2009/10/15

Wild style.

野性の実践』ゲーリー・スナイダー 著 原 成吉重松 宗育 訳
(山と溪谷社) ★★★ Link(s): Amazon.co.jp

今日はブログ・アクション・デイ '09(Blog Action Day '09)で、今年のテーマは 'Climate Change' ってことなので、それに合わせたエントリーを。で、何をピックアップしようかなって考えた中で、一番相応しいというか、個人的に一番シックリくるのはゲーリー・スナイダーのこのクラシックかな、と。

個人的には 'Climate Change' ってテーマ自体、なかなか難易度が高いっていうか、個人的には「一筋縄ではいかない」って印象があるテーマって気がしてて。まぁ、翻訳すると「気候変動」ってことになるんだろうけど、「気候変動」とか、その原因だと言われてる「温暖化ガス(CO2)削減」とか、ちょっと、頭から信用しちゃって平気? みたいなところもあったりして。そんなに簡単にわかったり、割り切れたりする話じゃないと思うんだけど、なんか、その議論抜きで「前提」になっちゃってて、あたかも「それだけやっとけば OK」的な風潮になってる感じにはちょっと違和感があって。ホントにそうなのか? ってのはキチンと議論・検証されるべきだし、決してそれだけで OK なんて話じゃないはずだし。

まぁ、もちろん、アンチ・エコロジーなわけでは全然なくて、むしろ、すごく興味がある話ではあるんだけど、だからこそ、本来、すごく複雑で多岐にわたるはずの「環境問題」とか「エコロジー」とかが、「気候変動」とか「温暖化ガス(CO2)削減」とかに単純化して、CO2 だけを悪者にしてる(ような)風潮に違和感がある、って感じかな。

そうは言っても、ブログ・アクション・デイ '09テーマは 'Climate Change' ってことなので、そのイメージにシックリくるのはなんだろう? って考えると、百年の愚行』とか『不都合な真実』 もアリかなと思ったけどやっぱゲーリー・スナイダーだろ、と。個人的には。「環境問題」だけじゃなく、それを含んだもっと大きな話なんで。

この『野性の実践』はゲーリー・スナイダーが 1990 年に発表したエッセイ集 "The Practice of the Wild" の邦訳で、手元に持ってるのは 1994 年に東京書籍から出版されたモノなんだけど、上の写真は 2000 年に山と溪谷社から出版された改訂版。こちらのほうが手に入りやすそうなので。かなり前にレヴューした『惑星の未来を想像する者たちへ』はこの『野性の実践』の続編的な作品ってことになるのかな。まぁ、『惑星の未来を想像する者たちへ』と並んで、ゲーリー・スナイダーの思想とか世界観がすごくわかる一冊であることは間違いない。

ゲーリー・スナイダージャック・ケルアックの『ザ・ダルマ・バムズ』 のジャフィーのモデルとなったことで知られるオリジナル・ヒートニクスのひとり。ケルアックとかギンズバーグとかバロウズとか、多くのビートニクスが激しく、早急に人生を駆け抜けた印象なのに対して(若いうちはそういう生き方のほうがグッときちゃいがちだったりもするし)、スナイダーは静かに、でも力強く、一貫した姿勢で創作活動を行い、ライフスタイルを提案してきたオリジナル・ヒートニクスの数少ない生き残りのひとりで、正真正銘のリヴィング・レジェンド。1974 年に発表した代表的な詩集『亀の島』("Turtle Island")ではピューリッツアー賞を受賞してて、今はビート〜ヒッピー的な流れをルーツにしつつ、もっと広くて深いネイチャー・ライティングとかディープ・エコロジーとかって呼ばれるような作品を発表してる。

ここで唱えられてる考えのベースにあるのは仏教 / 禅なんだけど、それは宗教というより
も自然観とか人生観って肌触り。そこにはネィティブ・アメリカンの土着の思想とかアニミズムとかコスモポリタニズムなんかも含まれてて、ゲーリー・スナイダーならではの、さまざまな叡智を活かしながら自然と共生していくライフスタイルが提唱されてる感じ(彼はそれを実戦してる)。

特に、タイトルにもなってる通り、「野性(the wild)」ってのが大きなテーマになってるんだけど、「野性」ってのは、カタカナで書く「ワイルド」って言葉が持ってるような、ただ荒くれてるような感じか、無闇に原始的な感じではなくて、荒々しさも含みつつも、静かでもあり、大きくて深いイメージ。何だろう? 生きていくための「素の足場」みたいなことなのかな? そういう「野性」を再認識して、実戦することこそ、「環境」って「野性」の中で、自ら「野性」して生きていくことに関する問題=ホントの意味での「環境問題」なのかな、なんて思ったりするし。あと、やっぱり、「実践(the practice)」、もちろん、超大事。いろんな意味ですごく示唆に富んでるし、

今回はブログ・アクション・デイ '09 にかこつけてピックアップしてみたけど、『惑星の未来を想像する者たちへ並ぶパーソナル・クラシックな一冊であることは間違いない。別に最近読んだってわけじゃないけど、まぁ、いつ読んでいい本だし、今の時代に対する示唆に富んだ一冊でもあるし。まさにクラシックの名に相応しいな、と。

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