(A-Works) ★★★★☆
『4travel vol.1 楽園革命 キューバへの旅』
(角川メディアハウス) ★★★★☆
どちらもちょっと前に発売された雑誌だけど、それほどの頻度で発行されてるわけじゃないっぽいのでまだ普通に店頭に並んでるだろうし、そして、別に相互に関係があるわけじゃないけど奇しくも近いタイミングで発売されて、テーマが近かったので、合わせてレビューを。
テーマは見ての通り「キューバ」。まぁ、チェの映画が契機のひとつになってるんだと思うけど(そういえばまだ見れてない)、個人的には、チェの映画の有無に関わらず、今、いちばん行ってみたい場所・国(ふたつは意味が異なる)のひとつだし、ちょっと前からホセ・マルティの本を読んでたりもするんで、もちろん要チェックだろ、と。
『旅学』は 'No. 3' ってなってるから 3 号目なのかな。今まで、店頭では見たことがあったけど、買ったことはなかった。出版してる A-WORKS という高橋歩の本をたくさん出してるって印象くらいしか持ってなくて、しかも読んだこともないから、先入観レベルのイメージしかなかったんだけど、『旅学』を読んでみて感じたのは、やっぱり、なんとなく、ちょっと青くてテレくさい感覚。キライじゃないだけど、同時に、やっぱりどっかでちょっと引いちゃう部分もあって。ヒネクレ者だからか、年をとったからなのか。
まぁ、そういう感じをちょっと持ちつつも、内容はなかなか読み応えがあって面白いし、写真もキレイ。サブ・タイトルは「 美しきカリブ、ふたつの幸福」で、キューバとジャマイカっていう、近くなのに微妙に似てなくて、あまり並べて語られることのないふたつの国を並べて紹介するのってすごく新鮮。両国の共通点は地政学的な部分、つまりカリブの島国であることと、素晴らしい音楽を生み出したこと。片や元スペインの、片や元イギリスの植民地。宗主国こそ違っても、基本的にはあまり代わらない構図ってこと。
でも、近現代になるとだいぶ様相が変わってくる。キューバはスペインの後、アメリカに実質的に植民地化されたけど、革命を起こし、その後、アメリカに逆らい続けてはや 50 年。「清貧」路線というか、慎ましくもパワフルに、楽しげに生きてきた。その結果として、このご時世にはむしろすごいストロング・ポイントになってる国家レベルの優れた有機農業と医療を持ってたりする。その辺の内容が、堅苦しい感じじゃなくて上手くまとめられてるんで、あまり予備知識がなくても楽しみやすい。
一方のジャマイカはイギリスから独立した後、地政学的に近いアメリカの影響をモロに受けて、「拝金」路線というかグローバリズムというか、治安の悪化とか格差とか、ティピカルな問題を抱えながら物質文化を追従してる。日本も含めて、世界中のほとんどの場所が似たような状態ではあるんだけど、ボブ・マーリーが "Stand up for your rights!" って鼓舞した国だって考えると、その現状はかなり微妙というか、複雑な心境だったりする。誌面的には、ジャマイカ部分は写真と詩(なのか?)と原稿がひとつだけなんで、キューバ部分と比べると、ちょっと多角性は欠けるかな。一発勝負と言えば潔いけど、予備知識なしだとちとツライかも。
まぁ、それにしても、すごいコントラスト。「場所」としてはメチャメチャ近いのに、「国」としてはけっこう遠い。地図で見たら近くてビックリ。大きさの違いにもビックリだけど。こういうくくり方、言い換えれば「編集」ってすごく面白いし、正直、ちょっとヤラレタ感もあったりして。
他にも、トータス松本のカリフォルニアへのサーフ・トリップとか、これまでに何度か触れてる福岡正信氏についてだったり、冬の富士登山の記事だったり、なかなか面白い記事と写真が載ってて。雑誌自体のテーマが「旅」なんで、その時点である程度、ストライク・ゾーンではあるんだけど、期待したよりも楽しめた印象。
一方の『4travel』は、「旅行のクチコミサイト」というキャッチ・コピーの付いたサイト、4travel からスピン・オフした(って言っていいのかな?)雑誌(っていうか、ムックっぽいけど)。こちらの特集もキューバなんだけど、ハイライトは何と言ってもあのシエラ・マエストラ(そう、「あの」シエラ・マエストラ!)に登った記事。メチャメチャ行ってみたいだけに、個人的にはこれだけでももうすでに満足なんだけど、他にもキチンと歴史やら名所やら音楽やらもキチンと触れられてて、なかなか充実した内容になってる。
しかも第 2 特集が、スペイン〜モロッコへの自転車の旅! これも、前からスペイン〜ジブラルタル〜モロッコってのに興味があったんでドンピシャなんだけど、しかもチャリかよ、って。すごく魅力的。他にも、「次なる世界遺産を探せ」とか「日本最古のブランド 出雲」とか、まぁ、4travel なんで、ちょっとライトなまとめ方ではあるんだけど、これはこれでなかなか面白いし、間口は広いのかな、と。
まぁ、「旅」と「旅行」って似て非なるというか、だいぶイメージの違う言葉で、あえて区別するなら『旅学』は「旅」、『4travel』は「旅行」ってイメージなのかな。どちらもいい意味で。まぁ、広義の「旅」については、それこそ古今東西世界中の作家やら学者やら哲学家やら中田英寿やらがいろんな言葉で定義してるわけだけど、個人的には LB 総出演フィーチャリング・スカパラのスチャダラ・クラシック "Get Up & Dance"("スチャダラ外伝" 収録)のボーズのパンチライン「トール ダーク ハンサム ブサイク イカリ肩 デブ チビ メガネにヒゲ ワシ鼻 人との出会いが旅だから 借金してでも行きたいな」なわけで、「旅」をテーマにした雑誌なんて面白くならないわけがないと思うんだけど、この 2 冊を読んでたら、なんか、ちょっと、っていうか、すごく、どこかに行きたくなっちゃった(っつうか、キューバに、なんだけど)。あらためて。
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