『MOONLIGHT MILE 18 巻』
. :太田垣 康男 著 (小学館) ★★★★☆
前にも 16 巻・17 巻をレヴューした『MOONLIGHT MILE』の最新刊。ここのところ、すっかり半年に一冊くらいのペースになってて、さすがに久々な感は否めない。まぁ、オトナ向けのコミックとしてはアリなペースではあるけど、年に 3 冊くらい読みたい感じはしちゃう。
今、あらためて 16 巻と 17 巻のレヴューを見直したら、『MOONLIGHT MILE』自体の説明をキチンとしてなかったことに今さらながら気付いたので、一応触れておくと、舞台はアポロから数十年の時を経て、枯渇しつつある石油の代替エネルギーとしてのヘリウム 3 開発のために再び月を目指す時代。つまり、『プラネテス』より近くて『宇宙兄弟』よりはちょっと先の未来ってこと。主人公はクライマーとして名を馳せた日本人で、ザイル・パートナーとして地球上の極地を共に制覇してきたアメリカ人クライマーの友人と、お互いに違うルートでさらなる「極地」である宇宙、そして月を目指す。そこには次世代エネルギーの独占をもくろむアメリカの思惑や、それに対抗するもうひとつの大国・中国の台頭、イスラム圏の独自の動き、テロリズム、インドやパキスタンを含む核の問題等、ついつい現実社会と混同しちゃいそうになるような政治・経済・軍事の大きな力学が渦巻いてて、そんな状況の中で、魅力溢れるキャラクターたちが夢や野望や国益など、いろいろな「十字架」を背負いながらも宇宙という未踏の「極地」を切り開いていく。そんなストーリーがリアル且つダイナミックに展開されてるのが最大の特徴で、あくまでもリアリティに重点を置くことで、「宇宙とは?」「人間とは?」的な、SF / 宇宙モノでは避けては通れない、でも深入りしすぎるとドツボにハマる危険性を上手く回避しながら、エンターテインメントととして上手く成り立たせてて、読み応えは十分な作品。
現実社会の動きを鑑みつつ、現実社会の動向(さらに言えば、読者のリアクションも)と同時進行的に創作し、物語を進行していくという創作の方法は、たぶん連載で発表されるマンガ(もしかしたら小説も)ならではの制約であり、面白さでもあるわけで、特にある程度リアリティを感じさせる「ドラマ」を描く場合、決して簡単な制約ではないはずだけど、この作品はその点にとても自覚的で、しかもとても上手く活かすことができてる(作者もそうのようなことをトーク・ショーで言ってた)。だからこそ、読んでいて「ついつい現実社会と混同しちゃいそうになる」ようなリアリティを感じさせるんだし、同時に(決して作者の独りよがりではない)エンターテインメントとして成立してるんだ、と。
ちなみに、現在は第 2 部に突入してて、月面で生まれた「ムーンチャイルド」が幼少期を終えて少年期を迎えてるって時代。この 18 巻 でも主人公はすっかりムーンチャイルドの世代になってて、そんな時代の月の世界の闇の部分が垣間見える内容になってる。第 2 部に入ってからあまり描かれてなかった地球の状況とか、第 1 部主要な登場人物のその後なんかもチラ見せしつつ、いろんな意味で、どちらにとっても、待ったナシの相変わらず予断を許さない展開で、一気に読ませてくれるあたりはさすがかな、と。
*既発巻:
『MOONLIGHT MILE 1 巻』
『MOONLIGHT MILE 2 巻』
『MOONLIGHT MILE 3 巻』
『MOONLIGHT MILE 4 巻』
『MOONLIGHT MILE 5 巻』
『MOONLIGHT MILE 6 巻』
『MOONLIGHT MILE 7 巻』
『MOONLIGHT MILE 8 巻』
『MOONLIGHT MILE 9 巻』
『MOONLIGHT MILE 10 巻』
『MOONLIGHT MILE 11 巻』
『MOONLIGHT MILE 12 巻』
『MOONLIGHT MILE 13 巻』
『MOONLIGHT MILE 14 巻』
『MOONLIGHT MILE 15 巻』
『MOONLIGHT MILE 16 巻』
『MOONLIGHT MILE 17 巻』
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