2009/01/16

Solid sound of past, present and future.

SATOSHI TOMIIE "Renaissance Presents 3D: Mixed by SATOSHI TOMIIE"
(Renaissance) 

"Renaissance The Master Series" をレビューするのを機会に、富家哲がルネッサンスからリリースした他の作品も聴き直してみたので、合わせてレビューを(次のエントリーも同様)。

富家氏は NYC 在住のプロデューサー / DJ で、海外のクラブ・ミュージック・シーンで活躍する日本人の先駆者として、かれこれ 20 年くらい活躍してるアーティスト。デビュー曲の "Tears" は今でもハウス・クラシックとして語り(聴き)継がれてるし、数々のメジャー・アーティストのリミックスを手掛けてたりしながら、今もなお、世界のクラブ / ハウス・シーンの最先端で活躍してて、さらに、自身の主宰するレーベル、SAW も好調だったりと、まさに、第一人者に相応しい活躍を続けてる。

この "3D" は、ルネッサンスのコンピレーション・シリーズの中でも一番内容が濃いというか、そのアーティストの本質が味わえるなかなか好企画な 3 枚組コンピレーションで、この富家氏のヴァージョンは 2006 年のリリース。3 枚のディスクにはそれぞれ 'Club'・'Studio'・'Home' というテーマが与えられていて、ディスク 1 の 'Club' は、DJ としてのアップ・トゥ・デートなプレイをそのまま収録したミックスで、文字通り、この時点での最先端のクラブでのサウンドや空気感を再現したものになっている。'Studio' がテーマのディスク 2 は、自身のこれまでのトラックや他のアーティストの曲のリミックスをミックスしたモノで、ループ 7 名義の名曲 "The Theme" と不朽のハウス・クラシック "Tears" をセルフ・リプロダクション(リミックスというよりもリプロダクションと呼んだほうがニュアンスは近い)の連発で幕を開けるオープニングは、オールド・ファンにとっても嬉しい限りだし、かと言って、単に懐メロにならないようにキチンと手を加えてるところが富家氏らしいところ。ディスク 3 のテーマは 'Home' で、タイトル通り、クラブでもスタジオでもなく、家でリラックスしたときに聴くことをテーマに選曲されていて、自身が影響を受けたというアジムスの "Fly Over The Horizon (V o Sobre O Horizonte)"(もちろん『クロスオーバー 11』のテーマ曲)やロイ・エアーズの "Running Away"、マイルス・デイビス&ギル・エヴァンスの "Solea" など、テーマに相応しいクラシックが収録されている。

この "3D" シリーズは、コンセプト的にもすごく面白い(タイトル通り、そのアーティストの本質が立体的に味わえる)し、でも、アーティストとしての懐の深さがないとクオリティが伴わない(音楽的なクリエティヴの面でも、実績・キャリアの面でも)、けっこうアーティストを選ぶというか、人選が難しい企画だと思う(底の浅いアーティストだと薄っぺらい内容になるか、そもそも成立しないので)けど、富家氏ならピッタリだし、その企画の面白さを最大限活かし切ってるあたりはさすがとしか言いようがないな、と。1 ファンとして素直に脱帽だし、純粋にすごく楽しめる。

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