2010/09/11

Gimme some truth.

倒壊する巨塔ローレンス・ライト 著 平賀 秀明白水社) 
 Link(s): Amazon.co.jp(上巻 / 下巻




これもかなり前に読んでたんだけど、レヴューし忘れてた 1 冊(上下巻だけど)で、奇しくも今日は 9.11 なので、これを機にちょっと書いとこうかな、と。

2001 年 9 月 11 日に起こった同時多発テロ事件について綴った書籍で、原書は 2006 年に出版されて 2007 年にピューリッツァー賞を受賞した "The Looming Tower: Al-Qaeda and the Road to 9/11"。著者は『ニューヨーカー』誌のスタッフ・ライターとして活躍するジャーナリストで、訳書は 2009 年に出版されて、サブ・タイトルは「アルカイダと 9.11 への道」。出版当時はわりと話題になってた記憶がある。


まぁ、 ここまでの説明である程度予想がつく通り、かなりオーソドックスっていうか、アメリカン・ジャーナリズムの王道的な視点で同時多発テロ事件が描かれてるっ て印象で、綿密な取材・調査と広い見識、優れた筆力を駆使して、第二次世界大戦後の世界情勢の中でのアメリカとイスラムの世界(そしてイスラエル)の流れを俯瞰した上で同時多発テロに至る道程を、見事に描ききってる。いかにもピューリッツァー賞受賞作っぽいというか。まぁ、読み物としても面白いし、読み応えは十分。

ただ、やっぱり、アメリカ人的というか、あくまでもアメリカからの視点で描かれてる感は否めないんで、これだけを読んで解った気になっちゃうのはちょっと危険かな? とは思うけど。
それこそ、"Loose Change"(セカンド・エディションの日本語版はここで観れる)とか『911 ボーイングを探せ』とか『暴かれた 9.11 疑惑の真相』でも語られてるハナシも、単なる陰謀説って言い切れない感じもするし(本書は 'アメリカン・ジャーナリズムの王道的な視点で' 描かれてるんでその辺との親和性はないけど)、っつうか、純粋に、ワールド・トレード・センターの崩れ方って明らかにおかしいと思うし(そういえば、この本とは直接関係ないけど、9.11 絡みでアメリカの間違いで投獄された日本人女性の山崎淑子さんのインタヴューは必見)。

もちろん、ジャーナリスティックな
視座は保たれてるし、アメリカにもイスラム世界にも、解りやすく単純化できない事情があることが丁寧に描かれてるんで、状況把握のための資料としてはすごく秀逸だし、まぁ、アメリカン・ジャーナリズムの底力を強く感じさせる

あれから 9 年が経ったけど、あの時、夜中に六本木にあった定食屋でメシを喰ってたら店の TV にあの映像が流れて、それから翌日まで釘付けになったことは今でもすごく鮮明に覚えてる。9 年後の今もその流れは全然続いてるし、問題自体はまるで解決も解明もされてないし。その後のヒステリックな(ファシズム的な?)政治・社会の動きなんかも、この事件のひとつの側面だと思うし(特にカウンター・カルチャー的な動きが皆無だったというか、黙殺されたと言うか、目立った動きがほとんどなかったことはすごく気味が悪かった)。まぁ、そういう意味も含めて、リアルタイムで知ってる現代史だからこそ、その事実をキチンと頭に入れとくためにも、いい資料のひとつであることは間違いない。
Bristol rules..

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