2009/11/04

So moody.

ROBERT GLASPER "Double Booked" (Blue Note) 
 Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

秋はなんだか、妙にジャズ・ピアノがシックリくるわけで、最近、愛聴してるのが、このロバート・グラスパー(ROBERT GLASPER)。ちょっと前にリリースされたアルバムもリリース当初より最近のほうがなんかシックリくるし、その前のアルバムもかなりいい感じなんで、この機会に 2 枚まとめて。

ロバート・グラスパーは 2003 年にデビューしたテキサス出身のコンテンポラリー・ジャズ・ピアニストで、2005 年のセカンド・アルバム "Canvas"(Links: iTS / Amzn)以降はブルー・ノートから作品をリリースしてる。レーベルのプレス・リリース等には「新感覚のジャズ・ピアニスト」的な、なかなかビミョーな表現のキャッチ・コピーが付いてたりしがちなんだけど、まぁ、言葉遣いはともかく、そう言いたくなる気持ちはわからんでもない、不思議な感覚のピアニストではある。

まぁ、そうは言っても、それほど熱心にコンテンポラリー・ジャズを聴いてるわけじゃないんで、他のアーティストと細かく比較したりできるわけじゃないんだけど。でも、確かに、「誰かに似てる」とか「誰か風」な感じはなくて、すごくオリジナルな雰囲気を持ってる。だからと言って、奇を衒ってるわけでも、難解(且つ過剰)に尖ってるわけでも、亜流なわけでもなくて。懐古主義的でもないし、むしろ、すごくコンテポラリーで洗練された印象だったりもして。何とも言えないすごくユニークな存在感を持ったアーティストだってことは感じられる。あと、何と言うか、いろんな意味でえらくムーディなオトコだなってのが率直な印象だったりして。

もうひとつ、特徴として、本格的にヒップ・ホップ世代というか、ナチュラルにヒップ・ホップとの親和性が高くて(ちなみに年齢は 32 歳)、でも、安易に小手先レベルでヒップ・ホップを「採り入れてる」んじゃなくて、もっと深いベースとかルーツとかの部分でヒップ・ホップを感じさせるって点がある。実際、Q ティップ(Q-TIP)やモス・デフ(MOS DEF)なんかとも交流があるみたいだし。

この "Double Booked" は今年の 8 月にリリースされた 4 枚目のアルバムで、これまでのところ最新作。タイトルでほのめかされてるように前半と後半の 2 部構成で、前半はザ・ロバート・グラスパー・トリオ(THE ROBERT GLASPER TRIO)名義でオーソドックスなピアノ・トリオのサウンドで、後半はザ・ロバート・グラスパー・エクスペリメント(THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT)名義でエレクトリックを導入したヒップ・ホップ的なアプローチのサウンドになってる。

前半のオーソドックスなジャズ・トリオも、なかなか超絶な弾きっぷりで聴き応え十分なんだけど、個人的には、後半のエレクトリック・セットかな、やっぱ。エクスペリメントの名に恥じない意欲的なパフォーマンスで。特にビラル(BILAL)をフィーチャーした "All Matter" は、高揚感があって、メチャメチャセクシーでかなりヤバイ仕上がり。この感じのサウンドだけのアルバムを 1 枚聴きたいくらい。このアルバムではビラルともう 1 曲演ってて、さらにモス・デフも参加してるんだけど、存在感的には圧倒的にビラルが参加したトラックのほうがインパクトが強いかな。

まぁ、正直言って、アートワークがかなりビミョーなんで、危うくスルーしちゃいそうだけど、中身はなかなかヤバイ 1 枚で、メチャメチャコンテポラリーでありながら、メチャメチャジャズっていう、ありそうで、実はなかなかないアルバムって言えるんじゃないかな、と(いわゆる「コンテンポラリー・ジャズ」には、実はあまり「ジャズ」を感じなかったりしがちなんで)。


* THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT "All Matter" (From "Double Booked")




ROBERT GLASPER "In My Element" (Blue Note) 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

この "In My Element" は 2007 年リリースのサード・アルバムで、ピアノ・トリオでのパフォーマンス。洗練されたマナーの中で、時には超絶なテクニックを披露して弾きまくったりしたかと思うと、時には甘ったるいくらいムーディだったりっていうロバート・グラスパーの魅力がすごくストレートに表現された、これまたなかなかの好盤で。

ハイライトはハービー・ハンコック(HERBIE HANCOCK)の "Maiden Voyage" とレディオヘッド(RADIOHEAD)の "Everything In It's Right Place" のメドレーなのかな。選曲の妙もさることながら、アレンジもなかなか斬新で。すごくオリジナリティを感じさせる。

まぁ、そうは言っても、個人的なツボは、やっぱり "J Dillalude" なんだけど。タイトル通り、ジェイ・ディー(JAY DEE)a.k.a. J・ディラ(J DILLA)へのトリビュート的な、カヴァーっていえばカヴァーなんだけど、聞き覚えのある声の留守番電話のメッセージが「ディラの曲を演ってみろよ」的なことを言うところから始まるっていうなかなかニクイ 1 曲で。それにしても、前にレヴューしたカルロス・ニーニョ(Carlos Nino)とミゲル・アットウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson)の "Suite For Ma Dukes" でもそう感じたけど、ジェイ・ディーの曲って、なんでこんなにも美しいんだろう。

これまたアートワークがかなりビミョー(このアートワークでジャズ・コーナーに並んでたら、かなり浮くはず。もちろん、悪い意味で)だけど、アートワークに騙されれてスルーすると、ちょっともったいない 1 枚かな。 


* ROBERT GLASPER "J Dillalude" (From "In My Element")



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