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おそらくシーン的には今年の最大級の大きな話題になってるであろう「自我」こと(?)ジェイ・Z の通算 11 作目の最新アルバムで、2001 年の "The Blueprint"、2002 年の "Blueprint 2: The Gift & The Curse" に続くシリーズの最終作。
まぁ、言わずと知れたヒップ・ホップ界のナンバー 1 スターであり、もはやヒップ・ホップの枠に収まりきらないポップ・アイコンでもあり、もっと言えば、最も成功しているアフロ・アメリカンのビジネスマン / 実業家のひとり、ショーン・カーターでもあるだけに、注目度の高さと話題性の大きさも、まぁ、当然って言えば当然なんだろうけど。
この 'The Blueprint' シリーズってのは、その名の通り、ヒップ・ホップのあるべき姿の「青写真」を示すってコンセプトで、"The Blueprint" はルールであるソウル・ミュージックをベースにしたサンプリング・サウンド、"Blueprint 2: The Gift & The Curse" はジャンルの枠にとらわれないジャム・セッションをベースにしたバンド・サウンドをそれぞれテーマにしてたんだけど、その後のパート 3 はなかなかリリースされなくて、その間に「引退騒動」なんてのもあったりして、当初は出るのか(作られるのか)どうかも定かじゃなかったような記憶がある。その後、引退撤回・復帰があったりして、本当は去年の 11 月にデフ・ジャムからリリースされる予定だったのが、デフ・ジャムを離れたり、オバマの大統領選挙のサポートに忙しかったり、いろいろな事情でこのタイミングになったんだとか。ちなみに、今作のテーマは「ニュー・クラシック」で、自分はもはや、フランク・シナトラやマーヴィン・ゲイのような「クラシック」な存在になっているので、それに相応しい、クラシカルな部分と新しい部分を持ったヒップ・ホップの向かうべき方向を示す「青写真」を示してるんだとか。
まぁ、先にカミング・アウトしちゃうと、熱心にジェイ・Z を聴いたことって、実はなかったりする。もちろん、MC / ラッパーとしてはトップ・クオリティっていうか、メチャメチャカッコイイとは思うし、っつうか、それ以前に、やっぱり無視できないっつうか、フツーに耳に入ってくるっていうか、意識してなくてもその動向はいろいろなカタチで聞こえてくる存在ではあるし。でも、個人的には、一番好きなアルバムはザ・ルーツがバックを務めた "Unplugged" だったりして、しかも、"JAY-Z At Studio One"(2003 年リリースの "The Black Album" のアカペラとスタジオ・ワンのサウンドとマッシュ・アップしたブートレグ? 誰がつくったのか知らないけど、ググれば簡単に見つかるはず)なんかもメチャメチャ好きだったりして、つまり、オリジナル・アルバムで愛聴盤になってるモノは特になかったりするってことで、まぁ、ジェイ・Z のファン / リスナーとしては、正統派ではないって自覚はあって。
そんなわけなんで、正直なところ、それほど期待をせずに聴いたんだけど、率直に言っちゃうと、期待してたよりは良かったというか、思ったより楽しめたかな。やっぱ、ジェイ・Z、カッコイイじゃん、って。曲単位ではやっぱカッコイイし、MC / ラッパーとしても貫禄抜群だし。世の中的な話題は挑発的なタイトル / 内容のノー・ID によるプロデュースの "D.O.A [Death Of Auto-Tune]" なんだろうし、実際、出来映えも悪くないんだけど、個人的なハイライトはやっぱアリーシャ・キーズをフィーチャーした NYC 賛歌の "Empire State of Mind" かな(って思ってたら、案の定、次のシングルらしいんだけど)。これがなかなかステキなヘヴィー級のタッグで。
この "The Blueprint 3" は、主にノー・ID とカニエ・ウェストとティンバランドがプロデュースを担当してるんだけど、まぁ、やっぱり、アルバム全体としてはちょっとバラつきを感じるっていうか、今ひとつ、まとまりが欠ける感があるのは事実。それは、MC のアルバムではわりと避けられない問題だし、そこがジェイ・Z のアルバムが愛聴盤になりにくい理由だったりもするんだけど、それはこのアルバムでも感じるかな、と。まぁ、全然気にしない人は気にしないっぽいんで、個人的な好みというか、「アルバム」ってモノの考え方とか捉え方による部分なんだとは思うけど。でも、やっぱり、少なくとも個人的には、常に iPhone / iPod に入れとくレベルの愛聴盤ではないのかな、と。
そうは言っても、まぁ、やっぱり、存在感はやっぱり抜群だし、これだけの存在になってもなお、いろいろ棘のあること言ったりする感じはさすがだし、キライじゃないんだけど。"D.O.A [Death Of Auto-Tune]" もそうだし、去年のグラストンベリーの一件(去年のグラストンベリーでジェイ・Z がラッパーとして初めてヘッドライナーに選ばれたことに対して、当時オアシスのメンバーだったノエル・ギャラガーが「ロック・フェスティヴァルなのにラッパーがヘッドライナーかよ」的なことを揶揄。それに応えたジェイ・Z はこんなビデオが流された後にギターを抱えてステージに現れて、オープニングでオアシスの "Wonderwall" を演った、と。わりとオソマツ且つ微笑ましい当て振りで。本人は全然歌えてないのに、そんなの関係なしでオーディエンスが大喜びでフル・コーラス歌いまくってるのがグラストンベリーらしい)もそうだし。そういえば、最近の日本の音楽シーンって、こういうビーフっていうか、緊張感とか尖った感じとか全然なくて面白くねぇよなぁ(みんな、ヌルい感じでいい顔しあってる感じで)、なんて思ったりもしつつ、やっぱり、もう、存在感自体がヘヴィー級だし、ある意味、最高のロック・スターであること、そこいらのロック・ミュージシャンよりよっぽどロックな存在であることは間違いないな、と。
例えば、おまえが黒いスニーカーを履くなら俺は青いスニーカーを履くぜ、っていうさ。コンペティティヴで、誰が一番フレッシュかを競うのがヒップホップなんだ。
ジェイ・Z は『bounce』に載ってるインタビューでこんなことを言ってて、これだけセレブリティ中のセレブルティになってもやっぱ喩えはスニーカーかよ、なんて微笑ましく思いつつも、まぁ、言ってることはその通りで、やっぱり、まだまだ無視できない存在であることはあらためて感じざるを得ない。
JAY-Z "Empire State of Mind (Feat. ALICIA KEYS)" (From "The Blueprint 3")
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