2009/06/14

Vinte anos depois.

NARA LEÃO "Dez Anos Depois" (Universal)  Link(s): Amazon.co.jp

雨のパリの街にたたずむモノクロのアートワークが印象的なナラ・レオンの 1971 年リリースのアルバム。「美しきボサノヴァのミューズ」というステキな邦題が付いてて、収録曲もボサ・ノヴァのスタンダードばかりってことで、多作なナラのディスコグラフィの中でも評価が高いというか、人気のある作品だし、ボサ・ノヴァを代表する 1 枚だと思うけど、まぁ、ご多分に漏れずわりと好きなアルバムだったりする。最近、ちょうどいろいろとボサ・ノヴァについてあらためて勉強してみたりしてるんだけど、偶然か必然か、こないだ、宮沢和史さんの『BRASIL SICK』のレヴューでもちょこっとだけ触れた中原仁さんのブログで 6 月 7 日がナラの 20 周忌だったことを知ったので、あらためて取り上げてみようかな、と(そういえば、その 3 日前の 6 月 4 日は天安門事件から 20 年。全然関係ないけど)。ナラはすごく多作だし、日本でもいいコンピレーションがたくさん作られてるし、「ボサ・ノヴァのミューズ」と呼ばれながら、実はボサ・ノヴァと距離を置いて作ったボサ・ノヴァ以外の作品も多いから、どれにしようか悩んだけど、やっぱりというか、あえてというかわかんないけど、これかな、と。

英語で言うと 'ten years after' って意味のタイトルが付けられたこのアルバムは、アートワークの写真の撮影と同様に、レコーディングも当時滞在してたパリで行われてて、アートワークのイメージ通り、「明るくて爽やか」なボサ・ノヴァのステロタイプなイメージとはちょっと一線を画した 1 枚。まぁ、簡単に言っちゃうと、「明るくない」ってことなんだけど。でも、実はボサ・ノヴァって、一般的なステロタイプのイメージ(「オシャレなカフェ・ミュージック」みたいなヤツね)とは違って、「明るくない」って側面も内包してると思ってて(この辺の「ボサ・ノヴァ観」みたいのをキチンと整理したくて、最近、あらためて勉強してみたりしてるんだけど)、そういう、本来、ボサ・ノヴァが持ってる特徴のひとつがわりと顕著に、とても美しいカタチで表れたアルバムかな、と。ほぼギター(と一部、ピアノ)とヴォーカルだけのミニマルなサウンドで、爽やかでありながら、同時にしっとりしてて、クールさと陰鬱さを併せ持ってて、なかなか味わい深い。まぁ、ちょっとメランコリックすぎるところも感じなくはないけど、ボサ・ノヴァってアート・フォームが持ってる美しさと同時に、リスナーに安易に媚びないような、一本芯が通ったような彼女のヴォーカルの魅力を堪能できる 1 枚かな、と。

それにしても、ナラ・レオンって、決してメチャメチャ美人ってわけではないと思うけど、なんか可愛らしいアートワークが多くて不思議なアーティスト。アートワーク映えするっていうか、フォトジェニックというか、すごく不思議なキャラクターだなぁ、なんて思ったりもする。

ともあれ、冥福を祈りつつ。


NARA LEÃO "Garota de Ipanema" (From "Dez Anos Depois")









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