2009/09/15

2001: A Soul Odyssey.

Q-TIP "Kamaal the Abstract" (Battery Records)  

前にレヴューしたジョイスとナナ・ヴァスコンセロスとモウリシオ・マエストロの "Visions of Dawn"、教授ことラージ・プロフェッサーの "The LP" と並ぶ「お宝音源発掘・オブ・ザ・イヤー」な 1 枚が遂に、8 年の時を経て日の目を見ることになった。

この Q ティップの "Kamaal the Abstract" は 2001 年にリリースされるはずだった実質的なセカンド・ソロ・アルバム。当時はホントにリリース寸前で、プロモ盤のアナログも出回ってたし、メディアにはサンプル CD も配布されてた。

幸運にも、そのサンプル CD を聴ける立場にあったので(職権を濫用して)ゲットしてたんだけど、これがまた、アヴァン・ギャルドで、いい意味で期待を裏切る 1 枚で、それ以来、すっかり愛聴盤になってたんで、今回の正式リリースは、やっぱり良かったなぁ、と。少なくとも、聴きたいと思ってる人が聴ける状態になるってのは。もちろん、8 年も時間が経ってることを考えると、手放しには喜べないけど。

当時ゲットしたサンプル CD は 9 曲入りだったんだけど、今回のリリースでは 9 曲はそのままで、そこにボーナス・トラックが 2 曲入ってる全 11 曲。まぁ、このアルバムは 1999 年リリースのファースト・ソロ・アルバム "Amplified" に次ぐ作品として制作されてて、当時のモチベーションというか、空気としては「ヒップ・ホップの狭い枠を逸脱する」みたいな感じがあったわけで、全体の作りとして、そういう傾向が感じられる。生楽器とかバンドっぽいプロダクションもあるし、ロックっぽいのとかジャズっぽいのとか、ポップっぽいのまであるし、ピアノをバックに歌ってたりもしてるし。当時、ヒップ・ホップしか聴かないヤツが戸惑ってたりしたし。まぁ、個人的には全然アリで、そういうのも含めて Q ティップだし、ある意味、メチャメチャ Q ティップっぽいし、他のアーティストにも、ATCQ でもできない、Q ティップにしかできないアルバムだなぁって思ったし。広い意味で、Q ティップのソウル・ミュージックっていうか。

ただ、名盤の誉れ高い去年リリースの "The Renaissance" を聴いちゃってる今の状態で、この "Kamaal the Abstract" が最高傑作か? って聴かれると、ちょっとビミョーっていうか、個人的には "The Renaissance" に軍配が上がるかなぁ、って思ってるのも事実だったりはするんだけど。

そうは言っても、お蔵入りにしといていい作品ではないと思うし、やっぱりリリースされたのは良かったな、と。当時は、プロモがリリース前にインターネット経由で出回りすぎたことが原因とかって言われてた気がしてたんだけど(ちょうと、そういうことが現実的な問題になってきた時期だったし、神経質になってたっつうか、どう考えればいいのか、どう対処していいのか、誰もわかってなくて、みんなで大騒ぎしてた記憶がある)、その後の話では、どうもアリスタの LA リードが「売れん」って判断してお蔵入りにしたってのが真実らしい。だとしたら、フツーにヒドイ話である反面、ない話ではないけど。

ただ、大事なポイントは、Q ティップ自身が望んでお蔵入りにしたわけではないってこと。お宝発掘って、嬉しい反面、ビミョーなところもあって。だって、アーティスト自身が世に出したくなかったモノが、勝手に出されちゃうってケースもあるわけで。そういうのって、どうなのよ? って。出すほうはもちろん、買ってバカ面して喜んでるほうも含めて。そういうのを闇雲にありがたがることにはちょっと疑問を感じざるを得ない(お宝発掘以外にもいろいろあるね。最近ニュースなんかでも話題になってる件なんかも、広い意味では当てはまる話かもしれないけど)んで、何でもかんでも手放しで喜べないところがあるけど、まぁ、今回のケースはそうじゃなくて、Q ティップ自身は世に出したいって思ってたってことっぽいんで問題ないし、フツーに良かったなって思うけど。


Q-TIP "Do U Dig U?" (From "Kamaal the Abstract")









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