2011/12/10

Living in the mountains. Living with the mountains.

『岳 15 巻』 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★★☆

これまでにも出るごとにレヴューしてきた『』の最新巻。前のエントリーでレヴューした『宇宙兄弟 15 巻』と同様、レヴューし忘れてて発売からかなり経っちゃったんだけど、抜かすのも気持ち悪いんで。

ハナシは、これまでに何度も書いてる通り、主人公の山岳救助ボランティアの '山バカ' こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)コミック。決してミラクルがあったり超人が出てきたりするわけじゃないんだけど、そこが逆に、なんかグッとくる。そんな絶妙なサジ加減が魅力って言えるかな。

これまでは、基本的には 1 話(または数話)完結型の 'ちょっといいハナシ' 的なエピソードがメインだったんで、まぁ、良くも悪くもマンネリになりやすいっていうか、(もちろん、キャラクターの成長とかは描かれてるんだけど)どうしても似たようなハナシになりやすかったんだけど(だからこそ、わりとどこからでも読めるとも言えるんだけど。いわゆる、'偉大なるマネリズム' 的な)、この 15 巻はストーリー的にちょっと転機になる一冊って言えるのかな。

そのキッカケとして、わりと主要なキャラクターの 1 人が事故に遭うっていうショッキングな展開なんだけど、そのことを受け止めた上で、複数のキャラクターがいろいろなことを考え、環境的にも変化が起こり、それぞれにとっての生活がそれまでとは違う、新しい方向へ動き出すって流れ。

まぁ、けっこうショッキングな展開なんで、いつものような心地いい読後感っていうよりも、もう少し、何とも言えないようなモヤモヤしたような読後感が残ったのは事実かな。ただ、別にイヤな感じではないし、『岳』らしさが損なわれてるわけではない。むしろ、これからストーリーがさらにスケール・アップしつつ深みを増していく期待感が膨らむくらいなんで。

ちょうど、ハナシの流れがある種の定型化ができてたっつうか、このまま続ければいい意味で '偉大なるマネリズム' 的な方向に進めていくこともできたと思うし、そうすれば、それなりの安定感をキープできたと思うけど、あえて、もうひとつ、物語を展開させることを選んだってことになるのかな。どういう理由でそうしたのかもわかんないし、どちらが正しいってハナシではないけど、そういう判断をした作者の勇気(のようなモノ)にも好感を持てるし。そういう意味では、今後の展開に若干の不安要素があることも否定できないけど、やっぱり、期待値のほうが圧倒的に大きいかな。

そういえば、14 巻の発売直後に実写映画が公開されたんだけど、それほど大きな話題にならず(ヒットもせず)にスルーされた感じなのかな? まぁ、観てないし、今後も観ることはないと思うんで、どうでもいいんだけど。



*既発巻:

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