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1960 年代から活躍し、今でも現役としてコンスタントな活動を続けてるシカゴ出身のジャズ・レジェンド、テリー・キャリアのニュー・アルバムで、イギリスの優良レーベルとして知られるミスター・ボンゴから先月リリースされたモノ。
ミスター・ボンゴって言えば、21 世紀に入って以降のテリー・キャリアの作品をコンスタントにリリースしてる(2001 年のライヴ盤 "Alive" とか 2002 年の "Speak Your Peace" とか)レーベルで、去年、ロンドンのジャズ・カフェでのライヴ・レコーディング "Welcome Home" もリリースしてることが記憶に新しい(レビューし忘れてたけど)。
このアルバムも、ジャズ・カフェっていうハコの持つヴァイブも相まってか、タイトル通りというか、なかなかアット・ホームな雰囲気で、ザ・ビートルズの "And I Love Her" のムーディなカヴァーとかも演ってたりして、かなり味わい深いの好ライヴ盤に仕上がってる。
それに続くカタチでミスター・ボンゴからリリースされたこの "Hidden Conversations" は 2005 年の "Lookin' Out" 以来となるスタジオ・レコーディング・アルバムで、最大の話題はプロデューサーとしてマッシヴ・アタックが 3 曲参加してること。これまでにも、"Speak Your Peace" では 4 ヒーローのマーク・マック、インコグニートのブルーイ、ポール・ウェラーらと共演はしてるけど、この 3 者はわりと想像できるというか、決してミス・マッチ感は感じない組み合わせだけど、マッシヴ・アタックとなると、ちょっと印象は違うかな(とは言っても、マッシヴ・アタックの "Live With Me" でフィーチャーされてたりもするけど)。
まぁ、個人的にはマッシュルームが抜けた後のマッシヴ・アタックには何の思い入れもないし、サウンド的にも別に好きじゃないんで、マッシヴ・アタック・プロデュースって聞いても特に大騒ぎする感じではなんで、わりと冷静というか、ある種、冷めた目で見れ(聴け)ちゃうんだけど、正直言うと、それほど有機的なコラボレーションにはなってないのかな、って印象。フツーにマッシヴ・アタックのビートにテリー・キャリアのヴォーカルとギターがのってるというか、それぞれがそれぞれの個性は出てるけど、プラス・アルファが生まれるほどではないのかな、と。まぁ、今のマッシヴ・アタックが好きなら楽しめるとは思うけど、それ以上の何かは感じなかったのも正直なところだったりする。
そうは言っても、別にそれほど悪い内容ってわけでもなくて、テリー・キャリアの味のあるヴォーカルとギターは十分味わえるし、オーソドックスなバンド・サウンドとはちょっと違ったバック・トラックでテリー・キャリアを楽しめるって考えれば、なかなか面白いアルバムって言えるのかも。タイトル・トラックのリラックスしたグルーヴ感とかなかなか気持ちいいし。
テリー・キャリアは幼少の頃にカーティス・メイフィールドとも友人だったというシカゴ出身のジャズ・シンガー / ギタリストで、1960 年代から独特な味わいを持ったフォーキーなジャズで高く評価されていたアーティスト。1970 年代までコンスタントにアルバムをリリースし続け、1964 年の "The New Folk Sound of Terry Callier" に始まって、1972 年の "Occasional Rain"、1973 年の "What Color Is Love"、1974 年の "I Just Can't Help Myself"、1977 年の "Fire On Ice"、1978 年の "Turn You To Love" など、素晴らしいアルバムを立て続けに発表してたんだけど、1980 年代に入ると愛娘のために定職に就くことを決めて音楽界から引退したという、ちょっと変わった、何とも憎めない経歴を持ってたりする。
そんな彼に再びスポットが当たったのは 1990 年のアシッド・ジャズ・ムーヴメント。多くの DJ たちが彼の過去のアルバムを発掘し、その曲をプレイしたことで再評価が高まり、アシッド・ジャズ・レーベルからシングルをリリースするなど、クラブ〜ジャズ・シーンで大きな人気を博した、と。そういうイギリスを中心としたシーンに温かく迎えられるカタチでシーンに復帰した彼は、1998 年にアシッド・ジャズ・ムーヴメントのシンボルとも言えるレーベル、トーキン・ラウドから "Timepeace" をリリース。変わることのないフォーキーでソウルフルなサウンドと歌声を聴かせて見事にカムバックを果たし、その後も、自分のフォロワーとも言うべき下の世代のアーティストとのコラボレーションなども行いつつ、派手ではないもののコンスタントにアルバムをリリースしながらライヴも精力的に行うなど、とてもいい感じでキャリアを積み重ねてる。
今回の "Hidden Conversations" も、そうした復帰後のキャリアのひとつとして考えると、まぁ、それほど不自然な流れではないし、彼のディスコグラフィの中で燦然と輝く 1 枚って感じではないものの、彼の味のあるヴォーカルとギターはやっぱりワン & オンリーだし、復帰した経緯を考えると存在自体が、ある種「お宝」なわけで、こういうアーティストがいろいろな可能性を模索しながらコンスタントに活動を続けてる(続けられている)ってことはすごくいいことだな、と。
TERRY CALLIER "Hidden Coversations" (From "Hidden Conversations")
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