじゃなくて、なんと今回は "Monday Blues" って曲のプロモーション・ヴィデオまであって、しかも、本人がバッチリ出てたりまでして。ちょっとビックリ。まぁ、出来映えもバッチリで、なかなかクールなんだけど。
d e g o 'Monday Blues' from 2000black on Vimeo.
すっかり長くなっちゃったけど、まぁ、他ならぬディーゴがディーゴ名義のアルバムを出したとあっちゃ、仕方がないかな、と。いい機会だし、それに相応しい内容だし。別に今の時代の最先端でもないし(そもそも、'最先端' とか、ちょっと胡散臭いし)、プロモーション的な意味で派手さとかキャッチーさがあるわけでもないし、これでドカーンと大ブレイクして、大きな野外フェスティヴァルとかに出たりするようになるとは思えないけど、もう何度も繰り返し聴いてるけど全然飽きないし、贔屓目(耳?)抜きにしても、なかなかタイトでアディクティヴな、充実したアルバムに仕上がってんじゃないかな、と。
DEGO "A Wha' Him Deh Pon?" (2000Black) ★★★★★
Link(s): 2000black.com / iTunes Store / Amazon.co.jp
0 comment(s)::
Post a Comment