2008/12/29

Deep voice of Philadelphia.

"Ruckus Soundsysdom". URSULA RUCKER(Five Six Media) 

フィラデルフィアの女流詩人、アースラ・ラッカーの 4 枚目のフル・アルバムで、同郷のソウルメイト、キング・ブリットの主宰するプロダクション / レーベル、ファイヴ・シックス・メディアからのリリース。

アースラのことを初めて知ったのは、同じく同郷のザ・ルーツのアルバム "Do You Want More?!!!??!" に収録されてた "The Unlocking" だったと思うんだけど、最初に強烈なインパクトを受けたのは 4 ヒーローのアルバム "Two Pages" のオープニング・トラック、"Loveless" を聴いたとき。"Two Pages" 自体も、印象的に使われているストリングスなどのライヴ・インストゥルメントを全面に導入した斬新で音楽性の高いサウンドとソングライティングで、ドラムンベースって枠を軽々と超えて当時のドラムンベース / クラブ・ミュージック・シーンの度肝を抜き、新しい時代の扉を開けたクラシック・アルバムだと思うけど、そのアルバムの革新性と音楽性の高さを象徴していたのが "Loveless" で、アースラのポエトリー・リーディングのメッセージが効果的に、メチャメチャ強烈に心に響いてきた。

それ以来、アースラがフィーチャーされた曲はマメにチェックしてきたんだけど、キング・ブリットの "Circles" や、日本のサイレント・ポエッツと共演した "Get Ready"(アルバム "For Nothing" 収録)等、秀作が多い。そんな風に、さまざまなアーティストとコラボレーションしながら、トラックがどんなサウンドでも、いい意味で自分の曲にしちゃうようなパワフルな存在感を放つ彼女は、"Supa Sista"(2001 年)・"Silver or Lead"(2003 年)・"Ma'at Mama" (2006 年)の 3 枚のアルバムを k7 からリリースしてる。パフォーマンスのスタイルは基本的にポエトリー・リーディングで、ラップともヴォーカルとも違う独特の存在感。アーティストであり、アクティヴィストであり、母親である彼女の紡ぎ出す言葉はとてもディープで、とてもドープ。いつも活動が気になるアーティストだ。

k7 を離れて(?)キング・ブリットの主宰するファイヴ・シックス・メディアからのリリースとなった今作も基本的な存在感は変わってない。トラック的にはアブストラクトなダウンテンポ・トラックからエレクトロニカっぽい音響系な響きのトラック、ちょっとヒップホップ寄りのトラックまで、わりとヴァラエティに富んでて、いい意味で飽きさせない。特にエレクトロニカっぽいトラックが、思った以上に相性が良くてちょっと新鮮。リリックももちろんドープで、もちろん全部を理解できてるとは言えないけど、それでも断片的に脳ミソに飛び込んでくる。通して聴いてもメリハリがあるし、それぞれの曲もクオリティが高くて、なかなか充実した 1 枚。

ポエトリー・リーディングって、日本ではなかなか馴染みの薄いパフォーマンス・スタイルだけど、そういうジャンル云々を抜きにして、こういうレベルの作品はもっと注目されていいはず。

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