2011/05/02

Earth day. Earth music.

SOUL FLOWER ACOUSTIC PARTISAN Live at Earth Day Tokyo 2011 ★

4 月 24 日(日)に代々木公園の野外音楽堂で行われたアース・デイ東京 2011 でのソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(SOUL FLOWER ACOUSTIC PARTISAN)のフリー・ライヴについて。

ソウル・フラワーのライヴを観るのはいつぶりだろう? ってくらい久々だったけど、結論としては、とても素晴らしいライヴで、やっぱ、地力のあるバンドは違うなぁ、ってのが率直な感想。演奏自体は 10 曲程度だったんで、 ライヴとしての評価っつうか、レヴューって感じなのもどうかと思うし(星が 4 つなのもその理由から)、バタバタしてるうちに時間が経っちゃったけど、やっぱり、ちょっとグッときちゃったんで。

ちなみに、この写真は iPhone で撮ったモノなのでメンバーの様子はよくわからないけど、手前で菜の花が振られ、その奥に反核を訴えかける旗が振られる向こうでソウル・フラワーが演奏してるっていう、A311 の 2011 年 4 月というタイミングを象徴するような写真が撮れたので使ってみた。

ライヴ後のこのツイートによると、演奏されたのは 12 曲だったみたいなんだけど、用事を済ませてから行ったら、ちょうど "People Get Ready" のカヴァーが聴こえてきたので、最初の 2 曲を聴き逃したことになる。『死ぬまで生きろ』を聴き逃したのはちょっともったいなかったけど、でも、会場に向けて歩いてたらちょうど "People Get Ready" のイントロが聴こえてきたときはちょっと感動的だったんで、コレはコレで、偶然とは言え、なかなかいい演出だったかな、と。

"People Get Ready" は、もちろん、言わずと知れたカーティス・メイフィールド(CURTIS MAYFIELD)・クラシック。厳密には、インプレッションズ(THE IMPRESSIONS)時代の曲だけど、ソロ時代を含めたカーティスの作品の中でも屈指のクラシックで、1965 年にリリースされて、公民権運動のアンセムとして広く知られることになった曲。ソウル・フラワーは洋楽の名曲を日本語詞でカヴァーすることが多いんだけど、原曲の持つ社会的な背景やメッセージも含めた選曲自体も絶妙だし、そのニュアンスを活かしながら上手くオリジナルの日本語詞で聴かせるセンスも抜群。個人的には、ニューエスト・モデル(NEWEST MODEL)時代にヴァン・モリソン(VAN MORRISON)の "Redwood Tree" をカヴァーした『杉の木の宇宙』が相当好きだったんだけど、今回、聴いた "People Get Ready" も、原曲の世界観みたいなのも感じるつつ、かなりグッときちゃった。

で、そのままライヴにグイグイと魅き込まれていったんだけど、やっぱ、ハイライトは名曲『満月の夕』かな。言わずと知れたソウル・フラワーの代表曲であり、日本語の音楽の中でも屈指の名曲だと思うんで。『満月の夕』に関しては、ウィキペディアに作られた経緯が詳しく書かれてるし、YouTube にも当時の様子がわかる動画がアップロードされてるんで(例えばこれとかこれとか)、詳しく触れないけど、1995 年 1 月に発生した阪神・淡路大震災後に作られたクラシック。もともと名曲なんだけど、A311 に聴くと、全然違う聴こえ方がするし、同時に、15 年以上前の曲とは思えないような、まさに時代を超えたタイムレスな魅力が伝わってきて、音楽っていう、なくても死なないって意味では生活に必要不可欠ではないけど、でも、やっぱりそれだけではないパワーを持ったアートの本質的な意味も再認識させてくれる。

探してみたらあったので、昨日のライヴの様子の動画も貼っとこう。iPhone で撮ったようなので、クオリティは、まぁ、アレだけど、でも、すごくリアルで臨場感があるいい映像なので。



やっぱり、今回、あらためて感じたのは、ブレずに活動してきたアーティストならではの地力の強さ。311 を境に、有名・無名に限らず、いろんな人間の地力の違いを強烈に感じざるを得ない状況になってて、(誰とは言わないけど)軽いヤツとか薄っぺらいヤツの化けの皮が剥がれたっつうか、本当に大切なことをやってるヤツとそうでないヤツの違いを残酷なまでに見せつけてるわけだけど、そういう状況では、やっぱりこういうアーティストは圧倒的に強いな、と。まぁ、こういうアーティストは別に平時でも演ってることは変わらないんだけど、ただ、シンプルな状況ではやっぱり芯の強さみたいなモノが重要になるっていうか。そういうモノをあらためて強く感じさせられた。

