2011/04/09

Expanded senses. Synchronized minds.


『機動戦士ガンダム UC episode 3 ラプラスの亡霊』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)


前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした「機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 3 話。11 月に発売された第 2 話「赤い彗星」の続きで、全 6 話の予定だからこれで半分を消化したことになる。DVD の発売は 4 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、DVD 発売に先駆けて行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに書いたから省くけど、第 3 話のタイトルは「ラプラスの亡霊」で、徐々にガンダム UC のストーリーの骨格というか、全体像が朧げながら見えてきたくらいの段階かな。そして、そのキーワードのひとつが「ラプラス」だ、と。まぁ、そんなことを言えるのも、 第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているからで、小説を未読の人がどんな印象を抱いてるのかは、正直、ナゾだけど。

まぁ、やっぱり全体の印象としては「安心して観られるクオリティ」 って感じかな。第一印象は、これまでと同様、息をつかせぬって感じの速い展開なんだけど、これは演出であると同時に、長編の原作を上手く圧縮しなきゃならないって制約による部分でもあって、「もっとジックリ描いて欲しい」って思う部分とか、削って欲しくなかったエピソードがないと言えばウソになる。いろいろなところで福井晴敏やスタッフのインタビュー等を読んでる限り、必ずしも予算等の財政面の理由だけじゃなく、もっといろいろな戦略的な理由もあって全 10 巻の原作を約 6 時間で描くことにしたっぽいけど。まぁ、逆に言うと、気になる点はそのくらいで、他の部分はバッチリってことなんだけど。

良い意味でのアニメらしさを維持しつつ、圧倒的なクオリティの映像表現がわりと高く評価されてて、それはもちろん納得なんだけど、個人的には声優陣がすごくいい気がする。それぞれ、決して単純明快なわけではなく(そんな人間、いるわけがない)、それぞれ内面に複雑な想いを抱えてるキャラクターたちの気持ちが交錯する人間ドラマこそがガンダムであり、アニメ特有の安っぽい手癖的な台詞回しを排したことがガンダムのガンダムたる由縁だったわけだけど、その部分がキッチリと継承されてる印象。特に主人公の 2 人がとてもいい気がする(それほどたくさんアニメを観ているわけではないんだけど)。あと、音楽(≒オリジナル・スコア)の出来映えも特筆すべきポイントかな(サウンドトラックも 1 枚出てるけど、未収録曲もあるんで続編も出そう)。

まぁ、今回の見所はやっぱり、自分の役割を愚直に全うするしかない脇役の大人が、これまでとはちょっと違う印象を見せる部分。ちょっとブサイクな脇役までキチンと描き込むことで、ストーリーに重厚感を与えるのもガンダムのガンダムたる由縁で、そういう意味でも、やっぱり正統派のガンダムの最新作として楽しめる。

次作の第 4 話「重力の井戸の底で」は秋公開予定。また、数ヶ月待たされるのはシンドイけど、まぁ、同時に楽しみでもある。やっぱりクオリティのほうが大事なんで。


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