2008/06/20

Backpackers' classic.

『バックパッキング入門』 芦沢 一洋 著
(山と渓谷社) ★★★★☆ Link(s): Amazon.co.jp


ずっと読んでみたいと思っていた 1976 年発行の日本のバックパッカーのクラシック。その思想的な背景から具体的な道具に至るまで、とても細かく紹介されている、まさに「入門」。著者の芹沢氏は、これまたクラシックとして知られるコリン・フィッチャーの大書『遊歩大全』(Link: Amzn)の訳者。アマゾンのマーケットプレイス等の古本店で見かけてもわりと高かったりするんだけど、知り合いの事務所で偶然見つけて借りてきた。

具体的なギアについては、まぁ、さすがに 30 年以上前の情報だから具体的なアイテムについては古いんだけど、それぞれの道具の持つ意味とか目的については変わってないので、現在でも知っておいたほうがいい基礎知識ではある。頭の中で細部をアップデートして今あるものに当てはめれば、今でも十分応用可能かな。

あと、やっぱり古典的な楽しみとして、写真や図版、言葉遣いなどから、今に至るまでの経緯とか試行錯誤のプロセスが垣間見えて面白い。古いものを見ることに共通してるお楽しみ。こういうクラシックが手に入りにくいっていうのは、やっぱりあんまり嬉しい状況ではないなぁ。新宿区の図書館にもなかったし、こういうのこそデジタルでアーカイヴ化して、気軽にアクセスできるようになればいいのに。行政の仕事なのか、それともグーグルの仕事なのか。

* 2013 年 4 月 30 日追記:デジタル版が Kindle で復刻された。

そんな中でも一番大事なのが、第 1 章に代表される当時の時代背景とバックパッキング文化の意味合いについて述べている部分。その根底にあるのは、いわゆる「エコ」とはかなりニュアンスの違う、もっと大きくて力強くてシンプルなエコロジーの思想。今、読んでもメチャメチャリアルだし、今のほうがよっぽど実感できるんじゃないかと思うほどの内容。ある意味、予言的だし、ある意味、この 30 年間の歴史の意味も考えさせられる。こういう背景をしっかりと把握した上で考えたり行動したりしないと、いろいろおかしなことになってくる。第 1 章以外にも、各章の中でちょこちょこと当時の空気感や思想が滲み出てる。

ちなみに、「SPIRIT & MIND 成り立ちと背景。 バックパッカーの誕生 」と題された第 1 章だけでもひとつの読み物としてすごく読み応えがあるんだけど、その全文は、今でもわりと簡単に手に入る『Spectator Vol. 16 (2006 Autumn & Winter issue)』に掲載されてる。原著が手に入りにくいだけに、とてもありがたいし、貴重だし、ある意味、快挙と言える。

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