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ちょっと前にレヴューしたカルロス・ニーニョとジェシー・ピーターソンのユニット、ターン・オン・ザ・ライトに続いて、「一周回ってこの上なくシンプルになっちゃった」系を。
ちょっと前から話題になってたジョン・レジェンドとザ・ルーツのコラボレーション・アルバム。ザ・ルーツは、もちろん、言わずと知れたヒップ・ホップ・シーン最強のバンドなわけで、しかも、ヴォーカルがジョン・レジェンドで、カヴァー・アルバムときたら、それだけでもはや反則だろ、と。悪いわけがない。しかも、コモンとかブラック・ソートとか CL スムースも参加してるし。
ただ、いわゆる、'異ジャンルのアーティストのコラボレーションから生まれた意外な化学反応' 的なコラボレーションではなく、あまりにもすんなりとジョン・レジェンドのバック・バンドにザ・ルーツがハマっちゃったような、すごくオーセンティックなモノに仕上がってる感がある。ザ・ルーツのコラボレーション作品っていうと、ジェイ・Z の "MTV Unplugged" が思い出されるけど、コレの場合はジェイ・Z + 生バンドってだけである種の '意外性' みたいなモノがあるけど、ジョン・レジェンドがザ・ルーツみたいなバンドと演っても、別に意外性はないわけで(ロック・バンドとかならともかく)。これまでにも両者の共演はあったし、しかも、カヴァーの選曲もソウル・クラシックなんで、そこにも意外性はないし。
まぁ、そうは言っても、いいシンガーがいいバンドを従えていい選曲のカヴァーを演ってるから、悪いわけはないんだけど。カヴァーの選曲自体はかなり渋いし。例えば、ダニー・ハサウェイの "Little Ghetto Boy" とか、ニーナ・シモンの "I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free" とか。マーヴィン・ゲイからはあえて "Wholy Holy" を選んでたり。パッと聴いてオリジナルを思い出せない曲もけっこうあって、思わず掘りたくなったりもするし。で、渋いだけじゃなくて、メッセージも込められてる。ここが一番のポイントかな。かねてから、2008 年の大統領選挙でバラク・オバマ支持を明確に打ち出して、積極的にコミットしてたジョン・レジェンドが、その流れを念頭に置いてるって語ってた通り、ヒット狙いの選曲ではなく、あくまでも、オリジナルの作られた時代背景やそこに込められたメッセージをキチンと考慮した上で、今の時代に演るべき曲を演ってる。知っている世代にはその感覚を思い出させて、知らない世代には教えつつ、新たなソウルを吹き込みつつ、全体に貫かれるメッセージを活かしてるような印象(その辺りについては『bounce』の記事も要チェック)。単なるパーティ・ミュージックではなく、でも頭でっかちでもなく、脳味噌にもハートにも腰にもくる感じで。こういうのこそ、ソウル・ミュージックのソウル・ミュージックたる由縁というか。優男風のルックスして、なかなかやりやがるな、と。
もちろん、ザ・ルーツの演奏自体もメチャメチャタイト且つファット。ヒップ・ホップ史上最高のバンド、'レジェンダリー・ルーツ・クルー' の名に恥じない仕上がり。それこそ、全篇で 70 年代のソウル・クラシックを彷彿とさせつつも、随所にヒップ・ホップ以降らしさも感じられて。まぁ、さすがというか、間違いない感じ。
主役のジョン・レジェンドは、これまでにここではピックアップしてなかったけど、2000 年以降のソウル・ミュージック / R&B シーンを代表するシンガー・ソングライターで、これまでに 3 枚のアルバムをリリースしてる。一応、一通りチェックはしてて、個人的にはメチャメチャ好きってわけじゃないけど(このシーンは層が厚いからね)、能力に関しては折り紙付きっていうか、間違いない実力派のアーティストなんで、まぁ、役者としては申し分ない。
リリースにあわせてライヴも演ってて、YouTube のジョン・レジェンドのチャンネルにスパイク・リーが監督して撮影された映像が公開されてる(ライヴ自体は生中継されて、フル尺の映像もアップされてたんだけど消されちゃったらしい)。この映像を観れば、いい感じのグルーヴ感はバッチリ感じられるはず。
まぁ、アルバム自体は期待に違わぬ出来映えで、今年を代表するアルバムの 1 枚であることは間違いない。こういうのが iTunes Store で売ってないってのは、もう、いい加減、どうにかしたほうがいいと思うけど。
JOHN LEGEND & THE ROOTS
"Wake Up Everybody Feat. COMMON & MELANIE FIONA" (From "Wake Up")
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