2009/04/15

Deep inspirations.

"Inspiration Information, Vol. 3"

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THE HELIOCENTRICS & MULATU ASTATKE(Strut)

前にもアンプ・フィドラーとスライ & ロビー盤アシュレイ・ビードルとホレス・アンディ盤をレビューしたイギリスのストラット・レーベルのコラボレーション・アルバム・シリーズの第 3 弾で、前にストーンズ・スロウからリリースしたアルバム "Out There" をレビューしたイギリスの 9 人組のジャズ・ファンク系バンドのザ・ヒーリオセントリックスとエチオピア人のジャズ・レジェンド、ムラトゥ・アスタトゥケのコラボレーション。スライ & ロビーホレス・アンディと来たんでレゲエをベースにしたシリーズなのかと思いきや、別にそういうわけではないらしい。ただ、時代と国境を越えて、ルーツと現代のコラボレーションを実現するってことらしく、やっぱり、すごくいいプロジェクトだし、ただ企画がいいだけじゃなく、出来映えも抜群で、期待を裏切らないディープな仕上がり。

ムラトゥ・アスタトゥケといえば、'Ethiopiques' シリーズで有名な、言わずと知れたアフリカン・ジャズのリヴィング・レジェンドなわけで、2005 年にはジム・ジャームッシュ監督の映画『ブロークン・フラワーズ』のサウンドトラックでも知られるミュージシャン。一方のザ・ヒーリオセントリックスは、サン・ラを彷彿とさせるような壮大なスピリチュアル・ジャズを聴かせる9 人組のバンド。もともとアフロセントリックな要素も持ってるんで、ムラトゥとの相性が悪いわけもない。

もともとは、2008 年にイギリスでムラトゥがライヴを行ったときにザ・ヒーリオセントリックスがバックを務めたのがきっかけだったらしい。リハーサル 1 日で臨んだというそのライヴの出来映えも素晴らしかったらしく、その流れでこのレコーディングになったってことなんだけど、そういう流れで実現したレコーディングで出来が悪い作品ができるわけがない(ストラットの作ったプロモーション用のインタヴュー・ビデオを観ると雨漏りするスタジオで録ってるんだけど)。アンプ・フィドラーとスライ & ロビー盤アシュレイ・ビードルとホレス・アンディ盤と比べると、異種格闘技戦色が薄いというか、わりとジャンルが近いのと、ライヴ同様、ムラトゥをザ・ヒーリオセントリックスをバックアップしてる感じが強いからか、本来、ザ・ヒーリオセントリックスにはもうちょっと雑食性があるけどそれが抑えめで、異ジャンルのコラボレーションから生まれる意外性みたいなモノというよりは、よりオーソドックスな、いい意味でコラボレーションっぽくないというか、違和感のない仕上がりって印象ではある。でも、保守的だったり緩かったりするわけじゃなくて、実験的なフュージョンではあったりするから不思議なんだけど。

そういえば、ムラトゥはモチーラの主宰するタイムレスでストーンズ・スロウ・クルーとも共演してたし、ここにきてにわかに活動が活発化してきてていい感じ。いいカタチで新しいアーティストとフック・アップして、一緒に何かをやりながら、お互いの持ち味を出して、大事なモノを継承しながら作り上げていく感じは、音楽に限らず、いろんなジャンルですごく大事なことだと思ってる(特に高齢化が進む日本では)んで、そういう意味でもすごく参考になるというか、インスピレーションになる。


THE HELIOCENTRICS & MULATU ASTATKE "Cha Cha"
(From "Inspiration Information, Vol. 3")










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