2008/10/27

21st century Brasilian vibes.

"ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力"(東京都現代美術館) 

2008 年 10 月 22 日から 2009 年 1 月 12 日まで東京都現代美術館で開催されている企画展で、1990 年代以降のブラジルのアーティストの作品を集めたもの。サブ・タイトルは 'When Lives Become Form'。まぁ、そういうこと。英語じゃなくてポルトガル語のほうがいいと思うけど(たとえ伝わりにくくても)。

「トロピカリア(Tropicalia)」とは 1960 年代にブラジルで起こったムーヴメントで、欧米の文化的な束縛から脱して「熱帯に住む者の文化のオリジナリティ」を謳ったブラジル独自の文化の創造を目指したもの。このムーヴメントの、特に音楽面については、カルロス・カラード『トロピカリア』とクリストファー・ダン『トロピカーリア ー ブラジル音楽を変革した文化ムーヴメント』で詳しく紹介されているし、同名のコピレーションもリリースされてるけど、1960 年代に世界中で同時多発的に起こった多くのムーヴメントがそうであるように、トロピカリアも音楽だけではなく、アートや思想などを含む総合的なムーヴメントだったし、今、あらためて見てみても、とてもパワフルで興味深い。


ブラジル移民 100 周年、「日本ブラジル交流年」を記念して開催される今回の「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」では、そんなトロピカリアの思想を今に息づかせている 1990 年代以降のアーティストの作品や国際的に活躍している日系アーティストの作品を展示するということで、メンツも素晴らしいし、とても期待していたんだけど、そんな期待を裏切らない内容だった。

地上 2F・地下 1F を使ったなかなか大規模なスペースの中に、ペインティングや写真だけでなく、オブジェ、映像・音・動きを使ったものなど、バラエティに富んだ作品が数多く展示されていて、ジックリ時間をかけて堪能できるような内容。個人的には、もちろん好きなモノもそれほどでもないモノもあるけど、やっぱり全体から感じられるのは「発想がメチャメチャ自由だなぁ」ということ。別に、あからさまにブラジル・テイスト(ステロタイプなブラジルのイメージ)を押し出してるんじゃないけど(考えてみれば、日本のアーティストだって、マトモなヤツならあからさまに「いわゆる日本」なイメージを押し出したりはしない)、やっぱり、随所からブラジルらしさが感じられるから不思議。特に感じるのは、色使いとか、コントラストの強さとか、不思議なパワーとか、アイデアの独創性とか。ブラジルに行ったときに感じたことが、「アート」ってフォームの中で表現されてる感じで、とてもインスピレーションに富んでるし、熱い息吹きみたいものがビンビンと伝わってくる。「トロピカリア」(=「トロピカリズモ」。個人的にはこっちの呼び方のほうが好き。'tropical' って単語と '-ism' って接尾語のミス・マッチ感が絶妙なので)ってのはこういうことなんだろうし、そういうものは意識する・しないに関わらず、受け継がれているものなんだろうなぁ、と。

ただ、展覧会カタログ「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」が(展示が始まってるにも関わらず!)できてないのはいただけない(11 月下旬予定)。展覧会カタログがあることが告知されてたから、詳細は後で確認しようと思って現場では確認せずにスルーしてたのに。予約+郵送ってのも可能みたいだけど、そういうモノじゃないと思うので、テンション的に。これだけはちょっとガッカリ。これがなければ ★ x 5 だったのに。あと、頑張って作ったのはわかるけど、今時、オフィシャル・サイトがフル・フラッシュのみっつうのも、ちょっとビミョー。iPhone フレンドリーじゃないことこの上ない。

あと、素朴な感想として、¥1200 でこんな展示が見られて、しかもアーティスト・トークは無料だったりして、あらためて考えてみるとすごいことだなぁ、と。いわゆるコマーシャルなイベントのような派手さがないからついつい見落としがちだけど、こういう場があることってすごく貴重だし、どんどん使わないともったいない。

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