それにしても、『満月の夕』ってどれくらい知名度があるんだろう? 個人的には、喜納昌吉さんの『花』とかザ・ブーム(THE BOOM)の『島唄』(あと、個人的にはガンガ・ズンバ(GANGA ZUMBA)の『足跡のない道』も加えたいけど)レベルの、日本のポピュラー音楽史を代表する曲であり、日本の近代を代表するブルーズ / フォーク(ロア)・ミュージックだと思ってるんだけど。でも、なんか、『満月の夕』もソウル・フラワー自体も、イマイチ知名度で劣ってるような印象があって、ちょっと歯痒かったりするんだけど。そういえば、奇しくも『花』も『島唄』も『足跡のない道』も代々木公園の野外音楽堂で観てるな。なんか、場との縁みたいなものもありそうな感じがする。まぁ、とにかく、A311 のこんな状況下で、あらためて『満月の夕』を聴いたら、喜びとか悲しみとかそういうひとつの単純な感情じゃなくて、もしかしたら相反するかもしれない複数の感情が頭の中で交ざりながらグルグル回っちゃって、やっぱ不覚にもちょっと泣きそうになっちゃった。

「ソウル・フラワーのライヴを観るのはいつぶりだろう?」とか、「ニューエスト・モデル時代」とか書いたけど、ソウル・フラワー・ユニオンってのはもともと、インディ・レーベルのソウル・フラワー・レコーズに所属してたニューエスト・モデルとメスカリン・ドライヴ(MESCALINE DRIVE)が解散・合体して 1993 年に結成されたバンド。ニューエスト・モデルは中川敬を中心としたメンバーが男性のロック・バンドで、メスカリン・ドライヴは伊丹英子と内海洋子などの女性メンバーが中心のロック・バンドだったんだけど、その 2 つのバンドが合体してできた男女混成バンドがソウル・フラワー・ユニオンってことになるんだけど、個人的にはニューエスト・モデルとメスカリン・ドライヴの末期からソウル・フラワー・ユニオン結成頃にけっこう頻繁にライヴを観てたりして、わりと好きなバンドだった。

ニューエスト・モデルは、初期のモッズっぽいイメージとロック〜ソウル・ミュージックをベースにしたサウンドにのせて社会的なメッセージを時にストレートに、時にシニカルに、でも一貫してパワフルに歌うスタイルが当時の日本のシーンでは異彩を放ってたし(本人たちも)、日本を含む世界中のトラディショナルなフォークロア・ミュージックの影響を貪欲に採り入れて、地に足が着いたサウンドを思考するようになった(現在のソウル・フラワー・ユニオンに通じる)後期のサウンドも、決して一般的な意味でポップではないかもしれないけど、すごくオリジナリティと普遍性がある。一方のメスカリン・ドライヴは、グラム・ロック〜パンク〜ガレージ・サイケ的なヘヴィーなサウンドと、刺激的で社会的なメッセージが特徴で、女性メンバーが中心のロック・バンドの一般的なイメージとは大きく一線を画すパワフルで迫力満点なバンドだった。

その 2 つのバンドが合体したことで、男女 2 人のリード・ヴォーカリストを擁することでメッセージ的にもサウンド的にもより幅広く、でも、同時に、よりパワフルになったのがソウル・フラワー・ユニオンで、メンバーの入れ替わりや伊丹英子の病気など、いろいろな紆余曲折がありつつ、阪神・淡路大震災の件だけでなく、東ティモールやパレスチナ難民キャンプなどの海外、国後島や沖縄の辺野古などの国内など、さまざまな場所でライヴを行いつつ、いろいろな社会問題にも積極的に現場でコミットしてきてて、そうした活動が反映された作品もコンスタントにリリースしてる。まぁ、一言で言っちゃうと、地に足を着けて、でも、フットワークは軽く、常に自分たちの生活に土着した野太いブルーズ / フォーク(ロア)・ミュージックを奏でてきたって感じなのかな。

