2009/02/22

Still young, gifted and black.

"Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit"

. NINA SIMONE(RCA)

個々にはこれといった理由はないんだけど、そのひとつひとつが何か大きな枠でつながってるような、ちょっと不思議な感覚を持つことがたまにある。そういうことなのか、「訳あって」か「訳もなく」かわかならいけど最近はクラシック、特に60 〜 70 年代のブラック・ミュージックとブラジル音楽を掘ってみてるだけど、そんな中で最近聴き直してグッときちゃったのがニーナ・シモン。やっぱりムチャムチャソウルフルでドープなヴォーカルが素晴らしい。

ニーナ・シモンは 50 年代から活躍したジャズ・シンガー。ジャズ〜ゴスペル〜ソウル・ミュージックはもちろん、ロック〜フォークなんかまで感じさせるサウンドに乗って聴かせる存在感抜群のパワフルなヴォーカルは、メアリー・J・ブライジやローリン・ヒルからアリシア・キーズやジェフ・バックリーまでその影響を公言してるような魅力を持つアーティストで、公民権運動の活動家としても知られてる。特に有名なのはやっぱり公民権運動のアンセムの 1 曲で、アレサ・フランクリンダニー・ハサウェイボブ・アンディ & マーシャ・グリフィスのカヴァーでも知られる不朽の名曲 "To Be Young, Gifted & Black"(作曲はニーナ自身で、作詞はバンドのメンバーとしても支えたウェルドン・アーヴィン)で、これはもう、文句なしの 1 曲なんだけど、カバーもメチャメチャ良くて、この "Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit" にはザ・バーズの "Turn! Turn! Turn!" とボブ・ディランの "The Times They Are A-Changin'" のカヴァーが収録されてるんだけど、ディランの "The Times They Are A-Changin'" をこんな風にメチャメチャドープにカヴァーしちゃうなんて! 数ある "The Times They Are A-Changin'" のカヴァーの中でもナンバー 1 なんじゃないかな。こういう「ジャズ」っていう狭い枠にとらわれない感じとか、ジャンルを超えたオリジナルなカヴァーとかを聴くと、イメージとしてはカサンドラ・ウィルソンに近いというか、彼女のルーツみたいなイメージが感じられる(例えば、"Blue Light 'Til Dawn" に収録されてるヴァン・モリソンの "Tupelo Honey" とか "Travelling Miles" に入ってるシンディ・ローパーの "Time After Time" とか)。まぁ、歌ってる姿はド迫力で、アレサとかのイメージに近いけど。

この "Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit" は 2006 年にリリースされたコンピレーションで、『Coyote』誌の最新号(ロバート・フランクの特集。読み終わったらあらためてレビューするつもりだけど、素晴らしい内容)の中の、「ピーター・バラカンが選ぶ『ザ・アメリカンズ』のためのサウンドトラック」っていう素晴らしいページの中で紹介されてるのを見て思い出した 1 枚。ピーター・バラカン氏といえば、個人的には最も信頼できる音楽評論家のひとり(最近リイシューされた『魂(ソウル)のゆくえ』はクラシックだと思う)なんで、やっぱりセレクトも内容もさすがなんだけど、やたらと多作なニーナ・シモンなだけに、入門編としても、容量の限られた iPhone / iPod に入れとくにもピッタリ。

バラク・オバマが大統領になり、新しい時代を迎えたことはまず間違いないけど、2 月 18 日の "NY POST" 紙に掲載されたカートゥーンが大きなニュースになったりしてるし、 "Democracy Now!"コーネル・ウェストが言ってたように、人種問題は、新しいフェーズには入ったけど、なくなったわけではないのは明らかなわけで、だからこそ、これまでの歩みをキチンと知っておくことは大切だし(だからこそ、勝利演説にあれだけ歴史を散りばめてるんだろうし)、すごくいいキッカケなんじゃないかな、と。

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