'ソウル・フラワー' って書き方をしてる部分があるのは、'ソウル・フラワー・ユニオン' としての活動に加えて、別働隊的なユニットとして、阪神・淡路大震災の時に生まれたチンドン楽団のソウル・フラワー・モノノケ・サミット(SOUL FLOWER MONONOKE SUMMIT)、地方巡業用のアコースティック・ユニットのソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン、中川敬の別プロジェクトのソウルシャリスト・エスケイプ(SOUL-CIALIST ESCAPE)やヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーション(JAPONESIAN BALLS FOUNDATION)等、いろいろなカタチで活動してるからで、今回のアース・デイでのライヴは、中川敬・奥野真哉・高木克・伊藤孝喜っていうベースレスの 4 人編成でソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン名義だった、と。まぁ、ソウルシャリスト・エスケイプやヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションはちょっと趣きが違うのかもしれないけど、'ソウル・フラワー' 関連は、状況や編成に応じてメンバーや名前を変えてる感じで、音楽性の本質みたいなモノに基本的な変化はないと思うけど。

今回、久しぶりにライヴを観て、あらためて感じたのは、上記のような確かなキャリアに裏打ちされたバンド / アーティストとしての地力の強さ。アース・デイのステージのような場合、必ずしも自分たちを目当てに来ているわけではない人間の前でのパフォーマンスってことになるけど、さすがに場数を踏んでるだけのことがあって(いい意味で、関西のオッサンならではのユーモラスな暑苦しさもいい味出してるし)、全然楽勝な余裕を感じさせてた。もちろん、こういう場でこそ『満月の夕』って名曲を持ってることも大きいんだけど(同じことは、喜納昌吉さんとかザ・ブーム / 宮沢和史さんのライヴでもいつも感じる)。あと、個人的にはクラブ・ミュージックと触れてる機会が多いから、余計にそう感じるのかもしれないけど、(アコースティック・)バンドっていうシンプルでプリミティヴな編成だからこそのパワフルさも強く感じたし。

このライヴの後、ソウル・フラワー関連の作品をあらためていろいろ聴き直してみてるんだけど、やっぱり、聴けば聴くほど唯一無二っていうか、日本からしか生まれないけど、でも、同時に、すごくユニヴァーサルなサウンドで。こういうバンドがいることって、音楽的にも文化的にも社会的にもすごく意味のあることだし、素直にありがたい。コマーシャルな意味ではいわゆるポップ・ミュージックではないのかもしれないけど、ホントの意味で大衆音楽だと思うし、フォークロア・ミュージックであり、ブルーズであり、ソウル・ミュージックだと思うんで。

そういえば、ライヴの演奏後(メンバーが袖に引っ込むとき)にはキャンディーズがかかってた(『春一番』だったかな?)。こういうところもツボをしっかり押さえてる。


* Related Item(s):

SOUL FLOWER UNION "Ghost Hits 00-06" Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store
ソウル・フラワー・ユニオンのベスト盤、'ゴースト・ヒッツ'・シリーズの第 3 弾で、2000 年代前半を中心にしたセレクト。今回のライヴでも披露された『うたは自由をめざす』や "People Get Ready" も収録されてる。
SOUL FLOWER UNION "Ghost Hits 95-99" Link(s): Amazon.co.jp
'ゴースト・ヒッツ'・シリーズの第 2 弾で、『海行かば 山行かば 踊るかばね』のリミックスや『満月の夕』の別ヴァージョンなどが収録されてる。
SOUL FLOWER UNION "Ghost Hits 93-96" Link(s): Amazon.co.jp
ソウル・フラワー・ユニオンの初期の代表曲を収録したベスト盤で、ファースト・シングルの『世界市民はすべての旗を降ろす』をはじめとして、『もののけと遊ぶ庭』、『レプン・カムイ』、『ひぐらし』、『満月の夕』等、名曲満載。
NEWEST MODEL / MESCALINE DRIVE "Early Soul Flower Singles" Link(s): Amazon.co.jp
ニューエスト・モデルとメスカリン・ドライヴの 1989 〜 1993 年リリースのシングルを網羅したコンピレーション。個人的に日本のロック史でも屈指の名タイトルだと思ってる『知識を得て、心を開き、自転車に乗れ! 』も収録。


Other albums
ニューエスト・モデル / メスカリン・ドライヴ / ソウル・フラワー関連は作品数が多いんでピックアップするのは難しいんだけど、以下のリンクがそれぞれソウル・フラワー・ユニオンの作品(Links: Amazon.co.jp / iTunes Store)、ニューエスト・モデルの作品(Links: Amazon.co.jp / iTunes Store)、メスカリン・ドライヴの作品(Amazon.co.jp / iTunes Store)。アマゾンのほうが充実してるかな。

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